9.11から19年、米国の”対テロ”からの撤退は吉と出るか凶と出るか

だが、中東やアフリカ、アジアでは、ぞれぞれの思惑や戦略、忠誠心の度合いなどで違いはあるにせよ、アルカイダやイスラム国などを支持する組織が活動している。

言い換えると、そういった名前や暴力的な主義・主張は、依然として一部の者たちに支持されている。特に、アフリカのサヘル地域ではそういった過激主義を掲げる集団による暴力が増加しており、ブルキナファソやニジェール、マリなどでは深刻な問題となっている。

米国の対テロ撤退は日本人保護への不安につながる

米国のパワーが相対的に低下し、米中対立が強まるなかでは、対テロに割けるマネーやマンパワーには限りがある。

だが、米国が対テロから対中にシフトし過ぎると、中東やアフリカで政治的空白がこれまで以上に生じ、ジハード主義組織が自由に活動できる空間が拡大し、リージョナルな問題が再びグローバルな問題へと変わる危険性もある。

近年、アルカイダは欧米やイスラエルを攻撃する戦略以上に、アルカイダ系組織が活動する地域で住民からの支持を拡大する戦略(医療支援や食糧供給、雇用の提供など)に舵と切ったとも言われるが、中長期的にはそういった地域的な地固めを強固なものにした後、再び欧米などを攻撃する戦略に回帰するとの声も聞かれる。

このまま時間が経過すると、米国は対テロから対中へさらにシフトするだろうが、テロ問題は100万人以上の在外邦人の安全・保護とも重複する問題である。今後の動向が懸念される。

和田 大樹

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清和大学講師/ オオコシセキュリティコンサルタンツ アドバイザー、岐阜女子大学特別研究員、日本安全保障・危機管理学会主任研究員を兼務。
専門分野は国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論。日本安全保障・危機管理学会奨励賞を受賞(2014年5月)、著書に『テロ、誘拐、脅迫 海外リスクの実態と対策』(同文館2015年7月)、『「技術」が変える戦争と平和』(芙蓉書房2018年9月)など。研究プロフィールはこちら