誰も住まなくなった実家を、賃貸に出すか、売却するか。実家の賃貸は家賃の額面で考えがちですが、空室や管理費、固定資産税、不動産所得にかかる税を引くと、手元に残る額は小さくなります。
富裕層や法人のお客さまの資産運用のご相談を受けていた経験からお伝えすると、相続した実家の賃貸は、利回りを「額面」と「手元に残る額」に分けて、早めに確かめておきたいテーマです。ここでは、相続した実家を賃貸に出したときの手取りと、賃貸にすると使えなくなる空き家の3000万円控除の税を、公的な統計と制度で試算します。
試算するのは、賃貸に出した場合の1年あたりの手取りと、特例の期限内に売却した場合・賃貸にして数年後に売却した場合の手元に残る額の差です。
※家賃の月6万1846円は、総務省「令和5年住宅・土地統計調査」の民営借家の一戸建ての1か月当たり家賃(家賃0円を含まない)です。
1. 実家を賃貸に出すと家賃はいくら?一戸建ての民営借家の平均は月約6.2万円、年約74.2万円
総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、民営借家の一戸建ての1か月当たり家賃は6万1846円(家賃0円を含まない)です。実家を賃貸に出して、この平均の家賃で12か月埋まった場合の家賃は次のとおりです。
- 【家賃(月)】約6.2万円(6万1846円)
- 【家賃(年)】約74.2万円
- 【表面利回り】約5.1%(家賃の年額÷実家を売却した場合の価格の目安 約1463.9万円)
表面利回りは、家賃の額面を物件の価格で割ったものです。空室や経費、税は入っていません。
※試算の前提:売却した場合の価格の目安は、総務省「令和7年度 固定資産の価格等の概要調書」の普通住宅地区の個人の宅地の平均(1平方メートルあたり約5.1万円)で敷地200平方メートル(小規模住宅用地の上限)の評価額を、固定資産税の評価が地価公示価格等の7割を目途としていることから0.7で割った額。昭和56年5月31日以前に建てられた古い家屋には価格がつかないものとしています。
2. 実家の賃貸の手取りは?空室・管理費・固定資産税・税を引くと年約40.7万円で、家賃の額面の約55%
実家の賃貸では、家賃が入らない空室の期間があり、管理を任せれば管理費がかかります。持ち主には固定資産税・都市計画税がかかり、家賃から経費を引いた不動産所得には所得税と住民税がかかります。国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき」のとおり、不動産所得は総収入金額から必要経費を引いて求めます。
- 【家賃(年)】約74.2万円
- 【空室(約15.8%)】約11.8万円減って約62.5万円
- 【管理費(入った家賃の5%)】約3.1万円
- 【固定資産税・都市計画税】約8.3万円
- 【不動産所得】約51.0万円
- 【所得税・住民税(約20.2%)】約10.3万円
- 【手取り】年約40.7万円(家賃の額面の約55%)
手取りを売却した場合の価格の目安で割ると約2.8%で、表面利回りの約5.1%のほぼ半分です。さらに、実家を賃貸に出す前に修繕が要るときは、その費用を手取りで取り戻す必要があります。修繕費が約170万円なら、年約40.7万円の手取りで取り戻すのに約4.2年かかります。
※試算の前提:空室は、総務省「令和5年住宅・土地統計調査」の一戸建ての賃貸用の空き家21万2600戸を、民営借家の一戸建て112万9300戸と合わせた数で割った約15.8%。管理費は、国土交通省「令和7年度 不動産管理業に関する実態分析に係る調査検討業務 報告書」で最も多かった区分(月額家賃の4〜5%未満)の上限の5%。
※固定資産税・都市計画税は、総務省「令和7年度 固定資産の価格等の概要調書」の木造家屋の1平方メートルあたりの価格2万2849円(木造家屋全体の平均。築年数の古い家屋では評価額が低くなる場合があります)に、総務省「令和5年住宅・土地統計調査」の一戸建ての1住宅当たり延べ面積126.89平方メートルを掛けた家屋と、上の土地について、固定資産税は標準税率1.4%、都市計画税は上限の0.3%(いずれも住宅用地の特例あり)で計算。
※所得税・住民税は、給与収入があり課税所得が195万円超330万円以下の人(国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」の正社員の平均給与559万円の人を想定)として、所得税10%(復興特別所得税を含め10.21%)と住民税10%。
※減価償却費は家屋の取得価額で変わるため入れていません。修繕費は、その年の必要経費になる場合と、何年かに分けて経費にする場合があるため、税の計算には入れていません。修繕費の約170万円は、国土交通省「令和7年度住宅市場動向調査」のリフォーム住宅のリフォーム資金の平均(三大都市圏)です。