2020年8月14日に行なわれた、Chatwork株式会社2020年12月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:Chatwork株式会社 代表取締役CEO 山本正喜 氏

会社概要

山本正喜氏:みなさまこんにちは。Chatwork代表の山本です。本日は大変お暑い中、また新型コロナウイルスの状況の中、当社の決算説明会に足をお運びいただきまして、誠にありがとうございます。今回は、2020年12月期第2四半期の決算説明ということで、私からご説明差し上げます。それではさっそく始めたいと思います。よろしくお願いします。

まず、おさらいの部分もありますが、当社の事業概要からご紹介させていただきたいと思います。Chatwork株式会社は、現在上期が終わり、2020年6月末時点で従業員数134名と100名を超える規模で社員が在籍しています。

拠点としては東京、大阪、ベトナム、台湾があり、東京がメインのオフィスになるのですが、だいたい90名が東京に所属していまして、大阪に20~30名、あとベトナム、台湾に少数いる状況です。

コーポレートミッション

当社のコーポレートミッションは「働くをもっと楽しく、創造的に」です。人生の大半を過ごす「働く」という時間を、ただお給料のために、お金を稼ぐために働く、義務のように働くのではなくて、1人でも多くの人がより楽しく創造的に働ける社会を作りたいというミッションのもと「Chatwork」をはじめとした事業を展開しています。

事業概要

当社の事業概要となります。大きく2つ事業があります。社名になっているビジネスチャットツール「Chatwork」事業が約90パーセントほどの売上を占めています。

もう1つ、セキュリティ事業もあり、「Chatwork」以前より行なっている事業です。いわゆるウイルス対策ソフトウェアというパソコンにインストールをしてウイルスを検知して駆除するソフトウェアの代理販売をしている事業で、経営の安定化に貢献しています。

ビジネスチャットツール「Chatwork」とは

当社のビジネスチャットツール「Chatwork」は、チャットによる業務の効率化、コミュニケーションの効率化を目指したツールとなっています。

2011年3月1日よりリリースしまして、世界でもおそらくファーストプレーヤーであると思います。ビジネスチャットは昨今では活況していますが、業界のパイオニアとして現在、日本国内では、Nielsenの調査で利用者数ベースでNo.1の数字を持っており、導入社数は27万3,000社を突破しています。

コミュニケーションツールの変化

「Chatwork」が目指す世界観ですが、 コミュニケーションツールは手紙、電話、FAX、メール、そしてチャットへと、マクロにより効率的にシンプルなものへと変化しています。今では携帯メールを使う人はほとんどおらず、「LINE」や「Facebook」の「Messenger」のようなものを使ったり、海外では「WhatsApp」のようなサービスを使っていると思います。いまさらメールには戻れないように、一度簡単なもの、効率的なものに進むと、それが不可逆な変化となり、どんどんメールからチャットへと変化していく、コンシューマーの世界ではそのような変化が根本的に起こっていると思います。

一方、ビジネスの世界ではまだまだメールが主役ですが、少しずつチャットに切り替わりながら、一度チャットにいってしまうとコンシューマーの世界同様、不可逆な変化、どんどんチャットが広がっていくようなものが進んでおり、新型コロナウイルスの状況でスピードは早くなってきていると認識しています。

冗長なメールによる生産性低下

メールによる生産性低下ということで、我々が解決したい大きな課題として、メールのコミュニケーションが、伝えたい部分に加えて非常に冗長になっていることがあります。はじめに、「いつもお世話になっています」と挨拶があり、「○○の件で」と記載して、本題に入る。そして「よろしくお願いします」というコミュニケーションを毎回毎回するのが大変なため、内線や「会議しよう」という話になるのだと思います。

ビジネスチャットによる効率性の向上

ビジネスチャットですと、タイムラインと過去からのメッセージの流れがありますので、その続きで本文だけを書くことができます。「LINE」や「Facebook」の「Messenger」のようなものをイメージしていただけると分かりますが、続きで書けることが非常に大きくなっています。

メール1通では「了解です」とただ4文字送られてきても、なんのことかさっぱりわからないですが、チャットだと「了解です」と言ったら「あ、前のが続いてるんだな」とコンテキストの共有が不要なところがコミュニケーションが効率化できる大きな要因となっています。

ビジネスが加速するクラウド会議室

我々は、複数人をまとめたグループチャットの部屋をたくさん作っていくビジネスチャットツールを提供しており、こちらをクラウド会議室と呼んでいます。クラウド上にバーチャルな会議室を、3人入っている会議室、5人入っている会議室、はたまた50人入っている会議室、というように、部屋をたくさん作りまして、そちらごとにトピックを切り替えながら同時並列で会議を進めていくイメージが、ビジネスチャットを使ったコミュニケーションの世界観となっています。

その会議室の分け方は、大きく分けて3つほどあります。一般的なものが組織・業務において例えば、営業部、技術部、総務部といった部署単位切り分けるものです。全社があってもいいかなと思いますが、そのような組織ごとに作るものをさします。

もう1つがプロジェクトです。IPOプロジェクト、展示会プロジェクトといったプロジェクト単位で作っていくのも、非常にコンテキストが絞られますので、コミュニケーションが効率化できます。

また、お客さまとのやり取りにも使えますし、お客さまのサポートにも「営業さんが訪問してこのようなことを話した」などを部屋に書いておけば、簡単な顧客管理もできますので、みなさまはそのような使い方をされているようです。

このようなものがビジネスチャットを使ったビジネスコミュニケーションであると、その雰囲気を感じていただければと思います。

プラン・料金

我々のプランは大きく4つあります。まず無料のフリープランですが、0円でずっと期間の制限なくお使いいただくことができます。フリーの場合、先ほど言ったクラウド会議室の部屋の数が14個までと制限されています。15個目を作るときに制限がかかり、有料版を申し込んでくださいというかたちです。

