減価償却というのは、機械を買った時に費用を計上するのではなく、機械を使った時に費用を計上しよう、ということです。

100万円の機械で100万個の製品が作れるとすると、製品を1個作った時に「機械が磨り減った分を費用に計上する」というわけです。代金を支払った時ではなく、機械を使った時に費用を計上するので、現金の増減と利益の増減が一致しなくなるのです。

製品を作るための材料費と人件費に、機械が磨り減った分の1円を上乗せして売るとしましょう。売上が現金で回収され、材料費と人件費を現金で支払うとすると、差し引き1円の現金が金庫に残ります。

利益は上乗せしていないので、利益はゼロなのに、金庫の現金は増えるのです。ここでも利益の増減と現金の増減がずれるわけですね。

結果として、機械を買った時に現金が出て行き、使った時に現金が戻ってくるわけですが、利益は一貫してゼロだ、ということになるわけです。

以上は一般論として利益がゼロの会社についての説明でしたが、本文の会社の場合、小幅な赤字ですから、売上が材料費プラス人件費プラス1円よりはわずかに小さいわけです。しかし、それを考えても金庫の現金は増加するので、それを返済に充てさせれば銀行としては結構な金額が回収できる、というわけですね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義