2020年8月25日に行なわれた、インヴィンシブル投資法人2020年6月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:コンソナント・インベストメント・マネジメント株式会社 取締役会長 市來直人 氏

エグゼクティブ・サマリー(1)

市來直人氏:本日はお忙しい中お時間をいただき誠にありがとうございます。それでは2020年6月期の決算説明を行ないます。

まず1ページ目、エグゼクティブ・サマリーを5つのポイントに分けてご説明します。最初に2020年6月期実績に関してお話します。新型コロナウイルスの影響により、2020年3月以降、国内外の旅行客による宿泊需要が急速かつ大幅に減少しました。未曽有の環境下、マイステイズ・ホテル・マネジメントおよびその関連会社(あわせて「MHM」と申します)との間で、3月から6月までの賃料減免およびホテル運営費の不足分を支援する旨の覚書を締結しました。

主な内容は35億円の固定賃料減免に加え、物件管理費と管理業務受託手数料として合計13億5,000万円をMHMに対して支払い、MHMを支援しました。MHMが運営するその他のホテルの所有者と足並みを揃え、MHMの本社経費ではなく、保有ホテルの運営資金を拠出しました。

ほかの選択肢も検討した上で、MHMとの協業による中長期的な成長機会の確保を選択しました。MHMによる需要の回復、徹底したコスト削減、および新規需要の創出努力により、MHMが運営する国内73物件合計のGOPは、6月に入り黒字に転じました。当期の1口当たり分配金(DPU)は、直近予想は上回りましたが69円で着地となります。

今期は期初における物件売却により、売却益20億円を確保していました。しかしながら、現在の経済および観光等の環境における不確実性を考慮し、柔軟な対応を可能にするため、手元資金72億円に加えて、資本的支出の計画を一部削減することにより手元資金を積み増ししました。リファイナンスは、2020年7月には総額300億円を超える借入金を適正コストで全額借換えし、財務上の懸念を払拭できたと考えています。

次に、1ページ下段国内ホテルポートフォリオに関してご説明します。

3月以降、ピーク時最大13物件が一時的に休館していました。なお、本日時点での休館は1物件のみです。MHMは、新型コロナウイルス感染拡大収束が見通せない中で、コスト削減の徹底に取り組むとともに新たな収益獲得機会の模索を続けています。具体的には3密対策を講じた新しい会議・宴会プランの提案、また朝食サービスも安全確保に取り組みながら再開しました。

雇用調整助成金の活用を中心とした人件費の抑制、ホテルの一部閉館、業務委託費の見直しなど、徹底したコスト削減を行なっています。失った需要の掘り起こしのため、キャンセル・延期案件のフォローアップを徹底的に行なったり、テレワーク支援、テイクアウト・デリバリー等、withコロナの新たな収益機会の確保にも取り組んでいます。

エグゼクティブ・サマリー(2)

2ページ目、エグゼクティブ・サマリーをご覧ください。海外ホテルポートフォリオに関してご報告します。ケイマンの2物件は、政府による空港閉鎖のため3月下旬から休館中で、11月1日に限定的な運営で再開する予定です。なお、3密対策が整った2ヶ所のレストランは、ケイマン政府の許可を得て6月19日より現地の方を対象に営業を再開しています。増築計画については、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ保留中です。回復の道筋がより明確になった段階で判断する予定です。

次に住居・商業施設ポートフォリオに関してします。このセクターに対する新型コロナウイルス感染症の影響は非常に軽微で、住居のNOIは当初予想の対前年同期比プラス0.6パーセントを上回るプラス1.9パーセントの増加を達成しました。また当期における住居ポートフォリオの新規契約・更新契約合計での賃料は、従前賃料比で1.3パーセントの上昇を達成しました。

最後に2020年12月期の予想に関してします。国内需要は回復の兆しを見せ始め、7月度のGOPは前月に引き続き黒字でした。

8月度は稼働率43.6パーセント、GOPも黒字を見込みますが、所定の固定賃料を支払える水準にまでは回復していません。したがいまして、9月以降は、新型コロナウイルスの感染拡大の状況、それに対する政府や企業の対応や方針、個人の行動など、不確定要素が多く、予測は困難な状況です。

