2020年8月7日に行なわれた、大塚ホールディングス株式会社2020年12月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:大塚ホールディングス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 樋口達夫 氏\n大塚ホールディングス株式会社 取締役CFO 牧野祐子 氏\n大塚ホールディングス株式会社 執行役員 経営企画部長 江村智博 氏
決算ハイライト|2020年度 第2四半期
牧野祐子氏:それでは、2020年度第2四半期の連結業績についてご説明いたします。4ページをご覧ください。まずはじめに、2020年度第2四半期における決算ハイライトです。
世界的な新型コロナウイルス感染拡大により、当社グループの事業活動も一定の影響を受けていますが、その中においても連結売上収益は前年同期比で3.6パーセント増収の6,954億円となりました。
医療関連事業は、患者の受診抑制などの影響から輸液等の事業は減収となりましたが、グローバル4製品が26.2パーセント伸長し、連結業績を牽引しています。
一方で、NC関連事業は、外出機会の減少により影響を受けていますが、「ネイチャーメイド」「デイヤ」および「エクエル」が伸長し、前年同期比96パーセントを確保しています。
その結果、事業利益は前年同期比で16.7パーセントの大幅増益となり、上期までに対計画で約100億円の増益を達成しました。
通期の連結業績の見通しについては、後ほどあらためてご説明しますが、事業利益は対期首計画でプラス50億円となる上方修正を行ないます。また、グローバル4製品の伸長と経費効率化を推進し、事業利益は2,000億円以上のさらなる増益を目指します。
連結業績の概要|2020年度 第2四半期
5ページをご覧ください。連結業績の概要についてです。
先ほどご説明したとおり、医療関連事業におけるグローバル4製品の売上収益が増加しました。一方、NC関連事業は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けマイナスとなりましたが、「ネイチャーメイド」や育成3ブランドが伸長したことにより、連結売上収益は前年同期比プラス3.6パーセント、達成率99.3パーセントと、ほぼ期首計画どおりとなりました。
重要な業績目標の1つである研究開発費投資前事業利益はプラス12.9パーセント、達成率107.8パーセントとなり、売上収益と同様に期首計画を達成しています。
また、事業利益は前年同期比でプラス16.7パーセント、達成率109.6パーセントとなり、増収増益を確保しました。
事業利益|2020年度 第2四半期
6ページをご覧ください。このスライドは事業利益の前年との差異を示したものです。
先ほどご説明したとおり、医療関連事業における自社創薬品であるグローバル4製品の貢献により、売上収益は243億円増加、事業利益は16.7パーセント増加し1,139億円となりました。
なお、医療関連事業とNC関連事業の事業利益の増減要因については、参考資料に記載していますのでご覧ください。
連結業績の概要|事業セグメント別
7ページをご覧ください。事業セグメント別の売上収益と事業利益についてご説明します。
医療関連事業が、前年同期比で売上収益プラス7.6パーセント、事業利益プラス20.9パーセントと大きく伸長し、連結業績の増収増益を力強く牽引しています。NC、消費者およびその他事業における売上収益の減収率は、それぞれ1桁にとどまりました。
また経費効率化の取り組みを含めた販売管理費の減少により、新型コロナウイルス感染症の影響の中でも、それぞれの事業における事業利益はほぼ前年並みを確保しました。
医療関連事業|売上収益
ここから、医療関連事業とNC関連事業についてご説明します。8ページをご覧ください。まず医療関連事業の売上収益です。グローバル4製品の売上は、前年同期比で26.2パーセント増加し2,185億円となり、引き続き増収に大きく貢献しました。
一方、新型コロナウイルス感染拡大に伴う患者の受診抑制や手術件数の減少および病床稼働率の低下により、輸液等が影響を受けました。また、インフルエンザの流行は早期に収束したことで診断試薬が影響を受け、その他製品の売上収益は減少しました。
以上の結果、売上収益は7.6パーセント増加の4,718億円となりました。
NC関連事業|売上収益
9ページをご覧ください。次にNC関連事業の売上収益についてご説明します。機能性飲料等は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う消費者の活動量の低下やイベントの中止等により、「ポカリスエット」や「オロナミンC」の売上が減収となりました。
機能性食品等において、N&Sは都市封鎖や外出規制等の影響を受け減収となりましたが、デイヤフーズは北米における需要拡大により増収となりました。
