また、米国は、中国が造成した人工島の12海里内にイージス駆逐艦を派遣する「航行の自由作戦」を今年に入って既に4回実施しているが、昨年は通年で8回だったことから、米国の懸念の度合いは明らかに高まっている。
中国は、台湾と領有権を争う東沙諸島を支配下に置くことを想定した大規模な上陸訓練を8月に予定しているという。台湾の沿岸警備部も、東沙諸島の駐屯地で6月に定例の実弾射撃訓練を実施すると発表しており、中台間の緊張も懸念される。
尖閣諸島周辺でも活発化する中国の不穏な動き
東シナ海においても同様の事態が生じている。
沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺で5月、中国の船が与那国島所属の漁船を一定時間にわたって追尾する事件が発生し、4月には中国の空母「遼寧」を中心とする部隊が沖縄本島と宮古島の間を2回も航行した。
5月24日時点で、尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域では41日連続で中国当局の船舶が確認されている。
当然ながら、こうした中国の活動は新型コロナウイルスの感染拡大以前から日常的に起きている。
だが、3月、米国の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」の艦内で新型コロナウイルスの集団感染が発生し、現在も活動や任務が停止状態となっていることから、中国が政治的な隙を突き、米国をけん制する目的で活動を活発化させている可能性もある。
米国も最近、B-1B爆撃機やイージス艦を東シナ海や台湾海峡に派遣するなどして中国の動きをけん制しているが、同海域での米中間の緊張悪化は、シーレーンだけでなく、日本の漁業上も大きなリスクとなる。
和田 大樹