このような環境下で、MHMとの固定賃料の一部免除等の対応については現状未定であり、REITや不動産所有者に対する国土交通省の要請に沿ったかたちで、ホテル業績の回復の状況に基づき判断し、9月中旬までに結論を出す予定です。新規ホテルの供給は減少する見通しです。なお、すでに発表されている計画の中止や用途変更が考えられますが、それによる計画の減少レベルは現時点では不明です。住居ポートフォリオは引き続き安定成長を予想しています。

1口当たり分配金(DPU)の推移

3ページにいきます。1口当たり分配金の状況に関して説明しています。この棒グラフは、2012年からのDPUを示しています。DPUは、2019年まで7年連続で成長を達成しましたが、残念ながら2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により大幅に低下しました。当期DPUは、5月11日に発表しました修正予想の30円は上回りましたが、69円となりました。2月20日発表時点での予想を大幅に下回り、誠に遺憾で申し訳ありません。深くお詫びします。新型コロナウイルス感染症の状況、経済、観光などへの影響の不透明感から、2020年12月期のDPUは引き続き「未定」とします。

資本的支出及び減価償却費

4ページをご覧ください。資本的支出に関しては、現在の経済および観光などの環境における不確実性を考慮し、柔軟な対応を可能にするために、手元資金72億円に加え、資本的支出の計画を16億7,000万円削減することにより、手元資金を積み増しています。なお、物件ごとに予算を精査し、必要なメンテナンスを実施する一方で、不急の計画を先送りすることにより支出を抑制しています。また、重要な戦略的支出はほとんど期初の計画どおりに実施します。

平準化NOI & ホテルKPI

5ページをご覧ください。ホテルKPI(key performance indicator)は、新型コロナウイルス感染症の影響により急激に悪化しました。当期のホテルのNOIは15億8,800万円となり前年同期比88.3パーセントの大幅な落ち込みとなりました。

一方、住居ポートフォリオのNOIは、2020年6月期において前期比プラス1.9パーセントと期初予想の0.6パーセントを上回り、2020年12月期においても2月20日時点の予想を上回る安定成長が見込まれています。

INVホテルポートフォリオの2020年稼働率予想(暫定)

次に今後の稼働率の予想を、ホテルに関してご説明します。6ページをご覧ください。グラフが示していますように、国内ホテル稼働率は5月に底打ちしたと考えられ、6月以降回復の兆しが見え始めています。

しかしながら、9月以降については、新型コロナウイルス感染症の状況に対する政府や企業の対応や方針、個人の行動など、不確定要素が多く、予測は困難な状況です。

予約日から宿泊日までの予約リードタイムの加重平均は、昨年同時期では40日以上あったのですが、最近では昨年の3分の1未満の10日から12日程度と2週間もないため、予想を立てることが非常に難しくなっている原因の1つとなっています。このあと、予想が困難なほかの背景に関して説明します。

ポートフォリオ収益構成

7ページをご覧ください。インヴィンシブル(INV)の収益構成は、ホテルの営業収益が新型コロナウイルス感染症の影響で大幅に減少したため、当期は住居・商業施設ポートフォリオの営業収益が全体の34.1パーセントを占めています。

日本における新型コロナウイルス感染症に関する主な経過とホテル稼働率の推移

8ページにいきます。このページは左側に日本における新型コロナウイルス感染症に関する主な経過と、右側上段にINVが保有しMHMが運営する73物件のホテルに関して稼働率の推移。右下の棒グラフでは国内の新規感染者数の推移を示しています。ホテル稼働率は3月に大幅な低下が始まり、5月に底を打った模様です。しかしながら、右下の棒グラフが示すように、7月以降、新規感染者数が増加しており、第2波は第1波よりも大きい状況で回復のフェーズが、残念ながら遅いと言わざるを得ないと考えています。