サプリメントは、体調管理への意識の高まりにより、ビタミン剤などの製品を中心に増収となりました。
以上の結果から、NC関連事業の売上収益は、前年同期比で4パーセント減少し1,588億円となりました。
2020年度 連結業績見通し
10ページをご覧ください。2020年度の連結業績の見通しです。新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮し、通期計画を修正しました。売上収益は、上期実績および現時点での状況を踏まえ、350億円減額し1兆4,100億円を計画しています。
なお、医療関連事業の売上収益については、グローバル4製品は順調に成長していますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響が不透明なため、期首計画を据え置いています。
計画修正により、売上総利益は150億円減少となる見通しですが、通期の事業利益は50億円増加し、2,000億円の計画としています。今後は、グローバル4製品の伸長と経費効率化を推進し、事業利益2,000億円以上のさらなる増益を目指します。
なお、配当については、期首計画どおり1株当たり年間100円を予定しています。この計画修正に関する各セグメントの売上計画については、参考資料にも情報がありますので、合わせてご覧ください。
以上、2020年度第2四半期の連結業績のご説明を申し上げました。ありがとうございました。
2020年度計画サマリー
樋口達夫氏:それでは、第3次中期経営計画の進捗状況についてご説明いたします。2020年の計画サマリー、医療およびNC関連事業のアップデートを中心にお話しします。はじめに、2020年度の計画サマリーです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、人々の生活は大きな変化を余儀なくされ、新しい生活様式すなわちニューノーマルに適応しなければならず、より将来を見通すことが難しくなってきたと感じています。この環境の中、人々の価値観が大きく揺らいでおり、とくに健康の大切さが再認識されています。
当社グループはこれまでもトータルヘルスケアの考えのもと、健康の維持や増進、病気の診断から治療までを担う企業活動を進めてきました。今回のニューノーマルという時代に対して、大塚の掲げるトータルヘルスケアの考え方は、あるべき姿だと確信しました。
今こそ大塚の真価を発揮し、ニューノーマルでの健康意識の高まりを成長機会ととらえ、持続的成長の実現に向けて進んでいきます。大塚グループは、不変の企業理念のもと、独自のトータルヘルスケア企業だからできる新たな社会への貢献に引き続き取り組んでいきます。
アフターコロナ時代に向けて
19ページをご覧ください。アフターコロナ時代に向けた取り組みについてご説明します。人々の健康に貢献する独自の製品やサービスを世の中に届けるため、それぞれのバリューチェーンにおいて、さまざまな新しい取り組みを進めています。
医療関連事業では、業務のデジタル化を含めた新しい取り組みを推進し、治療の開始や継続をサポートするような体制を強化しています。
NC関連事業においては、健康意識の高まりに応える機能性を訴求した消費機会の創出や、ブランド特性を生かした家庭内需要の喚起、各エリアに根ざした人々の健康増進のサポートを進めています。
これらの従来から進めてきた取り組みを、ニューノーマルでさらに加速させ、革新的かつ高品質な製品やサービスなどの新しい価値を創造することにより、世界の人々の健康に貢献していきます。
第3次中期経営計画 戦略骨子|医療関連事業
ここから医療関連事業のアップデートについてです。21ページをご覧ください。第3次中計で説明した医療関連事業の戦略骨子で、「既存事業価値の最大化と新たな価値創造」をテーマに事業を推進しています。本日は、このテーマに沿ってご説明します。
グローバル4製品|計画達成に向けて着実な進捗
22ページをご覧ください。医療関連事業のグローバル4製品の進捗状況です。第3次中計において、これら製品群の売上は、2023年度までの5年間で約2,000億円の増加の計画です。ここまで、新型コロナの影響により事業活動に影響はあったものの、2020年度の売上計画4,150億円に対する進捗率が約53パーセントと、当初計画より早いスピードで進捗しています。
「エビリファイメンテナ」「レキサルティ」の新規処方箋のトレンドについても、一時期の状況から改善している傾向が確認できており、「ロンサーフ」においても、米国において新型コロナにより在宅治療や経口抗がん剤の使用が推奨される中で、処方が増加しています。
このような中、ニューノーマルに適応できるようなさまざまな取り組みを進め、グローバル4製品の下半期についてもこのモメンタムを維持し、計画を上回る達成を目指して事業を進めていきます。
ジンアーク|ADPKD治療へのさらなる貢献と製品価値の最大化