フリー以外の3つのプランはすべて有料です。2つ目のパーソナルプランが個人向けのプランになっていまして、主に個人事業主を想定したプランになっており、月額400円です。

その隣のビジネスプランが主に中小企業を想定したプランで、こちらが月額500円。そしてエンタープライズが、監査機能が必要なエンタープライズの、セキュリティに厳しい大企業を想定したプランで、こちらが1ユーザー月額800円のプランとなっています。

違いとしては、先ほどのフリーと有料のプランは、利用できるグループチャットの数に制限がないところですが、パーソナルとビジネスの違いで言うと、ユーザー管理の機能です。社員が入したときに、アカウントを作り、退職したときはアカウントを削除するといった、組織管理の機能が付いているのがビジネスのプランになります。

そしてエンタープライズのプランは、何かインシデントがあったときに、「ログを監査したい」であったり、「社外とやり取りする企業を絞り込みたい。この会社はOKだけど、この会社はNG」とか、「役員はOKだけど、一般スタッフは駄目」というような制限をするセキュリティの管理機能・制限機能が付いているのが、エンタープライズプランの特徴です。

ビジネスチャットをとりまく環境

そのようなビジネスチャットの事業を展開する市場環境ですが、先ほどもお伝えし たとおり、新型コロナウイルス感染症によるテレワーク需要が、ご承知のとおり大幅に拡大している状況にあり、当社にとっては大きな追い風となっています。

そのようなビジネスチャットではあるのですが、まだまだ国内普及率は低く、総務省のデータではいまだ30パーセント未満になっていまして、70パーセント強がビジネスチャットが入っておらず、まだメインストリームにはなっていません。ポテンシャルを持った大きな市場と言えます。

一方、海外では普及率は高くて、日本では23.7パーセントという数字がありますが、アメリカでは67.4パーセント、イギリスでは55.9パーセント、ドイツでは50.6パーセントと、各先進諸国では非常に高い数字になっていて、日本はまだまだ遅れているところです。

市場規模の予測としては、2017年で62億円だったところが、約5年で230億円ということで、CAGRプラス30パーセントで成長していく、高成長のマーケットです。

当社サービスの特徴

その中で、当社サービスの特徴が大きく3つあります。1つ目が、誰もが簡単に使える点で、当社はITに詳しい人だけではなく、ITにあまり詳しくない方でも使えることを非常に意識したサービスの設計になっています。「LINE」を使うような感覚でビジネスチャットを使うことができ、とくに日本発ですので日本の方に非常に使いやすいところに配慮がいっているところがあります。

2つ目が、オープンプラットフォームという点です。他社のビジネスチャットには、オープンではないものが多く、1つの会社で契約すると、自社内では当然やり取りができるのですが、社外とやり取りする場合には、ゲストIDを契約内で払い出して、そのID、パスワードで「自分たちの世界に入ってきてください」という設計が一般的です。当社の場合は、それが同じアカウントで、社内ユーザーも社外ユーザーも、1つのアカウントでシームレスに社内外をやり取りできるという、大きな特徴があります。これによって、社外のパートナーやお客さまとのコミュニケーションが非常に取りやすいという特徴があります。

そして3つ目が、フリーミアムのビジネスモデルを取っている点です。BtoBのビジネス向けのサービスでは、無料プランはなく、営業が有料プランを販売するかたちしかないものが多いのですが、当社の場合は、インターネットのサービスを最大限活かしたフリープランを用意し、営業を介さずにお客さまが自分でフリープランを登録し、有料化していくフリーミアムというビジネスモデルを持っています。こちらが大きな特徴になっています。

中小企業マーケットにフィット

この3つの特徴により、中小企業のマーケットに非常に強くフィットしています。簡単に使えるところでは、中小企業のマーケットにおいて、「ITに詳しい人が社内にいなくて、難しいツールを使えない」というところも、非常に簡単にお使いいただけます。また、「ITにかけられる予算がそもそもない」という会社には、無料から使っていただけるところがフィットしています。そして、中小企業は大企業と違って、自社内だけで業務が完結しませんので、たくさんのパートナーや取引先と一緒に業務を進めますが、そのときに非常にシームレスにコミュニケーションできるところが強みになっています。ここは、オープンプラットフォーム制がフィットしているところです。

実際、「Chatwork」の有料プランにおける契約企業規模ですが、86パーセントが300名以下の契約となっていて、我々のユーザー構成は、多くの中小企業のユーザーが横に並んでいるかたちになっています。

業界におけるポジショニング

業界におけるポジショニングです。ビジネスチャットの市場としては、競合企業が大きく2社あります。ただ、各社の中心となるターゲット層は異なっていて、当社とは距離があるところです。

A社は海外の会社ですが、エンジニア中心に広がっていて、エンタープライズを目指しています。そして、B社がエンタープライズに非常に強い会社のためエンタープライズの市場を争っているところがありますが、当社は中小企業で、とくにITスキルが低くあまり詳しくないほうに強いポジションを持っていて、まだビジネスチャットの浸透率が低いこともありますので、各社がビジネスチャット同士でシェアを取りあっていると言うよりは、強いポジションで、メールや電話を競合に市場を切り開いている状況で、市場環境は激しいようで実は激しくないのが、ビジネスチャットの現状です。

当社サービスの強み

実際にそのファクトをお示しします。オープンプラットフォームでID数の、他社とやり取りする場合に、紹介することでユーザー数が増えていく構造を持っているところがあります。紹介されたユーザーがさらに他のユーザーを紹介するというところで複利の構造でユーザー数が伸び続けるというユーザーの増加の強みを持っています。

スライドのグラフは、当社の2011年3月にサービスインしてから、6月までの登録ID数ですが、これは解約したユーザーは削除、除外しているグラフになっています。後半、新型コロナウイルスでグッと上がっているところがご確認いただけると思いますが、非常に綺麗な二次曲線で、登録ID数が伸びていることがご確認いただけると思います。