業績予想策定に向けての課題:様々な不確定要素

9ページにいきます。左上に世界全体とアメリカの新型コロナウイルス新規感染者数の推移。その下に米国およびケイマンにおける新型コロナウイルス感染症に関する主な経過を記載しています。

左上の棒グラフが示すとおり、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行収束の兆しは見えない状況で、2020年12月期以降の業績予想作成にあたっては、右側に記載したように重大な不確定要素が多すぎるため、困難な状況です。したがいまして、2020年12月期の業績予想は引き続き未定とすることが妥当と判断しました。このような状況下で、MHMとの賃貸借契約に関してはMHMが運営する国内73ホテルの直近の状況等により、 2020年12月期における賃貸借契約の改訂について協議中で、9月中旬までにMHMとの賃貸借契約の改訂を決定、発表する予定です。

MHMによる新型コロナウイルス感染症対策(1)

10ページです。このあと、MHMによる新型コロナウイルス感染症対策を3ページに分けてご説明します。新型コロナウイルスの影響は当面続く見通しであり、その影響を考慮に入れたホテル需要の獲得を図る必要があります。INVポートフォリオの主要オペレーターであるMHMは、新型コロナウイルスの感染拡大収束が見通せない中で、急激に減少したホテル需要の回復を図るためのさまざまな取り組みを行っています。

左側には衛生面に十分配慮したビュッフェの再開や、3密回避の会議・宴会プランの提供について説明しています。右側では宴会や研修などのキャンセルに関する徹底したフォローと、その成果を示しています。国内需要の喚起のために、お得な利用券付きプランを作成したり、修学旅行をはじめとする各種の教育旅行の取り組みにも積極的に営業し、一定の成果をあげています。

MHMによる新型コロナウイルス感染症対策(2)

11ページにいきます。新型コロナウイルスの影響が続く中で、これまでになかった需要も生じています。MHMでは、「ウィズ・コロナ」の環境下におけるニーズに対応する新しい取り組みにより、新規需要の創出にも努めています。

例えば、左上をご覧いただくと、お子さまがいらっしゃるなどで在宅勤務が困難な方を対象に、朝7時から夜10時までという日中使用を中心としたテレワーク環境の提供で、4月15日から6月末までに9,100万円を超える売上を達成したことがわかります。投資主のみなさまもぜひご利用いただきたいと思います。

左下のデリバリーサービスおよびテイクアウトの実施は、「ウィズ・コロナ」の環境で継続的な需要を見越し、新たな事業の柱の1つとして対象ホテルを拡大していく方針です。ページの右側をご覧ください。自主隔離客の受け入れに関しては、約3,000社の法人にアプローチ、空港周辺ホテルのほか、都内や横浜などの首都圏ホテルにおける需要も獲得しています。結果としまして、2020年3月以降7月末までに75社から1億6,8000万円超の受注を獲得しています。

MHMによる新型コロナウイルス感染症対策(3)

12ページをご覧ください。MHMは、すべてのオペレーションを抜本的に見直し、左側の表が示しますように、人件費・外部委託業務費用の低減、マーケティング費や光熱費などの大幅削減を実行しています。また右側の表が示しますように、臨時閉館の実施や地域での集約を含む営業形態の見直しも行ない、ホテル運営費用の徹底的な削減に努めてきています。

他のオペレーターによる新型コロナウイルス感染症対策(マリオット)

13ページをご覧ください。MHM以外の、ほかのオペレーターによる新型コロナウイルス感染症対策に関してご説明します。INVポートフォリオのうち、ケイマンの2物件およびシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルはマリオットブランド傘下のホテルです。

マリオット・インターナショナルは新型コロナウイルス感染症の流行による新たな安全・衛生上の課題に対応するため、世界中の傘下ホテルの衛生水準とホスピタリティを高める基準となる「Commitment to Clean」を策定しました。INVが所有する3つのホテルも、マリオットの厳格な安全・衛生基準を順守しています。

