ハリウッド俳優も、人気ラッパーも、グーグルも出資
金融 × AIに取組むスタートアップのアルパカです。今回取り上げるのは、今アメリカで最も勢いのあるトレーディングアプリ、Robinhood(ロビンフッド)です。なんと“手数料ゼロ”で株売買ができるというサービスで、若い世代を中心に人気アプリになっています。
2015年5月のRobinhood社の発表によると、同社はこれまでに合計6,600万ドルの資金調達、5億ドルの取引を達成しています。また、この6,600万ドルの資金調達には、グーグル社のベンチャーキャピタルファンドや著名VCのアンドレッセン・ホロヴィッツに加えて、人気ラッパーのスヌープ・ドッグ、俳優のジャレッド・レトが参加したことでも話題になりました。
Robinhoodでは株の売買手数料がなんと無料!?
Robinhoodの一番の特徴はなんといっても手数料がゼロということです。今までは、株取引の手数料として、7ドルから10ドルを払うのが当たり前であったため、それが無料でできるというRobinhoodは業界に大きな衝撃を与えました。
さらに、預金無しでも口座を開設できるようにしたことで、預金の少ない人やトレーディング経験のない人も簡単に始められるようにしました。実際に、Robinhoodユーザーのうち、25%が初めてトレーディングを行った人だとRobinhood社が発表しています。
インスタグラムの投稿と同じくらい簡単に株売買を
もう1つの大きな特徴は、使い方がとてもシンプルだという点です。共同創業者の1人であるウラジミール・テネフ氏は「インスタグラムの投稿と同じくらいシンプルにしたかった」と発言しています。
今まではパソコンを使ってトレーディングをするのが当たり前でしたが、Robinhoodはスマホ専用(iPhone、iPad、Android)のサービスです。これはパソコンを持たず、スマホを日常的に使っている若者に支持される大きな理由となりました。アプリのデザインがスタイリッシュであることも評価され、Apple Design Award 2015、Google Play’s Best Apps of 2015、Google Play Award 2016を受賞しています。
Robinhoodとミレニアル世代
このRobinhood、ミレニアル世代と呼ばれる1980年から2000年頃に生まれた、いわゆるデジタルネイティブと呼ばれる世代をターゲットにしています。
彼らにとってはフェイスブックやツイッターなど、無料のサービスは当たり前。そのため、トレーディングの手数料がゼロ、というRobinhoodは受け入れられやすかったと考えられます。実際に、Robinhoodユーザーの平均年齢は26歳だと言われています。
DIYトレーディングを追求するRobinhood
昨今、一定のアルゴリズムに基づいて運用やリバランスを行うロボアドバイザーが多く出てきています。その中で、ロボアドバイザーと対照をなす用語として、”DIY Investing/Trading”や”Self-directed Investing/Trading”という表現が英語の記事で見かけられるようになっています。
これは文字通り、DIY(Do-It-Yourself)で、ロボや他人に任せ切るのではなく、自分の意思と判断に基づいて取引を行うという意味で、私たちアルパカではこれを日本語で「DIYトレーディング」と呼んでいます。
米国のミレニアル世代は、現金の次にETFを一般的な資産として持っており、ロボアドバイザーもこれに含まれています。ただ、単純なアルゴリズムによって自動的に作られたポートフォリオも結局は従来の金融商品の新バージョンにすぎず、ミレニアル世代にとっては”ありきたりのもの”と感じられるかもしれないとも言われています。
Robinhood共同創業者のバイジュ・バット氏も、「何にでもフィットしてしまうものなんて持ちたくない、というのは自分が自分であるために各人が持つ一種の願望だと思う」と発言しています。
ミレニアル世代にとって身近で当たり前である無料のサービス、シンプルでスタイリッシュなデザイン、友達にシェアしたくなる自分だけの“物語”を作ることができる。こうした特徴を持つRobinhoodがミレニアル世代に支持されたのは必然だったのかもしれません。
若い世代を囲い込むには?
今回取り上げたRobinhoodのように、現在、多くの金融機関が将来の重要顧客であるミレニアル世代の囲い込みを考えています。そこでは、トレーディングをすること自体に何かしらの物語性があることがミレニアル世代に受け入れられる鍵になっているように見受けられます。
インスタグラムが自分自身を発信するツールとして爆発的に広まったように、これまでの世代とは異なる要素が、ミレニアル世代には重要な投資行動の評価軸となっているようです。
アルパカ