フォトレジストなど半導体材料を手がける東京応化工業が発表した2020年度上期(1~6月)業績は、売上高が前年同期比17%増の572億円、営業利益が同51%増の67億円となり、大幅な増収増益となった。主力のフォトレジストのうち、KrFの伸びが大きかった。

DRAMやCMOSセンサーでも需要拡大

 主力の材料事業の売上高は同17%増の560億円。期初時点では496億円を想定していたが、これを大きく上回った。材料事業のうち、フォトレジストなどで構成されるエレクトロニクス機能材料は同15%増。光源別では、KrFが同25%増と大きな伸びを示し、業績拡大を牽引した。

 同社のKrFレジストは近年、3D-NANDで用いられる厚膜タイプの伸長が目立っていた。上期は国内顧客の96層世代へのシフトもあり好調に推移したが、今回はこれに加えて、薄膜タイプも拡大した。具体的には、DRAMのインプラ工程やCMOSイメージセンサー用途で需要が拡大した。

 また、EUVレジストについても、主要顧客の5nmプロセスの量産開始に伴い好調に推移。米中対立の影響からエンドユーザー側での在庫積み上げ方針も働き、顧客ラインはフル稼働の状態にあったとしており、上期は当初想定どおり前年同期比で約2倍の伸びとなった。

通期業績は過去最高見通し

 上期実績の好調を受け、同社は通期業績の修正予想を7月末に発表済み。売上高は1117億円(前年度比9%増)、営業利益は138億円(同45%増)を計画しており、期初計画から売上高で約50億円、営業利益で約25億円の上方修正となった。売上・利益ともに過去最高を記録する見通し。

 上期に一部で在庫積み増しとみられる需要増も含まれていることから、下期はエレクトロニクス機能材料、高純度化学薬品ともに上期比で減収となる見通しだが、先端プロセス向けレジストを中心に堅調に推移すると予想する。

 エレクトロニクス機能材料の種類別見通しは、ArFが前年度比5%増、KrFが同15%増、LCDが同20%減、高密度実装材料が同10%増を見込む。高密度実装材料のうち、パッケージ用レジストは同15%増のプラス成長を見込む一方、MEMS材料は米系顧客が中心であることから、米中対立などの影響を受けて、同5%減のマイナス成長を見込む。

2030年に売上高2000億円目指す

 また、同社では2030年に向けた長期ビジョンを新たに策定。定量目標として30年に売上高2000億円、EBITDA(償却前営業利益)450億円、ROE(自己資本利益率)10%以上を目標に掲げる。

 電子材料分野では前工程・後工程ともに進化が続くとみて、主要材料だけでなく周辺材料の掘り起こしにも力を入れる。具体的に3nm世代以降、はメタル配線材料やゲート絶縁膜の変更などが見込まれていることから、キーとなる洗浄プロセスに注目。洗浄液分野の事業拡大を積極的に進めていく。また、2040年の事業ポートフォリオを見据えた新規事業の創出にも力を入れる。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