この記事では、某商社ニューヨークオフィスに勤務するビジネス書大好き人間が、日々通う書店のビジネス書コーナーで感じたことをお話ししていきます。
一時、ニューヨークでは、新型コロナウイルスの猛威を受けて街は鳴りを潜めていましたが、ついに死者ゼロ人の日も増えてきました。1日あたり7万件を超える大規模な検査に加えて、濃厚接触者を追跡する「トレーシング」の効果が表れているのでしょうか。まだまだ油断はできないですが、いつかニューヨークがかつての賑わいを取り戻すことを願っています。
それでは、今月もランキングを見ていきましょう。
バーンズ&ノーブル(BARNES & NOBLE)の7月のビジネス書売れ筋ランキング
※ 順位/タイトル/邦題(翻訳書がないものは編集部で独自に訳した仮題)/著者
1.Too Much and Never Enough: How My Family Created the World's Most Dangerous Man/(仮題)過剰なのに満たされない:わが一族はいかにして世界で最も危険な男を生み出したのか/著:メアリー・L・トランプ
2.Begin Again: James Baldwin's America and Its Urgent Lessons for Our Own/(仮題)もう一度始めよう:ジェイムズ・ボールドウィンによるアメリカと私たちのための緊急レッスン/著:エディ・S・グロードJr.
3.The 48 Laws of Power/(邦題)権力に翻弄されないための48の法則 上・下(パンローリング)/著:ロバート・グリーン
4.Think and Grow Rich/(邦題)思考は現実化する(きこ書房)/著:ナポレオン・ヒル
5.How to Win Friends and Influence People/(邦題)人を動かす(創元社)/著:デール・カーネギー
6.Rich Dad Poor Dad: What the Rich Teach Their Kids About Money That the Poor and Middle Class Do Not!/(邦題)金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学(筑摩書房)/著:ロバート・キヨサキ
7.Atomic Habits: An Easy & Proven Way to Build Good Habits & Break Bad Ones/(邦題)ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣(パンローリング)/著:ジェームズ・クリアー
8.The Intelligent Investor Rev.Ed./(邦題)新賢明なる投資家 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法(パンローリング)/著:ベンジャミン・グレアム
9.Women, Race,and Class/(仮題)女性、人種、階級/著:アンジェラ・Y・デイビス
10.Shoe Dog: A Memoir by the Creator of Nike/(邦題)SHOE DOG(東洋経済新報社)/著:(邦題)SHOE DOG(東洋経済新報社)
今はなき公民権活動家の言動から黒人差別の問題を考える
まずは、2位にランクインした『Begin Again』です。この本は、アメリカで再び大きな盛り上がりを見せている黒人差別に関する問題を、20世紀なかばの公民権活動家であるジェイムズ・ボールドウィン(1924~1987年)の言動を通じて考えさせるのが主眼です。
市民運動だけではなく、小説家・劇作家・詩人など、文筆の世界でも活躍した彼の深い言葉や活動は、彼が生きたアメリカの「過去」だけでなく、その死後30年以上を経た「現在」のアメリカをも雄弁に語っています。本書はそのことがわかる一冊だと言えます。
「お金の定番入門書」と「人権と資本主義に関する鋭い洞察の書」
そして、6位にランクインしたのは、『Rich Dad Poor Dad』。先月の8位から2ランク上昇しています。こちらは、日本でも『金持ち父さん貧乏父さん』の邦題で知られる「お金持ちになるにはどうするか?」を指南するベストセラー。初版が刊行されたのは20年ほど前ですが、「お金」そのものの捉え方から金融リテラシーの教育に至るまで、今の社会でも十二分に活用できる考え方が記されています。お金に関する入門書の定番といっても差し支えないでしょう。
最後に紹介するのは、9位の『Women, Race, and Class』です。こちらは黒人女性活動家であり哲学者のアンジェラ・Y・デイビスによる一冊。1960年代から、本が出版された1983年までのアメリカの女性解放運動に関する13のエッセイに加えて、米国における奴隷制に関するエッセイが収録されています。黒人や階級といった問題は、いまのアメリカが抱える大きな問題の一つです。この本を読めば、人権から資本主義についてまで、彼女の深い洞察に触れることができるはずです。
まとめにかえて
今月は、いまのアメリカが抱える問題に深く切り込む本が多くランクインしました。過去に学び、現代に立ち向かっていくアメリカの人々の様子が見て取れます。
それでは、次回のランキングもお楽しみに!
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