ソニー㈱は、2020年度(21年3月期)のイメージング&センシング・ソリューション事業(I&SS=半導体事業)の通期業績として、売上高が前年度比7%減の1兆円、営業利益は同45%減の1300億円になるとの見通しを明らかにした。新型コロナウイルスでスマートフォンやデジカメの需要が減速している影響を受ける。
スマホ用やデジカメ用の需要が減少
売上高1兆円のうち、イメージセンサーは同6%減の8700億円を見込む。主力のモバイル機器用の売上高は19年度実績を下回る見通し。大手顧客の最終製品の販売減、スマホ市場の減速と中位・廉価機種へのシフト、中国顧客の部品・製品在庫の大幅な調整などが影響する。
モバイルセンシング用は、スマホ各社の採用が遅れ、採用済みのフラグシップ機種の販売も減少しているため、19年度から成長できない見込み。「減益要因の3分の1近くがモバイルセンシング」と説明し、ToF(Time of Flight)センサーなどの需要が想定を下回ることを示唆した。
また、AV用でもデジカメ向けが「3年分の市場縮小が1年で起こる」と想定しており、大幅な減収になる見込み。このほか、19年度に増額した研究開発費、成長を見越して実施した増産投資などの償却負担も減益要因になる。
設備投資を約500億円減額
18~20年度の3年間累計で約7000億円を予定していた設備投資は、約6500億円に減額する。現有の余剰生産能力を活用した戦略在庫の積み上げなどで投資を大幅に抑制し、21年度以降の投資計画もタイミングを慎重に見直す。これに伴い、20年度の設備投資額は2600億円、うちイメージセンサー向けに2400億円を充てる。
ちなみに、これまでの設備投資実績は、18年度が1463億円(うちイメージセンサー向け1289億円)、19年度が2768億円(同2657億円)。
同社は20年度内に300mm換算で13.8万枚の生産能力を確保する計画を表明しているが、20年度下期については「(現有の13.3万枚から)若干キャパは増える」と述べ、当初計画に近い水準まで生産能力を確保する考えを示した。
市況回復は21年下期を想定
イメージセンサーの需要回復期として21年下期を想定している。そこまでにはハイエンドスマホのスローダウンが一服し、中国顧客の在庫過多も解消するとみており、以後は事業を再び成長軌道に乗せるべく、AI搭載のエッジセンシングなどへ用途を広げる。
AI搭載製品の1つとして、世界で初めてAI処理機能を搭載したインテリジェントビジョンセンサー 2タイプを商品化し、4月からサンプル出荷を開始している。有効約1230万個の裏面照射型画素を配置した画素チップとロジックチップを重ね合わせた積層構造を用い、画素チップで取得した信号をセンサー内でAI処理して必要なデータだけを抽出し、クラウドサービス利用時のデータ転送遅延時間の低減、プライバシーへの配慮、消費電力や通信コストの削減などを実現する。
4~6月期は11%減収
このほど発表した20年4~6月期のI&SSの業績は、売上高が前年同期比11%減の2062億円、営業利益が同49%減の254億円だった。イメージセンサーの売上高は同8%減の1799億円。モバイル機器用の製品ミックス悪化や、デジカメ用の数量減が影響したほか、アナログLSIやディスプレーデバイスも大幅に減少した。
20年4~6月期末の月産能力は13.3万枚で、20年7~9月期末には13.5万枚まで増強する予定。ウエハー投入量は20年4~6月期が12.6万枚(稼働率95%)だったが、20年7~9月期は11.2万枚(同83%)まで落とし、モバイル用とデジカメ用で生産調整を強める。
20年4~6月期末で2900億円強の在庫を抱えているが、下期は工場稼働率を90%弱とし、年度末までにもう少し在庫を積み上げる予定だという。
電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