冒頭にお伝えしたとおり、当社はパイオニアとして、世界でもほぼファーストプレイヤーとしてビジネスチャットに参入し、まったく競合がいない状況でした。そこからA社が2013年8月に、B社が2017年3月に市場に参入してきました。そして非常にビジネスチャットでは強いA社が2017年11月に日本語版をリリースしたということがあったのですが、このような大きな競合のアクションがあったとしても、我々のKPIにはほぼ影響が見られないというところからも、まだまだ市場の普及フェーズ、開拓フェーズに入っていくところですので、「競争環境」というよりは「市場開拓」をそれぞれのポジションにおいて行なっていることをご確認いただけると思います。

成長を支える2つのエンジン

我々の成長を支える2つのエンジンということで、1つが先ほどお伝えした 「フリーミアムモデル」という、無料から使えてそして有料に進んでいくというモデルがあります。こちらは獲得にセールスの手がかからないところが大きな特徴です。獲得コストが低いチャネルとなっており、完全にオンラインのみで完結します。

もう1つが「セールスモデル」というもので、こちらがビジネスの、BtoBの事業においては一般的な、マーケティングのチームが見込み客を獲得し、営業がそこにアプローチしてクロージングし、売上を上げていくという、いわゆるダイレクトセールス(直販)のモデルとなっています。そして、我々はその2つを両方持っているというのが大きな強みとなっています。

我々は2011年に「Chatwork」にサービスインして、2015年にベンチャーキャピタルから資金調達を18億円ほど行なったのですが、それまで営業の人員はゼロでした。まったく営業がいなくて、エンジニアのみでした。私もエンジニアで「Chatwork」の開発者ではあるのですが、オンラインのみでグロスしてきた会社です。

自然増でどんどん伸びていくのですが、さらに市場を拡大させる、マジョリティ層に普及させるにはセールスでプッシュで売っていくという仕組みが必要ということで、資金調達して、営業部、マーケティング部という部門を作って始めたのが「セールスモデル」です。

こちらのグラフをご覧いただくと、この赤い部分で作ったものが「フリーミアム」の売上です。青い部分で作ったのが「セールスモデル」の売上となっており、2015年の資金調達以降始めたモデルなのですが、それが少しずつ割合が大きくなってきており、現状ではもう半々に近いかたちで2つの成長エンジンとなっているということがご確認いただけると思います。

利用開始年度ごとのユーザー収益推移

次がSaaSの決算会議資料ではよく見られるものだと思いますが、利用開始年度ごとのユーザー収益の推移です。こちらは、この色ごとに、2011年に獲得したお客さまが経年で、売上がどう変化するかを表したチャートになっています。

通常、同じお客さまの群ですと、年数が進むと解約が入ってきますので、右肩下がりになるグラフになるのですが、我々の場合、ご覧いただくとおり右肩上がりになっており、経年で獲得した過去のお客さまで売上が上がっていくという構造を実現できています。どのような仕組みかというと、100人の会社がはじめは30人で使っていたが「良いツールだから隣の部署でも使うよ」ということで、40人、50人、60人とライセンス数が増えていく、同じお客さまの中でライセンス数が増えていくという部分と、ビジネスプランだと、「ちょっとセキュリティの部分がもう少し強めたいから「エンタープライズプラン」にするよ」とアップグレードをするといったことが挙げられます。

SaaSの事業社は数年おきにプロダクトの機能をアップデートし、プライスの見直しを行なっていますが、そのようなところでARPUが引き上がっていくという影響があります。我々はそのような解約を増加が上回るという「ネガティブチャーン」と言われている状態を実現できています。

その増加率を表すネットレベニューリテンションレートも127パーセントと非常に高い水準を達成しており、グローバル企業と比較しても遜色ない数字となっていると思います。そしてそれを支える解約率の低さ、月次で99.6パーセントのユーザーが継続するという、ほとんどやめない構造を持っているということが当社の強みです。

ビジネスチャットというツールはご想像いただけるとわかると思いますが、会話していくうちに「ログ」という過去のやりとりが全部残っていくのです。そしてそれを止めるとなると過去の会話を全部捨てるということになるので、「言った言わない」であったり、過去のやりとり、過去の会社の資産というものを捨てるということになります。このように非常にスイッチングコストが高いという特徴がありますので、解約率は非常に低いです。「Chatwork」は解約率の低さとユーザー数が増えていく構造を持っているので、このようなグラフが実現できています。

そして最後に、チャートの角度が上がっているところがご確認いただけると思います。決算説明の数字の部分でもお話ししますが、既存プランの廃止をして、新しいプラン、価格の高いプランへのプラン変更というものを行なっていますので、既存のお客さまのARPUがグッと上がっているというところがこのチャートからもご確認いただけるかなと思います。

好循環が加速するサービス構造

それをサイクルで表した図がこちらです。ユーザー数が増えていくと、サービス価値が上がります。いろいろな人が使うことによって「Chatwork」自身のサービス価値が上がっていくという、ネットワーク効果を 「Chatwork」は持っています。つまり「Chatwork」をより活用していただき、活用量が上がる、ということです。活用量が上がると、紹介をしていただき、さらにユーザーが増えるという、ユーザーがユーザーを呼ぶ循環を持っています。

また、我々は活用度が上がるとプレミアムの構造によって有料化が進む、ということがあり、有料ユーザー数が増えていくというところで、活用度が上がれば上がるほど収益が上がり、その収益を機能強化、認知拡大に投入することによって、内側の自動で回っていくサイクルをさらに強化するという二重の好循環度サイクルを持っているのが、我々のモデルの強みだと思っています。

今後の戦略

今後の戦略です。『「Chatwork」はビジネス版スーパーアプリへ』ということで、ビジネスチャット市場はまだ浸透率30パーセントのところを50パーセント、60パーセントとなっていった先の構想で、長期のビジョンとしてスーパーアプリの構想を持っています。

