「芸能人ユーチューバー」天国と地獄を分けたのは何か?

ビジネス、今日のひとネタ

2019年秋、国民的アイドルグループ「嵐」がYouTubeのチャンネルを創設したことが大きな話題になりました。彼らに限ったことではありませんが、昨今は多くの芸能人がYouTubeに参入し、動画投稿を始めています。

しかし、テレビなどでの知名度を活かした参入がうまくいっている人もいれば、炎上などでかえって人気を落としている人もいます。その差を分けているのはどんな点なのでしょうか? この記事では、そんな「芸能人YouTuberの現在」について考えてみたいと思います。

続きを読む

どうして嵐がYouTubeに?

2020年末をもって、活動休止を発表した嵐。今や、国民的アイドルグループにもなった彼らが、はたしてなぜYouTubeに参入したのでしょうか。チャンネル創設を発表した際、メンバーは、活動休止までの期間、ファンの皆さんにより一層身近に感じてもらいたい。また、海外のファンに見ていただきたい、といった旨のコメントをしていました。

しかし、以前より嵐の所属するジャニーズ事務所は、ウェブ上に所属タレントの顔写真や映像をほとんど掲載せず、楽曲のミュージックビデオなども初回限定盤CDを購入しないと見られないといったブランディング戦略を進めていました。しかし、このタイミングで舵を切ったのは、

・海外ファンのさらなる獲得
・活動休止期間中でも認知度を維持するため
・事務所若手のウェブ参入への門戸を開くため
・広告収入による半永久的な利益追求

などがあると考えられます。ただでさえ、高い好感度と知名度を誇る嵐が、わざわざYouTubeに参入する意図は気になるところです。

芸能人YouTuberに立ちはだかる壁

「子供が将来なりたい職業」で上位にランクインするYouTuber。今でこそ、馴染みがありますが、はたして一体どんなものかと言われると、よくわからないという方もいるのではないでしょうか。

YouTuberとは、一般的にYouTubeに自作の動画を頻繁に投稿し、アクセス数やPV数などに応じた広告収入を得る人たちのことを指します。また、企業とタッグを組み、タイアップなどをすることにより収益を得る人もいます。

特に最近は、テレビで活躍したことのある芸能人がYouTubeに数多く参入しています。知名度や人気そのままにYouTubeでも成功するのかと思いきや、そんなこともないのだとか。また、反対にテレビでは見せない一面がYouTubeで受けているタレントもいたり。テレビでの活躍とYouTubeでの評価は、そう簡単に直結しないのが現実です。

キンコン梶原からカジサックへ

コンビ結成時から賞レースで名を広め、「はねるのトびら」など多くのバラエティ番組で活躍されていたお笑いコンビ・キングコングの梶原雄太さん。芸能人YouTuberで今もっとも支持されていると言っても過言ではないのかもしれません。

本名ではない「カジサック」という芸名で活動しており、主に芸能界の人間をゲストに招き、テレビではできないトークを展開したり、有名YouTuberとのコラボ動画も人気を集めています。持ち前のキャラクターと、素人にはできないトーク力や笑いのセンスが、YouTubeでも支持される理由なのかもしれません。

そんな彼も、ドッキリ企画にて、スタッフの一人がコレクションしている大事な靴を雑に扱い、それに視聴者が反応したことで炎上したり、イベント共演者とトラブルになったり、はじめは再生回数も伸びず、うまくいかない時期もあったようです。しかし、それを乗り越え、今や150万人を超えるチャンネル登録者を獲得しています。

女優の本田翼さんは、ゲームの実況動画で、動画投稿開始日からおよそ18日で、チャンネル登録者数100万人を集めました。「人気女優がゲーム実況をする」というギャップが視聴者にハマった結果ともいえそうです。また、オリエンタルラジオの中田敦彦さんは、文学や歴史を、授業スタイルでわかりやすく紹介する動画で再生回数を伸ばしています。ターゲットの客層を絞り、なおかつ自身の得意とするジャンルを融合させた戦略が功を奏した例といえるのではないでしょうか。

