年賀はがきの引き受け開始は12月15日(日)からですが、SNSやメールなどでの「カジュアルな年頭のあいさつ」に抵抗がない人も増えてきました。そうした流れもあり、特にここ数年くらいは、多くの人が「年賀状どうするか問題」に悩んでいるようです。

2020年9月に日本郵政が発表した資料によると、2020年用年賀状の発行枚数は24億4090万枚だったとのこと。とはいえ、この枚数がどのくらいのものなのか、多くの人にとってはさっぱりイメージできないかもしれません。年賀状の発行枚数は、ピークだった2003年の約44億6000万枚と比べると、実に5分の3以下にまで減少しています。年賀状を書く人は、数字の上でも年々減ってきていることがわかります。

そんな中、悩んだ末の答えの一つとして、「終活年賀状」というものが話題となっています。これはいったいどんなものなのでしょうか?

「終活年賀状」とは

終活年賀状とは、「年賀状を今年限りで辞退する」という旨の文章を書いた年賀状のことです。「終活」とは、ご存じの人も多いと思いますが「自分の人生の終わりに向けての活動」のことで、もともと、そうした終活の一環、身辺整理の一つとして「年賀状を出すのをやめる」ということは行われていたようです。

そうした中、ここ最近になって、「最後の年賀状宣言」を行うことが「終活年賀状」「年賀状じまい」などと呼ばれるようになりました。実際のところ「終活していることを知らせる年賀状」「終活の一環としてもう年賀状を出さないという通知」というより、ほとんどは単に「年賀状を出すのは今年で最後だという通知」なので、ネーミングとしては、「終活年賀状」よりも、「年賀状じまい」(あるいは「年賀状終活」など)のほうが適切のような気がしますが……。

ともあれ、年賀状を出すのをやめるだけでなく、その旨を宣言した年賀状を出すのには、

「出さない理由を理解してもらいたい」
「これまでの年賀状のやり取りへのお礼はきちんと言いたい」
「急に年賀状を出さないことで心配をかけたくない」

といった理由が挙げられ、それまでの送り相手に誠実であろうとして生まれたもののようです。

驚いたことに、「年賀状を今年いっぱいでやめたい人」向けの文例集が、年賀状の外注業者のサイトに載っていたりもします。ある意味で自殺行為とも言えるのですが、ヤケになっているのか、あるいは「最期を迎える客」からもきっちり稼いでおこうということなのでしょうか。

高齢化だけが理由じゃない、年賀状の「終活」

加えて、こうした文例をまとめた記事がほかにもネット上に多くあることから、一定のニーズの盛り上がりがあることもうかがえます。また、高齢になった親の年賀状を書いている人が、「親の分までつくるのは疲れてしまった」と終活年賀状を選択することもあるようです。

しかし、終活年賀状はいまや高齢者にとどまらず、40代のような終活とはあまり縁のない世代にまで広がっています。その背景には、どんな理由があるでしょうか?

「義理で年賀状を書いていたし、面倒なのでやめたい」「一度、人間関係を整理したい」といった理由から、そもそも年賀状を書くのをやめたいとずっと思っていた人は数多いのではないかと考えられます。一方で、「自分は書いていないのに、誰かから年賀状が送られてくると申し訳なくなる」「相手に気を遣わせたくない」という気持ちもあることから、あらためて「年賀状の終了宣言」を行うことを選ぶ人が多いようです。

終活年賀状への賛否の声

ネットでは、こうした年賀状の「終活」に対して、

「合理的だし自分もそうしたい」
「形骸化した年賀状のやり取りを続けるよりは良さそう」

と賛同する声がある一方で、

「正月早々、縁切り状をもらうのは不快」
「寂しい気持ちになるので、せめて寒中見舞いとして送ってほしい」
「フェードアウトのほうがいい」

とあまりよく思わない人も多くいます。確かに、誠実な気持ちで送られたものだとしても、そういう文面を受け取るのが嬉しいかといえば、微妙なところではありますね。

SNSやメールは年賀状に取って代わる?

昔と比べてコミュニケーション手段が格段に発達し、知り合いと連絡をたまに取っていたりSNSで近況をよく知っていたりすることも多い今となっては、「日ごろから連絡を取るような仲の人に対しては年賀状の必要性を感じない」という人もいます。また、「年賀状を書くことに追われず、年末をゆったりと過ごしたい」「気持ちの問題だから形式は問わないはず」と、年賀状よりも手軽なメールやSNSで年始の挨拶をする人が、若者を中心に増え続けていることは確かです。

高齢化だけでなく、さまざまな理由から行われている年賀状の「終活」。来年、再来年と、広がりを見せていくのかもしれません。

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