親の年金で暮らしている40代の子は、親が亡くなったあと遺族年金を受け取れるのか。出ないなら、親の死後に頼れる制度はあるのか、と気がかりに思う方もいるかもしれません。
ここでは、まず遺族年金が40代の子に出ない理由を確かめます。そのうえで、親の死後に子が使える生活保護・障害年金・生活困窮者自立支援制度と、親の預貯金を相続した場合の扱いを整理します。
あわせて、令和8年10月の基準で、単身・41〜59歳の生活保護の生活扶助を級地ごとに計算します。
相続した預貯金100万円が、生活扶助と住宅扶助の何か月分にあたるかも試算します。
※生活扶助の額は、厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和8年10月)」、級地は同「級地の確認」をもとにしています。
1. 遺族年金は40代の子に出る?子の対象は18歳になった年度の3月31日まで、障害等級1級・2級でも20歳未満のため、40代の子は対象外
遺族年金のうち、遺族基礎年金を受け取れるのは、亡くなった人に生計を維持されていた「子のある配偶者」か「子」です。日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」は、この「子」を次のように定めています。
- 【遺族年金の「子」】18歳になった年度の3月31日までにある人
- 【障害がある場合】20歳未満で、障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人
- 【40代の子】年齢の条件にあたらないため、障害がある場合も遺族年金の「子」には入らない
遺族厚生年金でも、子と孫の条件は同じです(日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」)。
受け取れる遺族の順位は、子のある配偶者、子、子のない配偶者、父母、孫、祖父母の順です。40代の子は、この順位の中に入りません。
親の年金は、親ご本人の老後の生活を支えるための給付です。
遺族年金は、亡くなった人に生計を維持されていた遺族のうち、法律で決められた人に支給されます。親の年金を40代の子が引き継ぐ仕組みにはなっていません。
2. 生活保護は40代の子が親の死後に単身で受けるといくら?10月からの基準で生活扶助は東京23区で約7.7万円、3級地-2で約6.9万円、家賃は東京都の1級地で上限5万3700円
厚生労働省「生活保護制度」によると、生活保護は世帯単位で行います。世帯の収入が最低生活費に満たない場合に、その差額が保護費として支給されます。
親と同じ家で暮らしている間は、親子で1つの世帯として見られ、親の年金も世帯の収入に入ります。
親が亡くなり、40代の子が1人で暮らすことになると、単身の世帯として判定されます。令和8年10月の基準で、単身・41〜59歳の生活扶助を級地ごとに計算すると、次のとおりです。
- 【1級地-1(東京23区など)】約7.7万円(7万7240円)
- 【1級地-2】約7.6万円(7万5810円)
- 【2級地-1】約7.4万円(7万3930円)
- 【2級地-2】約7.2万円(7万2050円)
- 【3級地-1】約7.2万円(7万1580円)
- 【3級地-2】約6.9万円(6万9240円)
このほかに住宅扶助があり、実際に払っている家賃が上限の範囲内で支給されます。東京都の単身の例では、上限は1級地で5万3700円、2級地で4万5000円、3級地で4万900円です。
東京23区で家賃が上限以上なら、生活扶助と住宅扶助を合わせて約13.1万円になります。
※試算の前提:生活扶助は、第1類(41〜59歳)と第2類(1人)に、特例加算(1人月2500円)と経過的加算(1級地-1の単身・41〜59歳は20円)を足した額です。40歳は20〜40歳の区分で、1級地-1では20円少なくなります。冬季加算と障害者加算は含めていません。
単身・41〜59歳の生活扶助は、東京23区など1級地-1で月7万7240円、3級地-2で月6万9240円(令和8年10月の基準)1/1
出所:厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和8年10月)」をもとにLIMO編集部作成
生活保護を受けられるかどうかは、申請後の資産・扶養・収入・働けるかどうかの調査を経て、福祉事務所が判断します。
ここで示した額は、最低生活費の計算に使う基準の額です。実際の額や要件は、住んでいる地域の福祉事務所で確かめることができます。
3. 親の預貯金を相続すると40代の子の生活保護は?預貯金は先に生活費に充てる扱いで、100万円は東京23区の単身の生活扶助と家賃の上限の約7.6か月分
