2020年5月15日に行なわれた、住友化学株式会社2020年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:住友化学株式会社 常務執行役員 佐々木啓吾 氏

19年度連結業績概要(対前年度)

佐々木啓吾氏:住友化学の佐々木でございます。本日はお忙しいところ、当社のカンファレンスコールにご参加いただきありがとうございます。

投資家のみなさま、アナリストのみなさまには、日頃から当社の経営にご理解、ご支援を賜り、誠にありがとうございます。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

それでは、ただいまから2019年度決算の概況についてご説明します。スライドの4ページをご覧ください。

2019年度の連結業績は、売上収益は2兆2,258億円となり、前期比928億円の減収となりました。経常的な収益力を表すコア営業利益は1,327億円となり、前期比716億円の減益となりました。

コア営業利益に含まれない非経常項目については、利益方向に、条件付対価に係る公正価値変動として485億円などを計上しました。一方で、損失方向に、減損損失373億円や事業構造改善費用78億円などを計上しましたので、ネットで49億円の利益となりました。前期との比較では261億円改善しました。

条件付対価に係る公正価値変動および減損損失については、大部分が医薬品において発生したものです。条件付対価に係る公正価値変動は、癌領域などにおける事業計画の見直しを実施したことにより、負債項目である条件付対価の価値が減少したため、費用のマイナスを計上しました。

一方で、事業計画の見直しに伴い、無形資産である仕掛研究開発や特許権などの減損損失を計上しました。この結果、営業利益は1,375億円となり、前期比455億円の減益となりました。

金融損益については70億円の損失となり、前期比で124億円悪化しました。このうち、当期は円高が進行したことから、為替差損益で56億円の損失を計上し、前期比で111億円悪化しました。

法人所得税費用は761億円となり、税負担は前期に比べ402億円増加しました。主な増加要因は、先ほどお伝えした医薬品における事業計画の見直しに伴い、米国において認識していた繰延税金資産の取崩しを行なったことです。

この結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は309億円となり、前期比871億円の減益となりました。コア営業利益の減益716億円よりも大きくなっていますが、これは主に繰延税金資産の取崩しなど、一時的かつ資金支出のない損失の影響によるものです。

当社業績に影響を与える為替レートと原料ナフサ価格については、USドルの期中平均レートは1ドル108.7円、またナフサ価格はキロリットルあたり4万3,000円となり、前期に比べ、円高、原料安となりました。

なお、表には記載がありませんが、2月に公表した業績予想では、売上収益は2兆2,500億円、コア営業利益は1,250億円、営業利益は1,300億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は300億円としていました。

その予想比では、売上収益は減収、各利益段階では増益となっています。また、新型コロナウイルスの影響として40億円から50億円のマイナスを織り込んでいましたが、実績ではほぼ同レベルの40億円程度の影響があったと分析しています。

セグメント別売上収益

続きまして、セグメント別の業績概要をご説明します。5ページをご覧ください。全社の売上収益は、前期比928億円の減収となりました。セグメント別には、情報電子化学、健康・農業関連事業、医薬品で増収となった一方で、石油化学、エネルギー・機能材料で減収となりました。

売上収益の前期比での増減について、全社で要因別に分析すると、売価差が1,465億円の減収、数量差が942億円の増収、対外子会社の売上収益の邦貨換算差は405億円の減収となりました。

セグメント別コア営業利益

続いて、6ページをご覧ください。全社のコア営業利益は、前期比716億円の減益となり、すべてのセグメントで減益となりました。全社で要因別に分析すると、価格面で550億円のマイナス、コスト面で290億円のマイナスとなる一方で、持分法投資利益の増減も含む数量差等は124億円のプラスとなりました。

石油化学セグメント(対前年度実績)

続きまして、各セグメントごとの業績概要をご説明します。7ページをご覧ください。石油化学セグメントについては、売上収益は6,569億円で、前期比1,006億円の減収です。コア営業利益は145億円で、前期比471億円の減益となりました。

売上収益は、ナフサなどの原料安に伴い、石油化学品や合成樹脂などの製品市況が下落し、またMMAやカプロラクタムの市況も低い水準で推移したため、減収となりました。

コア営業利益は、MMAやカプロラクタムなどの交易条件の悪化に加え、ペトロ・ラービグやシンガポールのPCSなどの持分法損益も悪化したため、減益となりました。

エネルギー・機能材料セグメント(対前年度実績)

次のページをご覧ください。エネルギー・機能材料セグメントについては、売上収益は2,550億円で、前期比278億円の減収です。コア営業利益は203億円で、前期比26億円の減益となりました。

売上収益は、アルミニウムの市況や正極材料の販売価格が下落したことに加え、正極材料やリチウムイオン二次電池用セパレータなどの出荷が減少したため、減収となりました。コア営業利益は、主に出荷の減少の影響により減益となりました。

情報電子化学セグメント(対前年度実績)