昨年のM-1グランプリ王者、霜降り明星さんの視聴者から募集した企画に挑戦する動画や、趣味のソロキャンプ(一人でキャンプをすること)に全振りした何気ないキャンプの様子を収めるピン芸人のヒロシさんのチャンネルも、着々と登録者数を伸ばしています。

スター芸能人でもバズらない……

元SMAPの草なぎ剛さんは、2017年より動画投稿を始めましたが、現在、チャンネル登録者数は約95万人です。芸能人YouTuberにしても、かなり多い登録者数ですが、視聴回数が目立って多い動画というものはあまり見受けられません。ネット上でも意見は分かれており、

「草なぎ剛のYouTube本人めっちゃ楽しそうだし和やかだからみてるとストレスなくなる」
「草なぎ剛さんのYouTubeのチャンネルはだらだら見られるので良い」

といった好意的なコメントが見られる一方で、

「サムネがつまらなくてクリックする気が起きない」
「YouTuberの人とコラボしたら、気を使いすぎてコラボしてるYouTuberの良さ潰れたり、面白さが余計なくなったりして見ててつまらない」

という辛辣なコメントもちらほら。

掲載されている動画の企画は、テレビ番組の良いところと、彼自身の趣味や好きなことをうまく活かしたものが多く、彼のファンはもちろん、そうではない視聴者も楽しめる作品が多くあります。

しかし、彼本人の持ち前の穏やかさや、上手すぎる編集、落ち着いた企画や作風が、人気YouTuberのややトガっていて、一般人にはなかなかできないことをやってくれる「アウトロー感」「おもしろアニキ感」とマッチしないところもあるのかもしれません。YouTubeは、単に知名度や人気だけではバズらないシビアな世界でもあるようです。

「テレビの延長線」と考えると失敗する

「YouTubeは、テレビの下位互換である」という見方があります。しかし、そんな「下に見る態度」で参入すると、視聴者は興ざめします。企画・撮影・編集など、たとえ10分の動画であっても、それを作るまでに多大な時間と労力を使うのが動画投稿。実際、多くの再生回数を誇り、チャンネル登録者数を集めるトップYouTuberは、どれひとつ力を抜かず、毎日、投稿を惜しみません。同じ映像媒体ではありますが、テレビとは大きく異なる点がここにあるのではないでしょうか。

また、YouTubeは、制作側のモチベーションが視聴者に伝わりやすい性格を持ちます。そのため、継続した動画投稿を行い、真摯に視聴者に届ける姿勢は信頼獲得につながり、興味を持ってくれた動画を糸口に過去の動画の再生回数を稼ぐといった努力と忍耐が肝心なのだとか。芸能界では、基本的には番組出演のたびにギャラが支払われる形式をとっているため、多くの芸能人YouTuberは、このシステムを認められずに、目先の再生回数に満足できず、撤退していく人が多いようです。

「YouTubeは、テレビより下」という考え方はもう古く、今や経済効果や社会影響力の点でYouTubeが勝っている点もあります。芸能人ではなく人気YouTuberがテレビのコマーシャルに続々と起用されるという現象も起きています。若い世代をターゲットとした訴求力は比べるまでもないでしょう。そのため、芸能人のYouTubeへの参入は、これからますます増えていくのではないでしょうか。テレビとはまた違った切り口の、おもしろいコンテンツが発信されるのを楽しみにしたいところです。

クロスメディア・パブリッシング

参考記事

ニュースレター

メールアドレスをご登録いただくと、毎朝LIMOの更新情報をお届けいたします。
クロスメディア・パブリッシング

2005年創業。ビジネス書・実用書を中心とした書籍出版や企業出版、メディア・コンテンツ事業、デザイン制作事業などを手がける。

主な刊行書籍に、20万部突破の『誰からも「気がきく」と言われる45の習慣』をはじめ、『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』 『起業家のように企業で働く』 『すべての仕事を紙1枚にまとめてしまう整理術』 『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』 『自分を変える習慣力』 『鬼速PDCA』など。