中国の「WeChat」であったり「Alipayサービス」、日本だと「LINE」「PayPay」が、スーパーアプリの構想を打ち出しています。どういったものかと言うと、日常的に使う接点が多いアプリケーションにいろいろな機能を載せていく、いろいろなニーズの起点となるアプリをスーパーアプリと呼んでおり、我々はビジネス版のスーパーアプリを目指せる位置にいるのではないかと思っています。コンシューマーの世界においてもスーパーアプリになる候補はチャットか決済です。我々はビジネスのチャットを抑えています。

なぜチャットがスーパーアプリに変わるポテンシャルになるのかというと、ほかのビジネスアプリケーション、SaaSと比べて圧倒的に滞在時間が長いためです。いろいろな営業管理や会計、労務管理など、様々なSaaS、ビジネスアプリケーションがありますが、一部の特定の職種の方が一部の業務で使うアプリケーションになっています。

全職種の全従業員の方が本当に朝から晩までずっと開いていて、非常に滞在時間が長いのが特徴で、その滞在時間の長さが入口となって、いろいろなアプリケーションであったり、サービスのアプローチする接点を作ることができると考えています。

実際に我々としてはビジネスチャットだけではなくオンラインアシスタントのサービスや、電話を代わりに受けて、チャットで書き起こす電話代行のサービスを実施しています。また、ファクタリングのサービスや助成金を診断するファイナンスのサービスもやっていまして、中小企業における「ヒト・モノ・カネ」を支援する経営インフラのサービスを長期ビジョンとして考えています。

市場規模

そのようなところで我々のTAMは、国内労働人口6,724万人ほぼすべてにアクセスできるサービスと考えています。6,455億円のTAMがあることを、まさにスーパーアプリの構想でARPUを上げていくことによって、大きくできるポテンシャルがあると考えています。

将来の成長イメージ

将来の成長イメージです。このようなタイムラインで我々は成長を考えています。2024年まで、あと4年くらいですが、ここまでのフェーズを我々としてはビジネスチャットの普及期と捉えています。我々は中小企業のビジネスチャットのデファクトスタンダードになる、No. 1になることを4年間で実現したいと考えています。売上高のイメージとしては100億円ほどです。年度の成長率をずっと維持することによって100億円達成を目指したいと考えています。

そのキーとなるまだビジネスチャットが入ってない70パーセントのマジョリティ層にリーチするためには、ただオンラインで待っているだけではなく、ダイレクトセールスを強化する、マーケティングを強化することによって、ビジネスチャットをそもそも知らない方に知ってもらい、それが便利だと知っていただき、活用していただくまでしっかりフォローする体制が必要なので、そちらに関してはしっかりと投資を行なっていきたいと思っています。先ほどの2つの成長エンジンのセールスモデルの部分を強く大きく成長させていきたいと考えています。

もう1つの大きな戦略ポイントとしては、ネットワーク効果というユーザーがユーザーを呼ぶ構造、オープンプラットフォーム性を持つビジネスチャットという非常に特殊なポジションを最大限活かして、それを加速させていく、紹介を増やしていく仕組みをプロダクト、ロードマップを通して、開発を通して実現していきたいと思っています。

2024年に中小企業のビジネスチャットNo. 1のポジションを確立できた後、2025年以降は先ほどのビジネス版スーパーアプリ構想を実現していくために、ビジネスチャットにいろいろなサービスを乗せていく、違うプロダクトのリンクをどんどん深めていき、ユーザーのARPUを上げていくことを行ない、プラットフォーム化を目指していきたいと考えています。このような成長イメージを持っています。

新型コロナウイルス感染症の影響について

上期の第2四半期が終わりまして、主要トピックで第2四半期の動きを取り上げたいと思います。まず新型コロナウイルス感染症の影響について、みなさまも非常にご関心をお持ちかと思います。グラフに無料も含めた登録ID数の月次の登録数を出していますが、後半で大きく上がっているところが4月です。緊急事態宣言があったことから、4月で急激な増加をしています。

5月に入ると、そちらが急速にキュッと下がって、6月、7月と落ち着いてきているのですが、前年と比較しても、平均で36.5パーセントほどのベースアップとなっています。急速な特需は落ち着きつつもベースアップになっているところをご確認いただけると思います。登録IDには無料も含まれているのですが、課金IDの純増数も5月、6月、7月の平均で前年比プラス61.9パーセントとなっており、順調に有料化が進んでいています。

新型コロナウイルス感染症 対応事例:GMOインターネット様

新型コロナウイルス感染症に対して「Chatwork」が役立っている事例のご紹介で、GMOインターネット様をご紹介できればと思っています。GMOインターネット様は、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言などが出るはるか前に、1月末より約4,000人を在宅勤務へシフトして大きな話題を集めた企業です。GMOインターネット様では「Chatwork」を全社で導入しており、「Chatwork」があったからスムーズなテレワーク・在宅勤務が実現できたとコメントとともに当社の事例にも出ていただいています。

Zoomとのサービス連携を2020年7月より開始

次のトピックは「Zoom」との連携です。新型コロナウイルスでは、「Zoom」がビデオ会議のスタンダードになったと聞かれていると思いますが、「Zoom」と「Chatwork」のサービス連携を、2020年7月より開始しています。この連携により「Chatwork」上から簡単に「Zoom」でのミーティング・会議を開始できるようになりました。チャットとビデオ会議は非常に相性がいいサービスと考えております。在宅勤務や新型コロナウイルス下において「Zoom」が非常に流行り、ビデオ会議は「Zoom」で行なえばいいのだという流れになっています。

しかし、『それじゃあ「Zoom」と「Zoom」の間のコミュニケーションはどうすればいいんだ』ということで、みなさま非常に困ったのです。電話を毎回するわけではなく、オフィスにいれば自然とできた会話もできない。そちらにビジネスチャットという、バーチャルな会議室が先ほどたくさんあるとお伝えしましたが、そのようなビジネスチャットで日常的なオフィスの会話がなされており、そして直接顔をあわせての議論が必要な会議には「Zoom」のようなビデオ会議が使われるところで、併用すると非常に在宅勤務・テレワークが進みやすいのですが、その中でも、「Chatwork」と「Zoom」を両方使っている方が多かったのです。そちらの連携をしてほしいという声にお応えして、提供を開始しています。

