ただし、VACには利用できる金額と有効期限の縛りがあるので、通常のクレジットカードのようにカード会社が自動的に有効期限を継続してくれることはありません。VACの有効期限は半年程度ですから、すぐ使わないと無効になってしまいます。早期に消費を促すインセンティブとしては、優れた手法かもしれません。

キャッシュレスからカードレスへ

VACでは決済が即時に行われ、所有者の信用力によって決済金額の上限が上がったり、決済期間に猶予が与えられたりするわけではありません。しかしながら、VACは銀行口座やリアルなクレジットカードを持たなくても、資金授受ができることを示しています。

ユーザーの立場から言えば、同じ発行会社の異なるVACが統合できないこと、全額を使い切るのは難しいこと(小銭がどうしても余る)、外貨(米ドル)決済した場合は為替手数料率が高いこと等、非効率な点があるのは事実です。それでもなお、リアルなプリペイドカードや商品券よりVACの利便性に軍配が上がります。

VACとは異なりますが、日本でもバーチャルプリペイドカードが使われています。こちらは完全オンライン化したバーチャルというよりも、リアルなカードを前払いで買う形式ですが、いずれVACが広まっていくかもしれません。

そうなると、プラスチックのクレジットカードもVACのように全てオンライン化され、保有者はクレジットカード番号をいずれかのデバイスに記録しておけば、どこでも使えるようになるでしょう。実際、アップルペイやペイペイの決済機能はクレジットカードが担っていますが、いったん登録しておけば次回の有効期限までカード自体を見ないこともあり得ます。

筆者の生活圏では、ほぼキャッシュレスで事足りるようになっています。それでも、全てのお店でオンライン決済ができるわけではありません。カード決済の場合カードを決済端末に挿入するというひと手間がかかるお店もまだ多数あります。

しかし、気がつけばキャッシュレス化、さらにはカードレス化が拡がって、好むと好まざるとにかかわらず現金取引はどんどん縮小していくでしょう。30年以上前に就職した銀行での新人時代に、日銀からの札束を特大ジュラルミンケースで運んでいた頃が懐かしい今日このごろです。

太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)