この記事の読みどころ
- 2009年3月以来、政策金利を変更していなかった英イングランド銀行(中央銀行、以下BOE)が利下げに踏み切るかに注目が集まっています。
- カーニーBOE総裁は、「個人的見解」と断ったうえで、6月30日に英国のEU離脱選択の影響から、数か月以内に金融緩和するとの見解を示しています。
- 市場は英政策金利が0.25%引き下げられると予想しています。
2009年3月以来、政策金利を変更していなかったBOEが利下げに踏み切るか
今週は、7月14日(木)20:00に、BOEの政策金利および資産買取プログラムの規模が発表されます。2009年3月以来、政策金利を変更していなかったBOEが利下げに踏み切るとマーケット関係者は予想しており、その動向に注目が集まりそうです。
カーニー総裁は数か月以内に金融緩和するとの見解を示す
6月30日(木)にBOEのカーニー総裁は、英国のEU離脱選択の影響に対処するため数か月以内に金融政策を緩和する必要があるとの見解を示しました。
具体的には、銀行への流動性供給オペを月1回から毎週1回に変更し、その他多数の措置を検討すると述べました。ただし、これらの景気刺激策は個人的見解であり、金融政策委員会(MPC)の共通認識ではないとも断りを入れました。
一方、離脱派の一部議員からは同総裁に対して、「カーニー総裁はゴールドマン・サックス出身。ゴールドマンは残留派に資金援助している」等の厳しい意見が寄せられており、今後の動向に一段と注目が集まりそうです。
英政策金利の市場予想は0.25%と引き下げへ
今回の英政策金利の市場予想は0.25%と、2009年3月以来続けていた過去最低の0.50%から0.25%の引き下げ予想となっています。
一部マーケット関係者が予想する通り、政策金利をゼロに引き下げる等、市場予想を上回る内容となった場合、欧州各国の株価指数を始め、マーケット全体を下支えするでしょう。
【参考情報】英イングランド銀行(BOE)と政策金利の基礎知識
そもそも英イングランド銀行(BOE)および政策金利とは
英国の政策金利は、毎月上旬の水・木に開催される英金融政策委員会(MPC)によって決定され、イングランド銀行(BOE)によって公表されます。政策金利の説明は、筆者が過去に執筆したレポートをご参照ください。
英金融政策委員会(MPC)、イングランド銀行(BOE)とは
MPCの構成メンバーは、BOE総裁と2名の副総裁、6名の委員の計9名で構成されます。
イングランド銀行は1694年に民間銀行として創立され、1844年に中央銀行としての役割を担い、1946年に国有化されました。
外国籍であったカーニー氏がBOE総裁に就任した背景とは
BOE総裁は、首相と財務相の推薦を受け、英国女王(国王)が任命するのが通例でした。しかし、リーマンショック以降BOEには大幅な権限拡大が与えられたため、2012年、財務省とBOEは総裁の公募に踏み切りました。
これにより、ゴールドマン・サックス出身で、当時カナダ中央銀行総裁だったカーニー氏が、外国籍であったにも関わらず47才でBOE総裁に就任しました(現在、英国籍)。リーマンショック後の混乱するカナダ経済の立て直しに、素早く対処した手腕を見込まれたと言われています。
※元データの確認は、英イングランド銀行のウェブサイトをご参照ください。