2019年11月8日に行われた、株式会社日本触媒2020年3月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。IR資料
スピーカー:株式会社日本触媒 代表取締役社長 五嶋祐治朗 氏
1.概要
五嶋祐治朗氏:みなさま、こんにちは。社長の五嶋です。よろしくお願いいたします。まず冒頭で、業績等の概要をお伝えいたします。
2019年度上期は前年同期と比べ減収、大幅減益となりました。上期としても2012年の姫路事故以来、過去最低の利益水準となりました。その減収要因は、原料価格やエチレングリコールなど一部製品市況の下落と数量減、減益要因は、在庫評価損を含む加工費増と数量減などが挙げられます。
ただし、数量減は上期で底打ち感があり、下期にかけてはSAPやアクリル酸の数量増などにより、上期と比較して増収増益を見込んでいます。
また、下期以降、時間は多少要するものの、各種施策および市況改善により、中長期的には必ず業績は回復すると見ており、今後の成長を担う設備投資等の計画に、変更の必要はないと考えています。
同時に、配当についても、過去最高配当額を2年連続更新する予定は変更せず、引き続き中長期的な水準向上を目指した配当を行っていきます。
1.概要 2025年のありたい姿
では、これら内容について具体的に説明いたします。まず、2017年度から取り組んでいる後半中期経営計画「新生日本触媒2020 NEXT」の概要はご覧のとおりです。この計画では、2025年のありたい姿や重要課題をこのように定めていますが、本日はこの重要課題に対する施策2項目について進捗を説明します。
2.重要課題に対する施策①-①
まず、SAP事業の競争力強化についてです。アクリル酸とSAPそれぞれについて市場動向を説明します。アクリル酸については世界需要が680万トンです。足元の需要は若干弱いものの、中長期的には年率5パーセント程度の成長を想定しており、現在の各社増設計画に照らし、引き続き需給バランスは改善していく方向であると見ています。
SAPについては世界需要が300万トンです。引き続き足元の需要が弱いなか、ユーザー側・供給側ともに競争が激しくなっています。しかし、中長期的には年率5パーセント以上成長する見方に変わりはなく、需給バランスは改善していく方向であると見ています。このように、アクリル酸・SAP市場ともに中長期的には引き続き安定的な成長が見込まれると考えています。
2.重要課題に対する施策①-②
このような状況における当社の取り組みについて説明します。当社グループの強みは、原料アクリル酸も製造する垂直統合の強み、そして有力顧客との強い関係にあります。
この強みをベースに、抜本的なコスト削減を目指す「SAPサバイバルプロジェクト」に強い意志を持って取り組んでおります。
スライドに示したような、すべてのサプライチェーンにわたるコスト削減を図り、キログラムあたり数十円の目標へ向け進めていますが、本格的には2021年度からの貢献を目指しています。
また、グローバル供給体制の強化を目指し、ベルギーでは昨年運転を開始した設備が順調に稼働し、インドネシアにおいては2021年3月末にアクリル酸10万トン設備の完工を目指し、順調に建設が進んでいます。
足元、一時的な調整局面により、SAPの収益は厳しい状況ですが、「SAPサバイバルプロジェクト」のコスト削減の達成とあわせ、需給バランスも今後が引き締まる方向の見方に変わりはなく、収益性は確実に改善していくものと考えています。
当社としては、今後もアクリル酸・SAPトータルで、SAP事業の競争力強化を推し進めてまいります。
2.重要課題に対する施策②-①
次に、新規事業です。新規製品の創出加速については、SDGsへの貢献も含め、事業の市場性・適社性・社会性をキーとして事業のターゲットを選定し、進めています。
2.重要課題に対する施策②-②
まず、ライフサイエンス事業分野では、化粧品領域にて、化粧品素材事業の確立を目指し、フランスの天然素材大手GREENTECH社をはじめ、複数社との協業を広げつつ、今年度から、わずかではありますが売上を計上しています。