こちらは非常に急速に「Zoom」の連携を使っていただくユーザー数が増えており、「Zoom」を使っていただいているユーザーに相性のいいビジネスチャットとして「Chatwork」を訴求するきっかけ作りにもなる本機能をリリースしています。

三井住友銀行の「テレワーク導入支援プログラム」に選定

三井住友銀行が実施している「テレワーク導入支援プログラム」に、「Chatwork」が選定されています。こちらは国内の中小企業を対象として、最大10億円、三井住友銀行の予算で、『「テレワーク導入支援プログラム」対応サービスの、初めの1年目の金額を負担します』という内容で、中小企業では1年目が無料になります。こちらは無料であっても、我々は費用をいただけるものになっており、非常にご好評をいただいていて、ユーザー数の獲得に寄与していることが、大きなトピックとして挙げさせていただければと思います。このような代理店を通した拡販も、進めていければと思っています。

業績ハイライト

それでは、業績に移らせていただきたいと思います。第2四半期の業績です。まず業績のハイライトで、主要なところを挙げさせていただいています。

第2四半期の売上高は6億1,200万円で、前年同期比プラス39.1パーセントです。メインとなるChatwork事業の第2四半期の売上高は5億2,000万円で、前年同期比はプラス35.1パーセントです。

原価を引いた売上総利益は4億5,000万円で、こちらは前年同期比プラス63.7パーセントと、大幅に伸びています。そして、営業利益は1億3,900万円で、前年同期比プラス316.2パーセントと、前の比較が少し小さいところもあるのですが、急速に大きく伸びています。

新型コロナウイルスの感染症により売上高が伸びているところで、この第2四半期も大幅な売上高の伸長を実現できています。そして、前四半期の決算説明資料にも書かせていただいていますが、今期よりシステム原価を資産として計上しております。システム原価は、当社では開発人件費とサーバー費の一部となっております。

こちらは会計上の基準を変えているのですが、売上総利益以下の費用の部分が減価償却されるようになりますので、単年度の費用としては圧縮されて見えるところで、各段階利益が大幅に増加をしています。売上総利益率としては、前年同期比11.1ポイントと大きく改善を見せていて、利益率が大きく改善しています。

課金ID数、KPIに関しては、43万4,000IDで、前年同期比18.6パーセントでの成長、そしてARPUである1ユーザーあたりの単価価格は、価格改定の影響もあり、前年同期比プラス14.7パーセントと、大幅に増加をしています。

業績サマリー

こちらが業績サマリーの表になっていますが、先ほどのハイライトで述べた部分の数字が、詳細にご確認いただけると思います。売上高はプラス39.1パーセントで伸び、各段階利益は、資産計上の影響が非常に大きいのですが、大きく改善をしているのがご覧いただけるかと思っています。

売上高推移

それでは、それぞれのブレイクダウンの詳細をご説明させていただければと思います。まず、売上高推移です。こちらは、先ほどお伝えしたとおり、テレワーク需要の増加を受けて、Chatwork事業が35.1パーセントです。そして、もう1つのセキュリティ事業も、在宅勤務が増えたことによって、ウイルス対策ソフトが必要だ、セキュリティの強化が必要だというところで、こちらも追い風になったのです。そちらも前年同期比プラス67.4パーセントと、我々の2つの事業のそれぞれが追い風となって伸びています。

そして、Chatwork事業に関して、この第2四半期、大きくグッと上がっているのがご確認いただけると思いますが、このテレワークの特需だけではなくて、価格改定・旧プラン廃止も大きくARPUの増加に寄与しており、こちらの売上高に含まれています。

主要KPI推移①

主要KPIの推移です。登録ID数は356万1,000IDとなっており、前年同四半期比でプラス29.6パーセントと、大幅に増加しています。DAU(Daily Active User)数です。1日に使っているユーザー数も、第2四半期はグッと大きく上がって81万3,000ユーザーと、大幅に増加しています。

主要KPI推移②

課金IDです。課金IDは43万4,000IDで、前年同四半期比プラス18.6パーセントと、こちらも大幅に増えています。そしてARPU部分ですね。価格改定や、旧プランの廃止が大きく影響して、第2四半期でグッと大きく上がり、前年同四半期比プラス14.7パーセントと大きく伸長しており、ID数とARPUが上がったことによって売上増が実現できているという構造になっています。

売上総利益・売上総利益率推移

売上総利益率の推移です。こちらが当期より先ほどお伝えしたようにシステム原価を資産計上している影響で、今期からググッと大きく利益の額が増えており、率としても上がっているのがご確認いただけるかと思います。

こちらは、資産を計上したから、利益率が良くなった、売上総利益が上がったのではないか、その比較はどうなのだ、というところですが、システム原価を従来どおり資産を計上せずにそのまま単年度の費用計上した場合でも、売上総利益率というのは67.2パーセントというところで、前四半期比で0.7ポイントの改善をしているということで、構造としても規模のコストが働くため、サーバーコスト、開発人件費は別に売上に比例するわけではなく、どんどん比率としての売上総利益率が良くなっていく構造を持っています。

営業利益推移

営業利益の推移です。こちらもシステム原価の資産計上によって人件費が大きくグッと圧縮されたということがあるため、当期の引き続き大きな利益を計上しています。また、新型コロナウイルス感染症により、当社は、現在ほぼ在宅勤務になっているのですが、それによって交通費や会議費といったものを大幅に使わない費用となっており、利益を増やす要因にもなっています。

そして、それをそのまま使わないまま利益をどんどん増やしていくのかというところですが、テレワークにどんどん社会が対応していくということを当社としては非常に大きな事業機会と捉えていますので、積極的にマーケティング費用や採用といった、企業的な投資を進めていきたいと考えています。

