老人ホームに入ったあとでも、退去を求められることはあるのでしょうか。2026年6月には有料老人ホームの登録制度を設ける改正法が公布され、ホームとの契約のあり方にも関心が集まっています。退去にかかわる条件は、入居契約書と重要事項説明書に書かれています。

契約書は「何が書いてあるか」と同じくらい「どの欄に書いてあるか」を押さえておくと、読みやすくなります。ここでは民間の有料老人ホームを取り上げ、厚生労働省の「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」が契約解除をどう定めているかを、文言のまま確かめます。特別養護老人ホームなどの介護保険施設は、この記事の対象外です。

あわせて、入院・医療的ケア・費用の滞納が書類のどこに書かれるかを整理し、75歳以上の平均在院日数をもとに、入院中の利用料の扱いで負担がどれだけ変わるかを試算します。

※平均在院日数は、厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」の、2023年9月1日~30日に退院した75歳以上の患者の平均です。

1. 老人ホームの退去を求められるのはどんなとき?国の指針は事業者からの契約解除を「信頼関係を著しく害する場合に限るなど」と定める

老人ホームの退去につながる事業者からの契約解除について、厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」(最終改正2024年12月6日)は、契約内容の項目で次のように定めています。

  • 【解除の条件】入居契約書に定める設置者の契約解除の条件は、信頼関係を著しく害する場合に限るなど入居者の権利を不当に狭めるものとなっていないこと
  • 【解除条項の明記】入居者、設置者双方の契約解除条項を入居契約書上定めておくこと
  • 【契約書に書くこと】契約解除の要件及びその場合の対応、前払金の返還金の有無、返還金の算定方式及びその支払時期等が明示されていること

同じ指針は、消費者契約法により、消費者の利益を一方的に害する条項などは無効となる場合があるとして、入居契約書の作成で十分に留意するよう求めています。

ただし、この指針は国が都道府県などに示す技術的な助言で、実際の指導は各都道府県・指定都市・中核市が定める指導指針で行われます。どの場合に退去となるかは、それぞれの入居契約書と、ホームの受け入れ体制によって変わります。

なお、2026年6月に成立した改正法(社会福祉法等の一部を改正する法律)で、中重度等の要介護者を入居させる有料老人ホームについて、都道府県等への登録制度を設けることが決まっています(施行は政令で定める日)。

2. 老人ホームの類型で退去の扱いは違う?「健康型」は介護が必要になると契約を解除し退去、介護付・住宅型は居室での生活の継続が可能

老人ホームの退去の扱いは、ホームの類型でも違います。指針の別表「有料老人ホームの類型」は、介護が必要になったときの扱いを次のように説明しています。

  • 【介護付有料老人ホーム】当該有料老人ホームが提供する特定施設入居者生活介護を利用しながら当該有料老人ホームの居室で生活を継続することが可能
  • 【住宅型有料老人ホーム】入居者自身の選択により、地域の訪問介護等の介護サービスを利用しながら当該有料老人ホームの居室での生活を継続することが可能
  • 【健康型有料老人ホーム】介護が必要となった場合には、契約を解除し退去しなければなりません

介護付・住宅型でも、要介護状態を理由に居室を移ったり契約を終えたりする契約はあります。指針は、一定の要介護状態になったことを理由として契約を解除する契約などでは、次の手続きを含む一連の手続を入居契約書又は管理規程上明らかにしておくこととしています。

  • 【手続き1】医師の意見を聴くこと
  • 【手続き2】本人又は身元引受人等の同意を得ること
  • 【手続き3】一定の観察期間を設けること