キュレーターから読者に伝えたいポイント

2015年半ばから急落した原油価格ですが、最近は回復傾向が顕著です。このため、一時は株式市場の“悪者”の代表格であった原油価格に関する話題は少し鳴りを潜めています。

株価の下落局面では、資源国での投資抑制によるプラント設備関連企業の業績悪化や、資源国に権益を持つ総合商社の投資評価損が懸念され、実際、最近発表された2016年3月期では、そうした懸念材料が多くの企業で顕在化しました。

足元の回復が一時的なものか、あるいは持続性があるものかによって、今後の企業業績の見通しも大きく変化します。今回は、以下の記事から原油市況の回復の背景と今後について考えてみます。

今後の原油価格を見通すためのポイント

この記事では、原油価格に影響を及ぼす供給サイドと需要サイドの見方が分かりやすく解説されています。まず、供給サイドについては、今のところ中東産油国では減産合意には至っておらず、また、6月に予定されているOPEC会議でもイランとサウジの溝が深いため、楽観はできないことが指摘されています。

ただし、2015年の原油価格急落の一因であった米国のシェールオイルの生産については、シェール油井の新規開発が大幅に減少している効果で、2016年後半には米国の原油生産の減少トレンドが鮮明になるとと見られています。こうした先行きの供給圧力の低下を、足元の原油先物市場は織り込みつつあるようです。

一方、需要サイドでは、原油価格の下落により需要が刺激されている模様です。燃費効率が劣る大型車の販売が好調であることなどが良い例です。また、中国でも、公共投資の拡大が小幅ながら需要増に寄与していくことが期待されます。なお、筆者によればインドの需要増加も大きくなっているとのことです。

原油は、価格が下がれば需要が高まるという価格弾性効果が高いコモディティであるため、こうした供給サイドと需要サイドの変化を引き続き注視していきたいと思います。

原油価格の反発はいつまで続くのか?
出所:楽天証券

注意すべきは価格上昇に伴う投資再開と投機的な動き

この記事でも米国でのシェールオイルの生産減少、およびナイジェリアやリビア、ベネズエラなどの地政学リスクの高まりによる供給減が、足元の価格回復要因であるとしています。また、中期的にも新興国の需要増と投資抑制効果等により需給ギャップが縮小し、原油価格が上昇する可能性が高いとする公的機関の予測が多いことが指摘されています。

ただし、原油価格が1バレル50ドルに近づいていることから、米国でシェールオイルが再び増産される可能性があることや、投機的な動きには注意が必要とのことです。

日本政府も原油価格の上昇を予測
出所:ピクテ投信投資顧問

原油価格が上がりすぎることにも注意したい

この記事の筆者によると、戦後に起きた景気後退の前には必ず原油価格の急騰があり、歴史的には原油の急落で株価が下落した今年前半の動きとは真逆の動きが通常のパターンであるとのことです。

最近の原油価格の上昇は、下げ過ぎに対する揺り戻しであると考えれば、今、そこまで心配はする必要はないものの、仮に原油価格がさらに急騰した場合には、アメリカ経済の約7割を占める個人消費に悪影響を及ぼすことを憂慮しなければならなくなるかもしれません。

何事も行き過ぎには注意が必要ということを頭の片隅に入れておきましょう。

原油相場と株式相場順相関のミステリー
出所:楽天証券

 

LIMO編集部