2020年2月5日に行われた、GMOペパボ株式会社2019年12月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料
スピーカー:GMOペパボ株式会社 代表取締役社長 佐藤健太郎 氏
会社情報
佐藤健太郎氏:みなさまこんにちは。社長の佐藤です。今回は、新型コロナウイルスの感染拡大に備え、決算説明会に際するみなさまの感染リスクを低下させるため、会場での開催ではなくライブ形式で決算説明会を実行しました。急な変更にも関わらずご覧いただきまして、誠にありがとうございます。
また、このような状況なので、私もマスクを着用して説明します。お聞き苦しい点があるかもしれませんが、ご理解いただけますと幸いです。
それでは2019年12月期決算説明会を開始します。初めて当社の説明会をご覧いただく方もいらっしゃると思いますので、まずは会社概要からご説明します。
企業理念としては「もっとおもしろくできる」、ミッションとしては「インターネットで可能性をつなげる、ひろげる」を掲げ、インターネットサービスを展開している会社です。
沿革
当社の沿革です。
当社は2003年に創業した会社です。創業当時はインターネットが徐々に普及し始めた時期で、ブログサービス等はまだ認知されていませんでした。インターネット上で情報発信をするには高価なレンタルサーバーやプログラミングのスキルが必要であったため、女性や学生が簡単にインターネットを使って情報発信できるように、お小遣いでも借りられる価格帯のレンタルサーバーとして「ロリポップ!」をつくったのが始まりです。
2004年にGMOインターネットグループにジョインしまして、その後事業を拡大し、2008年にはJASDAQに上場しました。
そして、2019年2月には、コンテンツ制作事業やフリーランス向けのファクタリングサービス「FREENANCE」を運営するGMOクリエイターズネットワークがグループジョインしています。
また、12月には東証二部に市場変更することができました。誠にありがとうございます。
セグメント別 売上高構成比率
5ページにはセグメント別の売上構成比を示しています。当社はホスティング、EC支援、ハンドメイドの3つの事業を展開しています。もともとはレンタルサーバーのサービスを中心に企業規模を拡大してきましたが、現状はストックビジネスが全体の(売上の)半分ぐらいとなっています。
近年は「SUZURI」や「minne」といったフローのビジネスの拡大に伴い、EC支援事業やハンドメイド事業が成長し、ご覧のような構成となっています。
ホスティング事業における主力サービス
続いて、各セグメントの主力サービスについて簡単に説明します。
ホスティング事業のレンタルサーバーである「ロリポップ!」は創業当時から運営しているサービスです。月額100円から利用可能です。ビジネス的にはストックのビジネスモデルです。
「ロリポップ!」は低価格で高性能なサービスとして中小の法人や社会人、学生といったさまざまな層の方々にご利用いただいています。
現在では契約件数が40万件を超え、個人向けのレンタルサーバーサービスとしては国内最大級の規模にまで成長しています。
EC支援事業における主力サービス
次にEC支援事業の「カラーミーショップ」についてです。「カラーミーショップ」は、オリジナルのネットショップが簡単に作成できるサービスです。月額1,000円以下から使えまして、「ロリポップ!」と同様に、安定的な収益基盤となるストックビジネスです。
コストパフォーマンスがよく多機能です。個人の店舗さまや、中小の企業の方々にご利用いただいています。
ハンドメイド事業における主力サービス
最後に、ハンドメイド事業の「minne」についてです。「minne」は、ハンドメイド作品を買いたい人と売りたい人をインターネット上でつなぐマーケットプレイスです。
作品の販売時に作家さまから手数料をいただくフロービジネスとなっています。2015年からテレビCMを開始しまして、現在は年間で120億円程度の流通を生む、国内最大のハンドメイドマーケットのサービスとなっています。
以上が、各セグメントにおける主力サービスです。
事業展開
当社はこれまで、「ロリポップ!」や「カラーミーショップ」といった契約件数が多い月額課金のストックサービスによる安定的で継続的な収益で成長してきています。この収益をもとにプロモーション投資や新規事業への挑戦を行い、拡大してきています。
特長(ポートフォリオ経営)
JASDAQに上場した2008年はまだ売上の80パーセントをホスティング事業が占めていましたが、その後にEC支援事業やハンドメイド事業が順調に成長し、バランスのとれたポートフォリオ経営ができていると感じています。
以上が、当社の会社概要です。
通期業績
続いて、2019年12月期の決算について説明します。売上高は、2003年の創業以来16年連続で増加し、また、今期は営業利益・経常利益・当期純利益のいずれも過去最高となっています。
営業利益増減分析
営業利益について、前年との増減分析を表した図を13ページに載せています。ペパボ単体では、売上高の増加に加えてプロモーションコストの抑制により、単体での営業利益は前年から2倍以上の10億500万円となりました。
連結では、子会社のGMOクリエイターズネットワークが運営する「FREENANCE」への投資に伴い、連結での営業利益が7億8,300万円となっています。
セグメント別業績
続いて、各セグメントの業績についてです。ホスティング・EC支援・ハンドメイドの主要サービスの状況についてはこの後説明します。また、「その他」に関しては、成長期待の高いフリーランス向けのファクタリングサービス「FREENANCE」に投資を行っているため、減益となっています。
ホスティング事業(ロリポップ!)