費用構成推移

費用構成の内訳です。こちらはテレワーク特需で引き合いがすごく多くなりました。問い合わせであったり資料請求が多くなって、それに普段であればマーケティング費をかけて見込み客を集めてそちらに対して営業がアプローチをするというかたちですが、マーケティング費をかけなくてもどんどんどんどん見込み客が来るという状況でしたので、むしろマーケティング費の方が圧縮されています。広告宣伝費の方が少し圧縮されているというのが第2四半期で、テレワークの需要に対応するために営業人員を増やすというところがボトルネックになってきているため、人件費の方は増えています。また、テレワークの特需と言いますか、新型コロナウイルスの影響も少しはおさまってきていますので、構成費は今後増やしていくことになると考えています。

従業員数推移

従業員の推移です。採用を大きく進めているのですが、当四半期では20名の純増となって114名から134名という社員数になっています。大きくはとくにインサイドセールスという電話営業の部隊の人員が大きく増えているというところと、エンジニアが大きく増えているというところが人数の大きなところで、コーポレートの方はそこまで大きく増えてはいません。当期はこのままテレワークの特需というところ、社会構造の変化というところを積極的にとらえるために、インサイドセールスやエンジニアを中心に人員増加を進めていく予定です。

2020年12月期 業績予想

業績予想ということで、今回より詳細な開示を行なっています。新型コロナウイルス感染症のテレワークの需要が読めてきたというところがありますので、期初の業績予想を上回る見通しを出しています。システム原価の資産計上というところが実現できたということもあるため、利益構造が見えてきたので、そちらもより具体的な数字を開示しています。

売上高に関しては、前回までの決算説明では前期比プラス30パーセントの成長というところの成長率を業績予想と出させていただいていますが、そちらも具体的にレンジとして出させていただいて、24億5,000万円から25億4,100万円と、パーセントに直しますと、前期比でプラス35パーセントからプラス40パーセントでのレンジでの業績予想としています。

そしてChatwork事業の方ですが、こちら前期比プラス40パーセントと出していましたが、こちらは、21億5,900万円から22億3,900万円ということで、プラス35パーセントからプラス40パーセントと、こちらは「Chatwork」の事業のほうは好調なのですが、プラットフォーム事業のなかでも「Chatwork アシスタント」や、「Chatwork 電話代行」のように一部悪影響を受けているサービスもあり、そちらの部分と差し引きしてプラス35パーセントからプラス40パーセントというレンジになっています。

もう1つ、売上総利益の部分です。前期比40パーセントと出しているところがプラス58パーセントからプラス66パーセントということで、17億8,600万円から18億7,000万円になっています。営業利益および経常利益も、利益の部分、営業利益以下の段階利益に関しては、黒字を継続するという業績予想を出していましたが、上期、第2四半期が終わり、残り半期となりましたので、レンジで費用の部分を予想として出しています。

営業利益が2億3,100万円から3億5,900万円と、こちらは前期比プラス197パーセントからプラス363パーセントです。経常利益に関しては2億3,300万円から3億6,300万円、こちら前期比でプラス274パーセントからプラス483パーセント、当期純利益は2億7,200万円から4億2,100万円と、前期比ではプラス344パーセントからプラス587パーセントというところを今回業績予想として出させていただいています。

コスト構造 − 投資プリンシプル

そして、こちらも毎回お話ししていますが、我々の投資のプリンシパルをお伝えします。

我々はSaaSビジネスで、月額課金、継続課金のサービスになりますので、セールスマーケティングの費用、いわゆる広告宣伝費、営業の獲得コストは、単年度でかかるコストとして損益計算書に単年度で計上されますが、獲得したお客さまは解約率が非常に低いこともあって、次年度以降にも売上が継続して上がっていくということになりますので、我々としては、そのセールスマーケティング費用を2年目以降に投資するものと考えており、将来的な成長を大きくするためにも積極的に投下していくことが将来の売上成長、利益成長につながっていくと考えています。獲得のためのコストは積極的に使っていくと明示していますが、黒字をしっかりと維持し、ダウンサイドのリスクはヘッジするという投資原則を持っているというところをもう一度あらためてお伝えできればと思います。

株主優待制度のご案内

株主優待制度をはじめています。我々は「Chatwork」というサービスを提供しており、ユーザーで株主の方もたくさんいらっしゃいますので、感謝の気持ちを込めて、より支援いただき、一体となって応援していただきたいという気持ちから、株主優待制度を始めさせていただきました。「Chatwork」の「パーソナルプラン」という個人向けのプランが株主名簿に載っているのですが、6ヶ月以上連続して掲載いただいている方を対象として、有料のパーソナルプランを無料で進呈するの優待を始めています。

以上がご説明になります。資料の後ろにはがAppendixとして価格改定の部分の詳細を記載していますので、詳細をご確認いただきたい方はご覧ください。また、我々のプロフィールなども載っていますので、ご確認いただければと思っています。私からのご説明は以上となります。ありがとうございました。

質疑応答:利益の考え方などについて

質問者1:まず1つ目なのですが、利益の考え方です。今回、黒字継続から成長レンジで表していただいたのですが、数字を見ますと下限のレンジは下期にほとんど利益が出ない見通しを出されています。広告宣伝などいろいろなものに対してそれほど大幅な投資をするのかどうかといった利益の考え方について教えてください。まず、下期にはあまり利益の出ない見方の考え方をご解説いただけますでしょうか。

山本:利益に関して下期の見通しをご質問いただきました。こちらに関しては、おっしゃるとおりで、今は広告宣伝費をそこまでかけていません。下期でそんなに使うのかということですが、正直なところ、使いたいが使えていないのが当社の実情です。説明中にもありましたが、マーケティング、広告宣伝費をかけることにより、引き合いがたくさんくるのです。その引き合いに対する営業マンがいないと、全部とりこぼしてしまうので、ザルの目のように広告宣伝費が抜けていってしまうところがあります。我々はセールスの部隊を最初にしっかりと作り上げなければいけないと思っていまして、今はそちらの人員が急激に拡大しています。教育も進んでいますので、たくさんのセールスメンバーが戦力化し、そちらに対して受け止められる見込み客の数が増えてきます。それに対して広告宣伝費が増えてくる構造になりますので、下期にかけて体制を整えてきており、今後増えてくる可能性が十分あると思います。