ケイマンホテルの状況について

14ページにいきます。次にケイマンホテルの状況について、ご報告します。グランドケイマン島の国際空港は、2020年3月23日から閉鎖されています。10月1日より、到着後5日間の隔離や滞在中の監視装置の装着など、さまざまな制限付きで段階的に再開予定です。

したがって、INVが所有する2つのホテルは空港再開後の航空便や観光客の回復状況を勘案した上で、11月1日に営業再開を予定しています。増築計画に関しては、いったん延期とする一方、新型コロナウイルス問題の収束後にスムーズに再開できるよう、デザイン・設計図面までを完了させた状態です。

国内の新規ホテル供給状況

続きまして、15ページです。国内の新規ホテル供給状況は、右側のグラフをご覧のとおり、「週刊ホテルレストラン」の調査によりますと、2020年5月1日時点で合計10万2,286室の新・増設ホテル開発計画が確認されていますが、これは2014年12月の調査以降、初の減少となった前回調査に続き、2回連続での減少となります。

左側のグラフをご覧ください。ホテル開発のピークは2020年となる見込みであり、2021年の新規客室数は前年比54.7パーセント減となり、前回調査と同様の傾向です。新型コロナウイルス感染症の影響により、新規ホテル供給の勢いに陰りがみられると考えています。また、すでに発表されている計画の中止や用途変更が考えられますが、具体的な計画の減少レベルは現時点では不明です。

住居ポートフォリオの賃料増額改定状況

16ページにいきます。INVは、住居ポートフォリオにおける積極的なアセットマネジメントを推進していきました。賃料上昇に意欲的なPM会社を起用して、可能な限りの賃料上昇の実現を目指しています。

当期における住居ポートフォリオの新規契約、更新契約合計の賃料は従前賃料比で1.3パーセントの上昇を達成しています。

財務の状況

17ページで財務の状況に関してご説明します。新型コロナウイルス感染症の早期終息が期待できないことから、短期的には既存借入金の借換えに際して、支払金利の上昇を抑えながらも確実に借換えを行なうことを優先課題として取り組んでいます。

中長期的には、借入コストの削減、有利子負債の平均借入期間の長期化、返済期日の分散、資金調達手段の多様化などの財務戦略を実行していきます。

なお当期末でLTVが上がり、DSCRは低下していますが、本日現在までに金融機関などからの借入に関する一切の財務制限条項に抵触はしていません。借入先金融機関さまとは、良好な関係を維持しています。

ESGに関する取り組み(更新事項)

18ページにいきます。ESGに関する取り組みについては、更新事項のみご説明します。まず左上、環境への取り組みでは節水型トイレやシャワーおよびガスコージェネレーション、インバーターなどの設置を増やしています。またケイマンのホテルでは、プラスチックストローを撤廃しました。左下にある主要オペレーターであるMHMの取り組みとしては、旭川市などの商工会議所と連携して、ソーシャルディスタンスに配慮した懇親会の実施を支援したり、別府市の観光を盛り上げる安全安心な温泉、旅館に関する企画に参画したりしています。

ページの右側では、資産運用会社による従業員への取り組みとして、適正な人事評価を行ない、人権の尊重とダイバーシティの推進として、とくに女性の活躍を推進し、能力を最大限に発揮できる環境づくりに努めていることを示しています。また、全従業員を対象としたさまざまな福利厚生制度を整え、従業員のライフスタイルに合わせた就業を支援しています。

投資主優待

最後にAppendixの中から20ページ、投資主優待についてのみ、ご説明させてください。これは投資主がシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルおよびすべてのマイステイズホテルに最安値の宿泊料金から10パーセント安く宿泊可能になる制度です。2020年6月期以降、投資主さまのご要望に配慮するとともに、INVホテルポートフォリオの稼働率向上を図るため、対象投資主について「10口以上を保有する」との条件を撤廃し、全投資主さまに変更しました。

投資主さまのみなさまには、ぜひご利用いただけますよう、ここであらためてお願いします。長時間のお時間をいただき、誠にありがとうございました。新型コロナウイルス感染症に加えて、残暑厳しき折、みなさまのご健勝を心からお祈りいたしています。ありがとうございました。

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