まずは、レンタルサーバーサービス「ロリポップ!」です。売上高は前期比104.1パーセントの17億9,100万円、営業利益は前期比92.5パーセントの8億7,000万円となりました。
「ハイスピードプラン」などの上位プランの提供開始や、オプション機能への誘導強化の結果、顧客単価は上昇し、増収となりました。一方で営業利益については、契約件数の増加を図るためプロモーションの強化を行ったことから減益となっています。
ホスティング事業(ムームードメイン)
続きまして、ドメイン取得代行サービスの「ムームードメイン」です。売上高は20億2,400万円と横ばいでしたが、利益率の改善を図った結果、営業利益は前期比111.9パーセントの2億7,100万円となりました。
EC支援事業(カラーミーショップ)
EC支援事業の「カラーミーショップ」です。売上高は前期比104.7パーセントの13億5,700万円、営業利益は前期比104.4パーセントの7億9,600万円となりました。契約件数は減少傾向ではあるものの、アップセルやクロスセルの施策によって顧客単価が上昇しており、売上・利益ともに増加しました。
EC支援事業(SUZURI・Canvath)
オリジナルグッズ作成・販売サービスの「SUZURI」と「Canvath」です。売上高は前期比165.5パーセントの9億800万円、営業利益は前期比109.6パーセントの7,000万円となりました。
2018年後半から、開発や企画などサービス運営に関わる人員を投資し、事業成長を図り、その結果、キャンペーン施策に加えてアイテム追加やクリエイターの誘致による売上が拡大しています。
ハンドメイド事業(minne)
ハンドメイド事業の「minne」についてです。売上高は前期比103.8パーセントの16億200万円となりました。営業利益については、プロモーションの抑制や収益性の改善を図った結果、前期比7億6,400万円増で、9,400万円の黒字となりました。
一方で、年間流通額はプロモーション抑制の影響が想定を上回り、前期比で99.2パーセントの119億8,000万円と、わずかに減少しています。
連結業績予想
続いて、2020年12月期の業績予想です。売上高は、ストックサービスの堅調な伸びに加えて「SUZURI」や「FREENANCE」の成長により、前期比107.3パーセントの96億円を見込んでいます。
営業利益に関しては、中長期的な事業成長に不可欠なエンジニアやデザイナーなどサービスを作る優秀な人材を集める環境を整備するために、全体の給与水準の引き上げや福利厚生の充実を図り、前期比で105.8パーセントの8億2,900万円を計画しています。
セグメント別業績予想
セグメント別の状況です。オリジナルグッズ作成、販売サービスの「SUZURI」やフリーランス向けのファクタリングサービスである「FREENANCE」が大幅に成長することを見込んでいるため、EC支援事業および「その他」の売上が大きく伸びています。
また、営業利益に関しては、各セグメントが順調に拡大する一方、「その他」においては、2019年と同様に「FREENANCE」においてプロモーションや人材投資を行うため、同水準の損失を見込んでいます。
フリーランス向けファクタリングサービス
ここで、特に注力している「FREENANCE」について説明します。
「FREENANCE」は、ユーザーであるフリーランスの方に安心して働ける環境を提供するためにさまざまな支援を行うサービスです。会社員に比べてリスクを抱えやすいフリーランスの方々が安心して働けるように、「FREENANCE」はユーザーが最大5,000万円まで補償を受けられるあんしん補償を無料で提供しています。
こちらは、業務中の事故や情報漏洩などによる損害賠償などの補償を受けることができるもので、会社員に比べてリスクを抱えやすいフリーランスの方々に安心して働いていただける環境をサポートしています。
また「FREENANCE」が提供している即日払いは、ユーザーであるフリーランスの方が取引先に発行した請求書を買い取り「FREENANCE」が即日でお支払いするというファクタリングのサービスとなっています。
フリーランスの方が早期に資金を受け取ることによって金銭面を心配することなく事業に集中することができるようになると考えています。
フリーランスが抱える課題
今年の年初、1月7日にも日本経済新聞に掲載されていたのですが、フリーランスの方々、また例えばギグワーカーの方々を取り巻く労働環境にはさまざまな課題があります。その中でも、報酬の支払いが遅れたという資金繰りに関する課題が最も多いことが明らかになっています。
市場規模
また、フリーランス向けのファクタリングの市場規模として、調査によりますと、専業のフリーランスの人口は228万人いらっしゃいます。これに会社員の一般的な平均年収440万円を乗じ、そのうち5パーセントがファクタリングを利用すると仮定した結果、約5,000億円の市場規模があるのではないか、と当社では想定しています。
働き方改革やテクノロジーのさらなる進歩によりフリーランスの人口はますます増加するものと考えられ、それに伴って市場はさらに拡大すると考えています。
GMOインターネットグループ各社とのシナジー
また、「FREENANCE」は、GMOインターネットグループの各社とのシナジーによって実現したサービスでもあります。
まず、当社は多くの個人のお客さまを顧客基盤としています。また、GMOあおぞらネット銀行との連携が、ファクタリング事業を行う上で重要な振込の専用口座を即時開始できる環境を提供しています。
