親の施設代をきょうだいでどう分けるかは、きょうだいそれぞれの収入や暮らしが違うほど決めにくいものです。きょうだいなら均等に分けるのが当たり前のように語られることもありますが、民法は扶養の義務を定める一方で、親の施設代を「均等」に分けるとは決めていません。

親の施設代の話は、法律で決まっていることと、家族の話し合いで決めることが混ざったまま進みやすいものです。ここでは、民法の条文と、公的な特別養護老人ホームの費用で確かめます。

あわせて、特別養護老人ホームの月額を親の年金の平均と比べ、足りない分が出たときに、きょうだい2人で均等に分ける場合と収入に応じて分ける場合の額を試算します。

※特別養護老人ホームの月額は、厚生労働省「介護サービス情報公表システム」に掲載された居住費・食費の基準費用額(令和8年8月から)と、要介護3の施設サービス費(1割負担)をもとにしています。親の年金は、厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の厚生年金(第1号)の老齢年金の平均年金月額です。

1. 親の施設代はきょうだいで均等に分ける決まり?民法に「均等」の定めはなく、話し合いでまとまらなければ家庭裁判所が資力などを考えて決める

民法第877条は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めています。親から見て子は直系血族にあたるため、きょうだいはそれぞれ親を扶養する義務を負います。その義務をきょうだいでどう分けるかについて、民法の定めは次のとおりです。

  • 【第877条(扶養義務者)】直系血族と兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある
  • 【第878条(扶養の順位)】扶養をする義務のある人が数人いて、扶養をする順序について協議が調わないときなどは、家庭裁判所が定める
  • 【第879条(扶養の程度又は方法)】協議が調わないときなどは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が定める

条文には「均等に」という言葉はありません。きょうだいの話し合い(協議)で決めるのが先で、まとまらないときに家庭裁判所が、親が必要とする額と、きょうだいそれぞれの資力などを見て決めるという順番です。

家庭裁判所の手続きには「扶養請求調停」があります。裁判所の案内によると、申し立ては扶養権利者(親)からも扶養義務者(きょうだい)からもでき、費用は扶養権利者1人につき収入印紙1200円分と連絡用の郵便切手です。調停が成立しないときは、原則として審判の手続きに移ります。