「攻めのIT経営銘柄2016年」を発表

2016年6月9日、経済産業省と東京証券取引所は「攻めのIT経営銘柄」26社を発表しました。これは日本再興戦略の一環として、産業の新陳代謝や企業経営における積極的なIT投資・活用を促すために2015年から開始されたもので、今回は2回目です。

選定プロセスは、まず、東京証券取引所に上場する約3,500社にアンケート調査が実施され、その後、回答企業についてスクリーニングが行われます。アンケートのスコアが一定基準以上であることや、直近3年間の平均ROEが8%以上(あるいは業種平均以上であること)、重大な法令違反等がないことなどが評価のポイントとなります。

アンケートは、経営方針・経営計画の中に企業価値向上のためのIT活用が含まれているかなど、具体的なエビデンスを求めた詳細な質問が合計で34問もあり、かなりハードルが高いものです。このため、回答企業数は2015年の210社から347社に増加したものの、上場企業全体の約10%に留まっています。

今回、選定された26社は以下の通りでした。1業種あたり2社が基本ですが、中には輸送用機器のように日産自動車1社というケースも見られます。また、企業サイズにもばらつきがあり、直近年度の売上高が10兆円を超える日立から、100億円以下のHameeまでは大小入り混じっています。

大和ハウス工業(1925)、 積水ハウス(1928)、アサヒグループホールディングス(2502)、東レ(3402)、花王(4452)、エフピコ(7947)、ブリヂストン(5108)、新日鐵住金(5401)、JFEホールディングス(5411)、IHI(7013)、コニカミノルタ(4902)、日立製作所(6501)、日産自動車(7201)、トッパン・フォームズ(7862)、東京ガス(9531)、東日本旅客鉄道(9020)、日本郵船(9101)、日本航空(9201)、ヤフー(4689)、三井物産(8031)、三菱商事(8058)、Hamee(3134)、日本瓦斯(8174)、みずほフィナンシャルグループ(8411)、東京センチュリーリース(8439)、セコム(9735)。

※各社の詳細は攻めのIT経営銘柄2016(出所:日本取引所グループ)をご参照ください。


過去3年間の株価ベストパフォーマーとワーストパフォーマー

さて、個人投資家として最も気になるのは株価パフォーマンスですが、過去3年間(2016年6月9日まで)の上昇率がプラスであったのは25社中17社でした(上場後3年未満のHameeは除く)。

このうちベスト3は、1位が日本瓦斯で+121%上昇、2位が花王で+90%上昇、3位が大和ハウス工業で+68%でした。一方ワースト3は、1位がJFEホールディングスで▲31%下落、2位が日立で▲28%下落、3位が日本郵船で▲23%下落でした。

このように、攻めのIT経営を実行している銘柄間でも株価パフォーマンスには大きな差があることが分かります。とはいえ、全体の過半数の銘柄が3年前の株価と比べてプラスであったことは心強い結果とも言えます。

もちろん、この背景には、ITの活用というファクター以外にROE8%以上というスクリーニングが寄与していた可能性もありますが、詳細なアンケートに答え、積極的に自社の経営改革をアピールしようとする銘柄には、比較的経営がしっかりとした企業が多いと考えれば、この結果に対して素直に前向きな評価ができるでしょう。

もちろん個別企業の分析は欠かせませんが、こうしたスクリーニングの結果を長期投資銘柄発掘のための1つのツールとすることは可能だと思います。

 

LIMO編集部