23ページをご覧ください。「ジンアーク」の進捗状況です。これは米国の状況ですが、2020年度上半期は3億1,200万USドルの実績で、前期比約80パーセントの増加となりました。
累計の新規患者数については、新しく治療を受ける患者数の増加スピードは新型コロナの影響で減少している一方、想定よりも治療を継続する患者さまが多く、好調の1つの要因となっています。
また、この状況下でも、治療開始を待ち望んでおられる患者さまがいらっしゃると思います。ADPKD治療薬は「ジンアーク」しかありません。ニューノーマルにおいても、スムーズに治療を届ける準備を整えておくことが製薬会社としての使命であると考えており、治療の開始や継続のサポート体制をさらに充実させていきます。
持続的成長の実現に向けた多くの成果|2020年
24ページをご覧ください。2020年は持続的成長の実現に向けた多くの成果が得られていますので、ここでご紹介します。
注力領域と位置づける精神・神経、がん、そして循環器・腎の3領域において、既存事業価値の最大化と新たな価値創造の実現に向けた多くの成果を取得することができました。
また、第3次中計における主要投資領域である日本のパイプライン強化について、多くの成果を得ることができました。自社創薬、研究においても、将来が期待できる多くの新規化合物の臨床ステージを前に進めることができました。
さらに、大塚オリジナルの着眼点やアイデアを具体化するために、パートナーとのコラボレーションでユニークな技術使用の機会を獲得しながら、大塚だからできる新しい治療薬の開発に引き続き挑戦していきます。
INQOVI|製品価値最大化に向けて
25ページをご覧ください。今年7月に骨髄異形成症候群(MDS)と、慢性骨髄単球性白血病(CMML)の適応で、米国とカナダで同時承認を取得した「INQOVI」についてご紹介します。
本薬剤は、FDAから承認を受けた世界初の経口投与できるDNAメチル化阻害配合剤です。ガイドラインにもあるように、経口剤のニーズが高まっている中、従来の静脈内投与療法の場合に必要となる医療機関への連日の通院といった患者さまの負担を軽減できる新しい治療オプションとして、貢献することを期待しています。
さらに、ライフマネジメントサイクル戦略として、未治療のAML、低リスクのMDSおよび「ASTX660」との併用試験が進行中で、その他の新規臨床開発プログラムについても準備を進めています。製品価値最大化に向けて取り組み、多くの患者さまの健康に貢献していきます。
重要開発品のフェーズ3試験|終了予定時期
26ページをご覧ください。重要開発品のフェーズ3試験の終了予定時期を示しています。Akebiaと共同開発している「バダデュスタット」の保存期の腎性貧血を対象としたフェーズ3試験については、先日のAkebiaからのプレスリリースのとおり、9月初旬にトップラインデータを公表する予定です。
そのほかにも、持続的成長の実現に向けて大きな貢献を期待している多くのプログラムがありますが、成功裏に導けるよう着実に進めていく所存です。
第3次中期経営計画 戦略骨子|NC関連事業
ここからNC関連事業のアップデートに移らせていただきます。28ページをご覧ください。こちらは第3次中計におけるNC関連事業の戦略骨子です。医療関連事業と同様に「既存事業価値の最大化と新たな価値創造」をテーマに掲げており、その進捗状況についてご説明申し上げます。
北米市場
29ページをご覧ください。北米市場における「ネイチャーメイド」と「デイヤ」の、四半期ごとの売上増減率の推移を示しています。
新型コロナの影響により、人々の予防を中心とする健康意識が高まる中、NCブランドに対する高評価が得られ、より多くの消費者に「ネイチャーメイド」や「デイヤ」を選択していただいています。
当初計画していた新製品投入やプロモーション活動、さらには生産体制の強化などのさまざまな施策を進めてきたことがベースとなって、このような成果を得ることができたと考えています。
これまでもご説明しているとおり、多様性を重視した企業経営を推進しています。NC関連事業の中でも多様な事業を持つことで、想定外の事態に対しても対応力を発揮することができ、さらには中長期的な安定した事業活動に繋がると考えています。
プラントベース食品 カテゴリーリーダーとしての確固たる地位確立を目指して
30ページをご覧ください。米国のプラントベース代替品の市場についてご紹介します。外部データソースによりますと、2019年の米国プラントベース代替品市場は、50億USドルに到達し、引き続き高成長で推移しています。
また、同一期間で比較したデイヤフードの売上は、市場成長より早いスピードで拡大しています。直近では、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、動物由来食品に比べてプラントベース代替品が多く選択されているという報告もあります。
今後も市場拡大が期待される環境の中、主力品のチーズ代替品を成長ドライバーとして引き続き積極的なマーケティング活動を展開し、プラントベース食品のカテゴリーリーダーとしての確固たる地位確立を目指していきます。
