同社のQ1は営業利益も44億円と、前期の10億円に対し4倍以上の伸びを見せました。株価上昇は、中国においてライセンス提供で展開している「三国志」が大ヒットするなど、堅調な本業があってこそです。

ただ、目を見張るような株価上昇が続く中で、Q1に本業を上回る利益を計上した運用益にも注目せざるを得ません。

任天堂よりも運用スタンスは積極的

ゲーム業界はヒット作が出ると一気に儲かる一方で、ヒット作に恵まれないとほとんど利益が出ないという水物商売の一面があります。

コーエーテクモHDはこれまで三国志や信長の野望、無双シリーズのヒットで利益を積み上げた会社です。そして、積み上げた資産の運用で利益を上げるという姿は、国内ゲーム業界の雄である任天堂に通じるものがあります。

任天堂も2020年3月期に2000億円以上の投資有価証券を保有。任天堂とコーエーテクモHDでは運用スタイルが異なるものの(任天堂は債券中心、コーエーテクモHDは株式中心)、両社ともゲーム開発のかたわら資産運用を行う経営が行われています。

それにしても、シミュレーションゲーム開発を得意とするコーエーテクモHDが年間数十億円単位の運用益をコンスタントに上げる様子は、まるでシミュレーションゲームの達人のようだ、というのが「三国志」マニアでもある筆者の率直な感想です。

おわりに

運用事業の利益が堅調な本業の利益を上回った2021年3月期Q1のコーエーテクモHD。同社はゲーム事業と運用事業という両者をシミュレーションゲームのようにうまくマネジメントして収益を拡大し、上昇トレンドの株価を維持できるのでしょうか。今後の業績及び株価の行方が注目されます。

【参考資料】
コーエーテクモHD 決算短信
任天堂 2020年3月期決算短信

石井 僚一