質問者1:それ以外のコスト増要因として、将来的に2024年以降になると思うのですが、スーパーアプリとして普及していく段階に対する新たなサービスの追加でコストが出ると考えたほうがいいですか。

山本:そこまで大きくは出ないと思いますが、スーパーアプリは急にできるものではないので、当然当年度から仕組みは作っていきます。事業開発のメンバーの採用であったり、取り組みでコストは当然かかってくるのですが、大きなものではないと思っています。

質問者1:あと2つ目なのですが、長い目で見て、御社のビジネスの方向性として、チャットだけではなく、スーパーアプリを目指す中で、現状のチャットのデータの解析サービスなど、例えばHRに絡んで、セクハラやパワハラがチャット上で起きていないかというような使い方も多分できると思います。新しい付加価値的な要素のビジネスは、いつ頃から始まるのですか。

山本:コミュニケーションデータは膨大な量を蓄積されていますので、それがAIの時代にともなって大きな価値を持つ可能性は十分にあると思います。ただ、それに対する事業にいつ取り組むかにおいて、いくつか超えなければならない壁があります。1つがプライバシーの問題です。コミュニケーションデータなので、日本だと電気通信事業者法がありまして、我々は電気通信事業者ですので、通信の秘密を守らなければいけません。実際のところ、データは我々が勝手に解析できるものではまずないです。ただ、お客さまの同意、法人の代表者さまに同意いただければ、中身を解析することは可能です。同意いただいたお客さまに対してはサービス提供が可能かなと思います。そちらのプライバシーの問題、昨今だとGDPRの問題や国際的にもプライバシーの懸念が上がってきていますので、情勢を見ながらどこまで踏み込むかを事業の観点、ユーザー価値の観点から考えていかなければいけないのが1点です。

また、HRの解析による価値を見いだされるのは、エンタープライズの大きなユーザーのほうであり、こちらにニーズが大きいのです。従業員数が多いことにより、効率を上げることで大きなコスト削減や売上増ができるため、エンタープライズであれば非常にニーズが高くなると思っています。我々は資料中でもお伝えしたとおり中小企業がメインです。中小企業のお客さまにコミュニケーションデータの解析を提供し、どこまでご活用いただけるのか、どこまでニーズがあるのかが、まだ不透明なところがあります。

そちらよりはどちらかというと、困っている中小企業に、経営インフラをチャットを通して提供するほうが、中小企業を大きなユーザーとして抱えている我々としてはまずはじめにやるべきサービスかと考えています。

もちろん将来的にコミュニケーションデータを事業化することは十分ありうると思いますが、まずは経営インフラサービスの拡充を今のところ考えています。

質問者1:最後、3つ目です。先ほど、値上げの状況を最後のスライドで若干見せていただきましたが、この効果はフルに出ていると考えていいのか、まだまだこれから順を追って出てくるのか、どちらでしょうか?

山本:44ページの価格改定のところに詳細を入れています。まず価格改定で言いますと、2月末に20パーセント増ということで、ビジネスプランとエンタープライズプランに対し、新規顧客のみに対して価格を改定しています。そのため、新しく入ってくるユーザーは、2月末以降新プランということで、20パーセント増の価格になっています。旧プランを4月に廃止し、2月末に改定したプランに自動移行されるものになっていますので、4月の段階で移行が済んでいます。ただ、4月に移行が進んだユーザーは月額契約のお客さまでして、年間契約のお客さまは次の更新のタイミングで新プランに移行します。1年をとおして移行が進んでいくものがまだ残っていますので、ARPUの寄与の残りの分は一定量あります。

質問者1:そうするとARPUは徐々にまだこれから来年の3月までは上がっていく状況ですか?

山本:おっしゃる通り、ARPUは継続的に向上していくと思います。

質問者1:そのときには感覚的に今のARPUでどのぐらいまで上がっていくのですか?

山本:旧プランが自然に移行していたものが大きく早めに計上されたため、若干ペースは落ちると思いますが、一定同様のペースに近いかたちで、この1年はとくに上がっています。そこから少しまた落ちて、メインのボリュームゾーンとなるものが500円のビジネスプランですので、そちらに近づいていくと思います。

質疑応答:ARPUのことおよび採用について

質問者2:中期的なARPUについて伺いたいのですが、2024年度中に売上高100億円ということで、将来的にはスーパーアプリ構想、その他はサービスによる単価アップということで期待できるかと思うのですが、2024年度までは、どちらかというとチャットの面をどんどん取っていくことを優先して、あまりARPUが上がっていくことは想定していないのか、また一方で、来期、再来期あたりからはこのスーパーアプリによる単価アップも多少、期待していいのか、時間軸としてどれくらいの目線でお考えかということについて教えてください。

山本:まず、2024年までは、ほとんどのリソースを現在のビジネスチャットの拡大に費やすべきと考えています。その理由としては、先ほど言ったように、ビジネスチャットは解約が非常に少なく、スイッチングコストが高いので、一度入ってしまうとなかなか乗り換えが起こらないものになっています。翻すと、最初に入ることのできたビジネスチャットは非常に強いのです。

現在、残り70パーセント、80パーセントくらいの白地の面があって、そこに対してできるだけ早くその面を押さえる「ファーストビジネスチャットになる」ことの価値が非常に高いのです。あとからビジネスチャットを普及させようと思っても、もうブロックされており、もう今更ラインはひっくり返せない、という状況になるのです。

そのため、新規事業、スーパーアプリ化を進めたいという気持ちはもちろんあります。その検証、相性の良いビジネスチャット、中小企業、我々のマーケット、ターゲットにおいて、相性が良い事業の検証は行ない、仕込みは進めますが、そちらを収益の柱とすることは考えておらず、どちらかというとプラットフォームの面を大きくすることが、この4年の最も大事なポイントだと思っていまして、いったん面を取って、あとはそれを守るなど、少しずついろいろな価値を追加するプラットフォームのサービスをどんどん追加してARPUを増やしたり、違うマーケットを取ったりということを重要視していこうと思っていますので、この4年間は大きな売上にはならないと思っています。

質問者2:採用面で、今期はこれくらい増やしたいという目線に対して、多く採れる分にはぜんぜん採ってよいとお考えなのか、それとも、今期中にサブクオーター中にでも想定していた人数が採れるのであればそこで止めるのかという採用数のイメージはどのように考えているのですか?

