「企業規模」「転職の有無」により生じる生涯年収の違い

まず[1][2][3]の民間企業を比較してみると、転職を経験しても同じ企業規模であれば比較的、同程度の収入を維持できるといえるでしょう。

ところが「転職なし」の場合でも企業規模の違いにより、生涯年収に1億円ほどの違いが生じています。そして、非正社員であっても1,000人以上の大規模企業であれば、他の規模の正社員と同等の生涯年収が見込めるようです。このことから「企業規模」が収入を大きく左右することが分かります。

ただし、性別の面では、どのケースでも差があります。[4][5]の公務員においては、会社員ほど差は大きくありませんので、中卒・高卒・短大卒や女性にとっては生涯年収の面で恵まれているといえそうです。

転職による退職金・生涯年収の減少率

では、転職により退職金・生涯年収にはどのくらいの影響があるのでしょうか。退職金については、同『ユースフル労働統計2019』によると、転職した時の年齢の上昇とともに減少率は拡大し、40~45歳時で最大に。その後、差が少なくなるという傾向がありました。(転職時の退職金と定年退職時の退職金を合計しています。また転職者がその年齢層における平均的な中途採用者と同じ条件(収入)で就職することを前提としています)

また生涯年収についても、転職時の年齢が25歳であれば減少率は5%に満たないのですが、年齢が上がるにつれて減少率も大きくなります。40~45歳時での転職による減少率が最大で、それ以降の年齢では、減少率も低下していくことが分かりました。

この40~45歳前後での転職は、勤続年数がほぼ二分される時期に当たります。転職前後、どちらの企業でも勤続年数がそれほど長くならないために減少率が大きくなるものと考えられます。