厚生労働省「生活保護制度」は、保護を受ける前提として資産の活用を挙げています。預貯金や、生活に利用されていない土地・家屋などがあれば、売却などをして生活費に充てるよう求めています。
親から相続した預貯金も、40代の子の資産として、まず生活費に充てることになります。
相続した預貯金が、生活保護の最低生活費の何か月分にあたるかを、100万円あたりで試算すると次のとおりです。
- 【東京23区・家賃を払っている場合】生活扶助と住宅扶助の上限を合わせた約13.1万円で割ると、約7.6か月分
- 【東京23区・相続した実家に住み続け、家賃がない場合】生活扶助の約7.7万円で割ると、約13か月分
- 【3級地-2・家賃がない場合】生活扶助の約6.9万円で割ると、約14.4か月分
※試算の前提:単身・41〜59歳、令和8年10月の基準で、ほかに収入がないものとしています。住宅扶助は、実際に払っている家賃・地代に対して支給されるため、家賃がない場合は含めていません。
厚生労働省の説明で売却などの対象として挙げられているのは、「生活に利用されていない」土地・家屋です。相続した実家に住み続ける場合の扱いは、福祉事務所で確かめることができます。
また、きょうだいなど扶養義務者による扶養は、生活保護に優先します。その扱いも、あわせて福祉事務所で確かめておくと安心です。
4. 障害年金は40代の子でも受け取れる?初診日・障害の状態・保険料納付の3つの要件を満たせば、2級で年84万7300円(月約7.1万円)
遺族年金は年齢で外れても、障害年金は40代の子本人の年金として受け取れる場合があります。日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」によると、次の3つの要件をすべて満たすと支給されます。
- 【初診日】障害の原因となった病気やけがの初診日が、国民年金に加入している間、または20歳前など年金制度に加入していない期間にあること
- 【障害の状態】障害認定日などに、障害等級1級または2級の状態にあること
- 【保険料の納付】初診日の前々月までの加入期間のうち、納付済期間と免除期間を合わせて3分の2以上あること(初診日が令和18年3月末日までで65歳未満なら、直近1年間に未納がなければよい。20歳前に初診日がある場合は不要)
令和8年4月分からの障害基礎年金は、昭和31年4月2日以後生まれで1級が年105万9125円(月約8.8万円)、2級が年84万7300円(月約7.1万円)です。
障害認定日には該当しなかったものの、その後に症状が重くなった場合は「事後重症」の請求もあります。請求できるのは、65歳の誕生日の前々日までです。
生活保護を受ける場合、障害年金は先に受け取るものとされ、年金の額は収入として最低生活費から差し引かれます。どちらか一方を選ぶのではなく、年金で足りない分を保護費で補う形です。
障害年金の請求は、年金事務所で確かめることができます。
5. 40代の子が生活保護の前に使える支援は?生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関で支援プランを作り、就労準備支援は原則1年間
厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」は、仕事が見つからない、働きたくても働けない、社会に出ることに不安があるといった人の相談を受ける制度です。仕事・住まい・家計の支援を、一人ひとりに合わせて行います。
親の死後に収入がなくなった40代の子も、仕事や住まいの困りごとを相談できます。
- 【自立相談支援事業】支援員が相談者と一緒に必要な支援を考え、自立に向けた支援プランを作る
- 【就労準備支援事業】すぐに働くことが難しい人に、原則1年間、プログラムに沿って基礎的な力を養う支援や就労の機会を提供する
- 【家計改善支援事業】家計の状況を見える化し、家計管理を支える計画づくりや相談、関係機関へのつなぎを行う
- 【住居確保給付金】離職などで収入が減り、住まいを失った、または失うおそれのある人に、一定期間、家賃相当額を支給する
- 【居住支援事業】住まいがない人などに、一定期間、宿泊場所や食事を提供する
まず相談するのは、住んでいる地域の自立相談支援機関です。どの支援を使えるかや住居確保給付金の要件は、自立相談支援機関で確かめることができます。
親の死後、40代の子が遺族年金を受け取ることはできませんが、本人の障害年金や生活保護、生活困窮者自立支援制度は使える場合があります。それぞれ窓口が年金事務所・福祉事務所・自立相談支援機関と分かれているため、早めに確かめておくと安心です。