医薬品領域では創薬支援事業の確立を目指し、ペプチド医薬・核酸医薬への参入を進めています。設備に関しては国内有数の規模を誇る中分子原薬合成施設が吹田に完工し、商業運転に向け準備を進め、年度内に稼働を開始する予定です。
2.重要課題に対する施策②-③
次に、情報ネットワーク事業分野とエネルギー・資源事業分野におきましては、まずモビリティ領域にてスライドに示した製品・開発品に取り組んでいます。
「イオネル®(LiFSI)」は、車載用リチウムバッテリーの高温保温安定性、および、サイクル寿命と低温入出力特性を両立させることができ、広い温度範囲で性能向上と耐久性に貢献します。大手電池メーカー含め、お客さまから高い評価を得ており、販売数量も伸び始めています。今後の需要の伸びを予測し、数年後には現有能力を増強する必要があると考えています。
メチレンマロネート類は、各種塗料や粘接着剤の環境対応力強化が期待でき、サンプル評価においてもお客さまから高い評価を得ていることから、セミコマーシャルプラントの建設検討を進めています。
イメージング領域では、立体印刷特性に優れるUV硬化材料「AOMA®」、紙より薄い有機ELであり多方面での用途展開が期待できる「iOLED®」、半導体領域では高次シラン材料、エネルギー変換領域ではエネルギー貯増分野向け各種素材、水領域では海水淡水化・廃水処理向け各種素材に取り組んでいます。
それぞれ当社の特徴を生かし、国内外研究機関とのオープンイノベーションや、有力なビジネスパートナーとの共同開発などを通じ、早期の事業化を目指しています。
中期経営計画で示している2020年度新規事業380億円の目標達成は、残念ながら厳しい状況ではありますが、このように種まきや仕込みが着実に進んでおり、今後はこれらをより大きく加速させたいと考えています。
2.重要課題に対する施策②-④
新規事業・新規製品の創出加速の最後として注目される既存製品について、その状況を説明します。
QRコード印刷などのUVインクジェット印刷素材である「VEEA®」や、フィルムや基材への密着性に優れる、水系の架橋剤である「エポクロス®」、優れた反応性と密着性を有する水溶液ポリマーである「エポミン®」についてはいずれも世界で当社のみが生産する製品ですが、新たな用途拡大に伴う旺盛な需要に応えるため、このように順次設備増強を予定どおり進めており、早期の利益貢献拡大を期待しています。
今後も独自技術で開発した高機能化学品について設備増強・拡販を進める予定です。
3.持続的成長に向けて
後半中計の進捗として、最後に、持続的成長に向けて取り組んでいる内容を説明します。今般、ESG情報の開示強化を進めるため、統合報告書様式の「Techno Amenityレポート」を発行しました。また、ホームページでの開示強化も進めており、評価機関とのやり取りも着実に深まっています。
当社は「CSR活動の推進は、グループ企業理念『TechnoAmenity』の実践そのものである」と考えており、今後もこうした考えのもとでCSR活動を推進していく予定です。
4.2019年度 上期業績
次に、業績動向について説明します。2019年度上期業績はここに示すように前期比較で減収、大幅減益となりました。その要因としては、売上収益では原料価格やエチレングリコールなど一部製品市況の下落と数量減、営業利益では在庫評価損を含む加工費増や数量減などが挙げられます。
5.2019年度 通期見通し
2019年度通期業績は上期の業績悪化もあり減収減益を見込んでいますが、数量減などは上期で底打ち感があります。
上期から下期にかけてはSAPやアクリル酸の数量増などにより、売上収益は上期の1,533億円から1,717億円への増収、営業利益は上期の66億円から109億円への増益を見込んでいます。
6.利益還元策
最後に利益還元策です。2018年度通期配当は1株あたり170円と、過去最高配当としましたが、2019年度は前期よりさらに10円増配の通期1株あたり180円と、当初の計画を据え置き、過去最高配当額を更新する予定であります。
今後も業績動向を見通し、中長期的な水準向上を目指した配当を行ってまいります。
以上で私からの説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。