山本:そうですね。採用に関してはスピードが重要と考えていますので、我々の組織キャパシティとして、大量採用したからといって、その人たちが全員戦力化できるわけではないですし、受け入れのキャパシティもありますので、計画としては、とにかく受け入れられるまでは増やしたいと思っていて、採用を加速させている状況です。

採用については非常に順調です。我々の計画どおり採用が進んでいて、とくに新型コロナウイルス禍もあって、新型コロナウイルスの影響にも強いというところが明らかにわかることと、社会課題を解決するということも非常にクリアですので、採用力は非常に強くなっていまして、また、人事の機能の強化も相まって、非常に順調に人が増えていますが、この状況なのでみんな在宅勤務になっており、人数は増えているのですが、まだオフィスに来たことがないというメンバーも多いのです。そちらをしっかり定着させ、戦力化するというところは、みなさまも悩まれていると思うのですが、我々としても課題に感じていまして、チャレンジングなところではありますね。

質問者2:採用する人材についてですが、ビジネスチャット、インサイドセールスに関してどのような経歴の人を採用すればすぐに成果を上げるのかはすごくイメージがしづらいのですが、何か、このような人だとすぐに活躍してくれるというモデルはありますか。

山本:理想を言うと、サブスクリプションサービスをBtoB向けで売っていたことがあるセールスが一番理想なのですが、それほど人材マーケットに流出していないということがあり、営業経験は当然あるのですが、そちらを教育することのほうが多いです。2年から3年の営業経験のある方に入ってもらっています。インサイドセールスの電話営業は2種類に分かれるのですが、クローザーという商談を結紐するチームにアポイントを取っていくチームの「パサー」というチームと、それをパサーからパスされたものをクロージングするという「クロージング」のチームがあって、「クロージング」の方が難易度が高いのですが、まず、入社していただき、営業のスキルはあるが、ITツールを売ったことがないとか、ITツールを扱ったことはあるが、インターネットのビジネスチャットは使ったことがないという人がほとんどなので、まずは「パサー」に配置して、とりあえずアポイントを取る、興味を持って話を聞いていただくというところを学び、スキルを上げて「クローザー」になるということで難易度ごとに配置を替えることにより、教育を進めていっています。

質問者2:あと最後に、広告のところです。今までぜんぜん使ってこなかったということで、人が一定数採れたらある程度使っていこうという意図があるとは思うのですが、そうは言ってもチャットゆえにどういった使い方があるのか、具体的にテレビCMなのか、Webなのか、少しこのあたりに期待が持てるというようなものがあれば、広告のお金の使い方についてお伺いさせてください。

山本:広告で言うと、オンラインの広告が比較的引きが良いです。例えば、検索エンジンに対するキーワード広告だったり、ソーシャルの「Facebook」「Twitter」などで広告を打つツールをどのような打ち出し方やクリエイティブに効果があるのかをマーケティングのチームがぐるぐる試行錯誤を繰り返しながら大きく検証して行なっています。

ただ「Chatwork」で難しいのが、ビジネスチャットは非常に新しいものなので、ビジネスチャットや「Chatwork」をすでに知っていて、探している層というのは非常にアプローチが簡単で、営業に充てるだけで良いのですが、「テレワーク」「働き方改革」「デジタルトランスフォーメーション」などに興味があると言うと、ビジネスチャットとはちょっと距離があります。

そのような方々に対して、興味のある広告の方がボリュームは当然多いので、そちらに広告を当てて、単純に来ても、テレワークとビジネスチャットはなかなか紐付かないこともあるので、その途中となるストーリーを作っていかなければなりません。それをしっかりとコンテンツマーケティングとかいろいろ行ったりするのですが、「途中のテレワークにはこのような要素が必要です」「テレワークがZoomだけじゃダメなのです」「ビジネスチャットを使えばこんなことができます」「こんな事例があります」というものをたくさん用意したり、オンラインのセミナーだったりをたくさん用意して、「ビジネスチャットがテレワークに良いんだ」「働き方改革に良いんだ」というところから、つなげていかなければならなくて、テレビCMでバーンと売れば良いわけではなく、途中がないと全く駄目なのです。しかし、ちょっと時間がかかるということがあり、今、その仕込みを行なっていて、そこには一定コストがかかりますね。

質問者2:仕込みが終わって来期から積極的に広告を打つとして、売上に貢献してくる、売上の水準感の伸びが上がるなというのは、半年くらいで期待して良いのかどうか教えてください。

山本:我々が行なっているのはサブスクリプションのサービスなので、積み上げのものが売上のほとんどなのです。そのため、単年度の獲得がグッと増えたとしてもトップラインにそこまで目に見えるインパクトがグッと出るかというと、そこまではなく、ライフタイムバリューとして、3年、4年、5年のあたりで案分して計上されていくので、将来的な利益の見込み、潜在利益が大きくなっていくということがあるので、それを割らないかたちで広告宣伝費を使うという考え方で実施していきます。単年度のP/Lで見ていただくよりは、将来的なライフタイムバリューである潜在利益を見ていただければと思います。

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