次のページをご覧ください。情報電子化学セグメントについては、売上収益は4,049億円で、前期比80億円の増収です。コア営業利益は251億円で、前期比11億円の減益となりました。

売上収益は、売価面では偏光フィルムやタッチセンサーパネルの販売価格が下落しましたが、数量面では需要の伸長により出荷が増加したため、増収となりました。コア営業利益は、出荷数量の増加を販売価格の下落によるマイナスの影響が上回ったため、減益となりました。

健康・農業関連事業セグメント (対前年度実績)

次のページをご覧ください。健康・農業関連事業セグメントについては、売上収益は3,437億円で、前期比56億円の増収です。コア営業利益は21億円で、前期比176億円の減益となりました。

売上収益は、北米における天候不順の影響により、農薬の出荷が減少しました。メチオニンは市況は下落しましたが、2018年度に実施した生産能力の増強により出荷が増加しました。これらの結果、前年比で増収となりました。

一方、コア営業利益は農薬の出荷の減少に加え、メチオニンの交易条件の悪化や生産能力の増強に伴うコスト増加の影響により、減益となりました。

医薬品セグメント(対前年度実績)

次のページをご覧ください。医薬品セグメントについては、売上収益は5,158億円で、前期比237億円の増収です。コア営業利益は753億円で、前期比55億円の減益となりました。

売上収益は、北米ではラツーダの出荷が増加しました。また国内では、2型糖尿病の治療薬であるエクアおよびエクメットの販売を開始したことなどから増収となりました。

コア営業利益は、売上収益が増加したもののロイバントとの戦略的提携に伴い、新たに取得したスミトバントおよび傘下の子会社において発生した固定費の増加の影響により、減益となりました。セグメント別の業績概要の説明は以上となります。

連結財政状態計算書

続きまして、連結財政状態計算書の内容をご説明します。13ページをご覧ください。2020年3月末の総資産は、3兆6,503億円となり、前期末と比べて4,787億円増加しました。

これは、主に当社の連結子会社である大日本住友製薬においてロイバントとの戦略的提携を実施したことや、当社におけるニューファームの南米事業の買収に伴い、非流動資産の「のれん及び無形資産」や「その他」の項目が増加したことによるものです。

また、IFRS16号「リース」の適用により、有形固定資産が増加しています。有利子負債は1兆3,047億円となり、前期末と比べて4,651億円増加しました。これは先ほどお伝えした、大日本住友製薬による戦略的提携の対価の支払いに対応したブリッジローンでの資金調達に加え、当社における公募ハイブリッド社債の発行によるものです。

資本は、1兆3,888億円となり、前期末に比べ370億円増加しました。この結果、親会社所有者帰属持分比率、いわゆる自己資本比率は25.3パーセントとなり、前期末に比べ6.2ポイント悪化しました。

連結キャッシュ・フロー

続いて、連結キャッシュ・フローについてご説明します。14ページをご覧ください。営業キャッシュ・フローは1,060億円の収入となり、前期に比べ1,021億円減少しました。営業利益の減少が主な要因です。

投資キャッシュ・フローは、4,997億円の支出となり、前期に比べ3,188億円増加しました。大日本住友製薬において、ロイバントとの戦略的提携に伴い、対価の支払いを行なったことが主な要因です。その結果、フリー・キャッシュ・フローは3,937億円の支出となり、前期の273億円の収入と比べると、支出が4,210億円増加しています。

財務キャッシュ・フローは、3,735億円の収入となり、前期に比べ4,344億円増加しました。

20年度業績予想、配当予想について(1)

2020年度の予想についてご説明します。16ページをご覧ください。 2020年度の業績予想と配当予想については、今回は未定とします。新型コロナウイルス感染症の爆発的な拡大により、国内外の経済環境は大きく悪化しており、当社グループを取り巻く事業環境にも悪影響を及ぼしています。

とくに、自動車関連やディスプレイ関連などの事業分野では今後も厳しい状況が続くことが見込まれ、その影響は新型コロナウイルス感染症の終息まで続くと考えられます。

20年度業績予想、配当予想について(2)

17ページをご覧ください。このような状況下において、今後の為替相場およびナフサ価格の想定を含め、現時点では業績見通しの合理的な算定は困難であるため、先ほどお伝えしたとおり2020年度の業績予想と配当予想については未定としました。

今後、新型コロナウイルス感染症の影響を含む業績動向を見極めた上で、業績予想の算定が可能となった時点で速やかに公表します。

流動性の確保について

18ページをご覧ください。当社グループにおける流動性の確保については、当社は金融機関との間に当座借越契約を締結しているほか、総額1,010億円のコミットメント・ライン契約を締結しています。

また、国内および海外のグループ会社に関しては、グループファイナンスの実施によって相互の資金融通を可能としています。今後も事業運営に必要な手元流動性を確保しながら、財務の安定性を図っていきます。

2019年度の業績の概要につきましては以上です。

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