家族旅行の費用を事業の経費にしている個人事業主の話を、耳にすることがあります。ただ、税務調査で経費が否認されたとき、どれくらい追徴されるのかまで知っている人は多くないかもしれません。
富裕層や法人のお客さまの資産運用のご相談を受けていた経験からお伝えすると、家族旅行の経費は、「いくら税金が減るか」より「否認されたらいくら追徴されるか」を先に、早めに確かめておきたいテーマです。ここでは、家族旅行の費用が経費になる範囲を確認します。
そのうえで、仮に毎年100万円の家族旅行を経費にして否認された場合の追徴額を、「うっかり」と「隠蔽・仮装」の2つで試算します。
※税率は国税庁「No.2260 所得税の税率」、加算税と延滞税は「国税通則法」と国税庁「No.9205 延滞税について」によります。
1. 家族旅行の経費は認められる?業務に直接必要だったと区分できる部分だけ
家族旅行の費用は、原則として事業の経費になりません。所得税法では、家事上の費用は必要経費にならず、家事と業務の両方にかかわる「家事関連費」も、経費にできる部分が限られています。
国税庁「No.2210 必要経費の知識」によると、家事関連費のうち経費になるのは、取引の記録などにもとづいて、業務の遂行上直接必要だったことが明らかに区分できる金額に限られます。
所得税法施行令第96条は、経費にできる家事関連費を次の2つに分けています。
- 【白色・青色共通】家事関連費の主たる部分が業務の遂行上必要で、その部分を明らかに区分できる場合の、その部分の経費
- 【青色申告者のみ】取引の記録などにもとづき、業務の遂行上直接必要だったことが明らかにされる部分の経費(不動産所得・事業所得・山林所得)
出張先での仕事の日程や、取引先との打ち合わせの記録などで業務の部分を区分できれば、その部分は経費になり得ます。一方、家族の旅費や観光の費用のように、業務との関係を示せない部分は経費になりません。