6. 親が亡くなった直後の40代の子の生活費は?未支給年金は生計を同じくしていた子が請求でき、預金は遺産分割前でも1つの金融機関で150万円まで払い戻せる
遺族年金は出なくても、親が受け取るはずだった年金の残りは、40代の子が受け取れる場合があります。
日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」によると、亡くなった月分までの年金で、まだ受け取っていない分は「未支給年金」として請求できます。
- 【請求できる人】亡くなった当時、生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他3親等内の親族の順
- 【書類】「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」に、続柄や生計を同じくしていたことを確かめる書類などを添える
- 【注意】届出が遅れると、受け取りすぎた年金の返還を求められる場合がある
親の預金は、相続人が複数いると、遺産分割が終わるまで動かしにくくなります。
法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」によると、遺産分割前の払戻し制度があります。各相続人は、ほかの相続人の同意がなくても、一定額を単独で払い戻せます。
- 【単独で払い戻せる額】口座ごとに、相続開始時の預金額×3分の1×その相続人の法定相続分
- 【上限】同じ金融機関につき150万円
- 【子2人が相続人の場合】法定相続分は2分の1ずつで、預金100万円あたり約16.7万円
払い戻した預金も相続した財産の一部です。生活保護を考えている場合は、払い戻した額も含めて、福祉事務所に伝えることになります。
7. 【元銀行員の視点】検証:40代の子が親の死後に使えるのは、親の名義のお金ではなく、本人の名義で受け取る制度
試算では、単身・41〜59歳の生活扶助は東京23区で約7.7万円、3級地-2で約6.9万円で、差は約8000円でした。
東京23区で家賃を払っているなら、住宅扶助の上限と合わせて約13.1万円になります。相続した預貯金100万円は、その約7.6か月分にあたります。
障害基礎年金の2級は月約7.1万円で、東京23区の生活扶助の約7.7万円を下回ります。障害年金を受け取れる場合でも、家賃を払って1人で暮らすなら、生活保護で差額を補うことも選択肢に入ってきます。
銀行の窓口で年金の受け取りのご相談をお受けしていた頃も、年金は受け取るご本人の名義の口座に振り込まれるものでした。親が亡くなれば、親の名義の年金は亡くなった月の分で止まり、遺族年金の対象にならない40代の子に引き継がれることはありません。
親の死後に40代の子が使えるのは、障害年金のように本人の名義で受け取る年金と、本人を1つの世帯として判定する生活保護、本人が相談できる生活困窮者自立支援制度です。
管轄も、障害年金は年金事務所、生活保護は福祉事務所、生活困窮者自立支援制度は自立相談支援機関と分かれています。
親が元気なうちに、子の初診日や保険料の納付状況と、親の預貯金がどの金融機関にいくらあるかを親子で書き出しておくと、どの窓口から確かめればよいかが見えてきます。
遺族年金がないことを前提に、本人の名義で使える制度を順に確かめていただきたいところです。
8. まとめ
遺族年金の「子」は18歳になった年度の3月31日まで、障害等級1級・2級でも20歳未満のため、40代の子は遺族年金を受け取れません。
親の死後に使えるのは、本人の障害年金、生活保護、生活困窮者自立支援制度で、未支給年金は生計を同じくしていた子が請求できます。
令和8年10月の基準で、単身・41〜59歳の生活扶助は東京23区で約7.7万円、家賃の上限は5万3700円です。相続した預貯金は先に生活費に充てる扱いで、100万円はその約7.6か月分にあたります。
それぞれの制度の要件は、年金事務所・福祉事務所・自立相談支援機関で確かめていただきたいところです。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。生活保護の要否や支給額は、住んでいる地域の級地、年齢、世帯の状況、収入や資産によって変わり、福祉事務所が判断します。生活保護は福祉事務所で、障害年金・遺族年金は年金事務所で、生活困窮者自立支援制度は住んでいる地域の自立相談支援機関でご確認ください。
参考資料
- 日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
- 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
- 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
- 厚生労働省「生活保護制度」
- 厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和8年10月)」
- 厚生労働省「級地の確認」
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」
中本 智恵