まとめ
31ページは本日のまとめになります。
引き続きみなさまのご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。ご清聴、ありがとうございました。
2020年度第2四半期における主な進捗(2020年6月末時点)
江村智博氏:それでは、医療関連事業における開発品のアップデートについてご報告申し上げます。34ページをご覧ください。2020年6月末時点における、開発品の主な進捗状況です。
「センタナファジン」について、成人注意欠陥・多動性障害(ADHD)を対象としたフェーズ3試験で、ポジティブな結果が得られています。
後発事象として、「ASTX727(INQOVI)」は、7月7日に米国とカナダにて、骨髄異形成症候群と慢性骨髄単球性白血病の適応で承認されました。
「フレマネズマブ」は、7月29日に日本にて片頭痛の適応取得を目的に承認申請しました。
「トルバプタン」は、日本において抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)における低ナトリウム血症の改善の追加効能が承認されました。
2020年第2四半期における主な進捗(2020年6月末時点)
35ページをご覧ください。「OPC-64005」は、大うつ病(MDD)の患者さまを対象に、本年4月よりフェーズ2試験を開始しました。「フチバチニブ」は、米国と欧州において、乳がんの患者さまを対象にフェーズ2試験を開始しました。
「TAS1440」は、米国において、再発・難治性急性骨髄性白血病の患者さまを対象に、フェーズ1試験を開始しました。欄外に記載しています「TAS-119」は、VITRACに導出しました。
その他、「OPC-64005」は、米国にて注意欠陥・多動性障害について開発していましたが、開発戦略上、中止しました。また、日本において開発していた「TAS-118」並びに「OPS-2071」は、開発戦略上、開発を中止しました。
トピックス フチバチニブ/TAS-120(がん領域)
36ページをご覧ください。ここからトピックスについてお話しします。最初のトピックスとして、「フチバチニブ(TAS-120)」についてご紹介します。
「フチバチニブ」は、大鵬薬品工業が創製したFGFR阻害剤です。選択性が高く、共有結合によって不可逆的な阻害作用を発揮します。本年5月末から6月頭にかけてバーチャル開催された、がん領域で最大規模の学会であるASCOにて、FGFR2融合および再構成遺伝子陽性の肝内胆管がん患者さまを対象にしたフェーズ2試験の中間結果を公表しました。
奏効率は37.3パーセント、がんが悪化しないよう制御できた病勢コントロール率は82.1パーセント、無増悪生存期間も7.2ヶ月と、良好な成績でした。現在、フェーズ3試験を準備中です。
肝内胆管がんは、5年生存率が8パーセントと非常に予後の悪いがんであり、治療成績の向上に貢献するため、引き続き開発を進めていきます。
トピックス ジファミラスト/OPA-15406(その他領域)
37ページをご覧ください。もう1つのトピックスとしまして、「ジファミラスト」についてご紹介します。
大塚製薬が創製した本剤は、PDE4を阻害する外用剤で、アトピー性皮膚炎の治療薬として期待されています。サイクリックAMPを分解する酵素であるPDE4を阻害し、細胞内サイクリックAMP濃度を上昇させ、サイトカインやケミカルメディエーターの産生を抑制することにより、抗炎症作用を示すと考えられています。抗炎症作用を発揮することで、アトピー性皮膚炎の症状を改善することが期待されます。
アトピー性皮膚炎は、小児から成人まで幅広い年齢層に患者さまがおり、アトピー性皮膚炎と診断された患者さまは国内で約434万人いると言われています。
このたび、アトピー性皮膚炎の成人および小児患者さまを対象とした、それぞれのフェーズ3試験を実施し、統計学的な有意差をもって主要評価項目を達成しました。詳細な試験結果については、今後さらなる解析を進めるとともに、専門的な学会で公表する予定です。また安全性に大きな問題は見られませんでした。
アトピー性皮膚炎の治療薬においては、十分な効果を示す安全性の高い薬剤が望まれています。「ジファミラスト」がアトピー性皮膚炎の成人および小児患者さまの治療における新たな治療選択肢の1つとなることを期待しています。
2020年度の主な申請・フェーズ3移行プロジェクト進捗
38ページをご覧ください。最後に、2020年度に予定している主な申請およびフェーズ3移行プロジェクトをお示しします。
「TAS-118」の開発中止により、申請予定が4プロジェクトになりました。フェーズ3移行予定は、残り3プロジェクトです。また、参考資料として主な開発品を領域ごとに掲載しています。合わせてご参照ください。
以上、医療関連事業の開発状況についてご報告申し上げました。ありがとうございました。