ようやく沈静化の兆しが見えるコロナウィルス。今回の騒動が教えてくれたのは、我々は様々な病気やケガに遭うリスクと毎日隣合わせで生活しているということだ。

自分が病気やケガをしたら生活はどうなるのか、気になるところである。万が一に備えて、みんなが利用できる医療保険制度について、あらためて整理をしておこう。

入院したらお金はいくら必要か

入院時時に、どの程度のお金がかかるのか、皆さんは把握されているだろうか。生命保険文化センターが直近の入院時の自己負担費用「1日あたりの自己負担費用」をまとめた資料がある。

それによれば以下の通りである。

直近の入院時の自己負担費用「1日あたりの自己負担費用」  

  • 5,000円未満・・・10.6%
  • 5,000~7,000円未満・・・7.6%
  • 7,000~10,000円未満・・・11.1%
  • 10,000~15,000円未満・・・24.2%
  • 15,000~20,000円未満・・・9.0%
  • 20,000~30,000円未満・・・12.8%
  • 30,000~40,000円未満・・・8.7%
  • 40,000円以上・・・16.0%
  • 平均・・・23,300円

注1:過去5年間に入院し、自己負担を支払った人をベースに集計
注2:高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額
注3:治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品費などを含む。
出所:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」令和元年度

1日あたりの自己負担額の平均は23,000円となっている。意外と金額が高いと思われた人もいるかもしれない。この23,000円には、保険が適用された費用と保険適用外つまり自己負担の費用、両方が含まれている。

健康保険でカバーされる費用は何か

では、実際に健康保険でカバーされるのはどこまでか。下記を確認しよう。

3割自己負担

  • 診療費
  • 手術費
  • 医薬品代

全額自己負担

  • 入院時の食事代の標準負担額
  • 差額ベッド代
  • 諸費用(日用品等の購入、交通費、お見舞いのお礼など)

病気やケガで入院する際に必要なお金は、診療費や手術費、医薬品代等に限定してイメージしがちである。

しかし、実際には差額ベッド代や交通費、入院に必要な日用品の購入などの費用も必要となり、意外とお金がかかる。

また、自己負担の項目は一回あたりの費用は少額だが、長期間支払いが続くと、支払う金額は大きくなる場合がある。思わぬところで費用がかかる可能性があるので注意をしておこう。

「高額療養費制度」とは

治療や入院費用が高額になると、健康保険の制度により一定額以上は給付を受けることができる。これを高額療養費制度と言い、医療費の高騰を防ぐサポート制度である。自己負担限度額は年齢や所得により異なるので、下表(69歳以下の場合)を参考にしてほしい。

適用区分が年収約1,160万~の場合

健保(標準報酬月額83万円以上)、国保(旧ただし書き所得901万円超)
25万2600円+(医療費-84万2,000円)×1%

適用区分が年収約770~約1,160万円の場合

健保(標準報酬月額53万~79万円)、国保(旧ただし書き所得600万~901万円)
16万7,400円+(医療費-55万8,000円)×1%

適用区分が年収約370~約770万円の場合

健保(標準報酬月額28万~50万円)、国保(旧ただし書き所得210万~600万円)
8万100円+(医療費-26万7,000円)×1%

適用区分が年収約370万円以下の場合

健保(標準報酬月額26万円以下)、国保(旧ただし書き所得210万円以下)
一律5万7,600円

住民税非課税者の場合

一律3万5,400円

この制度により、保険適用内の費用に関して、自己負担額はかなり抑えられる。また、加入している保険組合により、付加給付が受けられる場合もある。

医療費に関する様々な給付は、加入済みの民間医療保険の見直しにもつながる。いざという時にお金のことで慌てなく済むので、事前にチェックしておくのが懸命だ。

「傷病手当金制度」とは

傷病手当金制度とは、健康保険の被保険者が病気やケガで働くことができず、報酬が受け取れないときに手当が支給される制度である。生活費の一部補填という意味合いが強いのが特徴だ。ちなみに、この制度は国民健康保険にはないので注意したい。

受給条件は下記のとおりである。

  • 業務外の事由による病気やケガで療養中であること
  • 労務(今まで従事してきた仕事)に服することができないこと
  • 連続する3日間(待機期間)を含め、4日以上休んでいること
  • 給与の支払いがないこと

この条件が満たされれば、原則として、(支給開始日以前の12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3)×休業日数(欠勤日数)の額が支給される。なお、支給期間は4日目から最長で1年6か月となる。

傷病手当金制度の注意点

有給休暇の付与日数が少ない新入社員や転職したばかりの人が入院した場合、早々に傷病手当金を活用することになる。傷病手当金は、有給休暇で得られる給与と異なり、1日あたりに受け取れる金額が通常の約2/3までが減る。手取りが減るため、ボーナス払い等を利用している世帯は支払いスケジュールに注意したい。

また、退院した後、すぐに治療が終了となるケースは少なく、多くの場合、治療や通院が継続的に必要となるので、民間の医療保険に加入するなど、備えをしておく方が安心だ。

要注意!先進医療は保険適用外

最近、メディア等で採りあげられる先進医療だが、先進医療は健康保険の対象外となっている。先進医療の大まかな定義は下記に記載したので、確認しておこう。

  • 厚労労働省が定めた高度な医療技術を用いた治療法                           
  • 公的医療保険の対象にするかを評価する段階にある治療・手術などが該当                 
  • 先進医療の技術料は公的医療保険の対象外で全額自己負担※その他の診察料、検査料、投薬料等は保険適用  
  • 厚労省に届け出た医療機関以外で先進医療と同様の治療・手術などを受けても認められない。
  • 先進医療と認められない場合は公的医療保険の対象外となり診察料含め全額自己負担となる。

先進医療を受ける場合、費用は全額自己負担となるため、民間の医療保険にてカバーすることをお勧めする。月額、数百円程度の負担で上限1,000~2,000万円まで保障される。

なお、同一の保険会社で複数の保険契約がある場合、一つの保険会社で先進医療特約の重複契約はできないため、どの契約に付加するかも気を付けたい。

まとめにかえて

まずは自分が加入している健康保険の種類を確認しよう。日本の健康保険は充実しているので、手厚いサポートが受けられる可能性がある。受けている治療が保険適用内か適用外かも合わせて確認しよう。

保険適用外の費用については、預貯金から工面するか、民間保険に加入するか、考えておくと良い。就職や転職したばかりの時に入院すると、家計が苦しくなることもありうる。後で後悔しないよう、平時にしっかり準備しておきたい。

参考資料