さらに、GMOペイメントゲートウェイは「FREENANCE」が買い取った債権を保証しており、これによってリスクを最小化しています。このように、GMOインターネットグループの各社と連携することによって「FREENANCE」は他社には真似できない強みを発揮しています。
2019年における主な施策
2019年は、認知の拡大や新規ユーザーの獲得を目的としたプロモーションを積極的に展開しました。また、「FREENANCE」との親和性が高い会計ソフトの「freee」さまとAPI連携して、より便利に使っていただけるような機能を提供したほか、反社チェック、本人確認の機能を提供して、取引先の方が安心して「FREENANCE」の方とお仕事のやりとりを行い、ユーザーさまが信用力を持てるように、いろいろなことに取り組んでおりました。
KPI推移
これらの施策の結果、請求書の買取額を構成している「利用者数」「一人あたりの利用件数」「平均買取額」の推移はご覧のとおりです。利用者数と平均買取額がとくに大きく上昇しています。
請求書買取額推移
そして、こちらが請求書の買取推移のグラフです。各種のKPIが増加したことにより順調に増加していて、12月には前期比137パーセントとなりました。また、リピーターからの買取額が80パーセントを超えていて、リピートの積み上げによりストック型のビジネスモデルを実現しています。
2020年における施策
2020年における施策はこの3点です。まずはeKYCと呼ばれるオンラインでの本人確認のシステムの導入です。これまで葉書の郵送で行っていた本人確認をeKYCに変更することによって、スムーズな申し込みが実現され、審査期間が大幅に短縮されます。すでに昨年末には提供開始しており、その後順調に口座の件数が増加しています。
2点目は、他社のサービスとの連携です。昨年に行った会計ソフトのfreeeさまとのAPI連携など、FinTech系サービスとの連携を継続的に実施します。
相互送客やシームレスな連携によりユーザーさまの利便性の向上を図り、利用件数の増加を図ります。
3点目は、請求書買取上限額の引き上げです。現状は、高単価で業務されているフリーランスの方の請求が当社の設定している上限を上回っており、そちらが理由で買い取れないケースが発生しています。そのため請求書上限の緩和を予定しています。
FREENANCEにこめた想い
FREENANCEは「フリーランスを、もっと自由に。」という想いを込めて始めたサービスです。専門性を持ったフリーランスが仕事に専念できるように当社がサポートし、本当の意味で自由になることを実現したいと思っています。
現在は、即日払いなどの資金繰りの改善やあんしん補償で業務上のトラブルを無償で補償する支援を行っていますが、これだけには留まらず、今後も新たな支援を展開し、フリーランスの方々がより活躍できる新しい社会をサポートしたいと考えています。
ミッション
最後に、当社の成長戦略としての基本方針をお話しします。当社は「インターネットで可能性をつなげる、ひろげる」というミッションを掲げています。
これは、インターネットを通じて誰もが広く活躍できる環境を提供したいという当社の想いに基づいています。
ミッションに基づくサービス展開
そのミッションに基づき、創業から運営している「ロリポップ!」を起点に、ネットショップが欲しい方向けのネットショップ作成サービスや、ブログが作れない方向けにブログのASPサービス、あるいはハンドメイドを手作りしていらっしゃる方々を支援するための「minne」など、より多くの人たちに表現する機会を提供しようと、サービスを多面的に(展開し)、それに合わせて企業規模を拡大しています。
当社サービスを利用している表現者の数
その結果、さまざまな表現活動を行う方々にご支援いただきまして、当社のサービスをご利用いただいている方々は2019年12月末で637万人となりました。
これだけ多くのウェブサイトを見ていただける方々や、その先、ECサービスを使っていただいている方々により1,200億円以上の流通が生まれている状況です。
個人の表現活動による新たな経済圏の形成
外部環境は大きく変化しており、スマホの普及やSNSが広がるなか、表現者の活動領域も広がりを見せています。
以前は、個人活動の一環として趣味で製作していたハンドメイド作品やイラストは自分で保有し、エリアの限られた人々に送ることが、できること(の限界)でした。
しかし、例えば当社が提供するminneを介してインターネット上で作品を販売したり、「SUZURI」を利用することでイラストや写真をグッズ化して多くの人に販売できるようになりました。
これからの活動を通じて個人が起業したりブランド化していくことで、例えば、その人による出版や講演など、個人の新たな経済活動を形成する動きが加速しています。
成長戦略としての基本方針
そのようなことから、当社はこれからも表現活動を支援する目標を掲げ、さまざまなかたちで表現者の方々をサポートすることによって、世の中の表現活動を支援する会社としてNo. 1を目指していきたいと思っています。
以上が当社の成長戦略としての基本方針です。
売上推移
具体的にはストックサービスによる安定的かつ継続的な収益を基盤とし、成長期待の高いサービスへの戦略的投資によりサービス規模の拡大を図ります。
また資本参加やグループ化などの投資も実施しながら継続的な成長を実施します。
以上で2019年12月期の決算説明を終了します。ご視聴いただき誠にありがとうございました。