5. 格落ちは査定の下がり幅どおり認められる?査定で75万円下がるとされた例でも、認められたのは40万円

格落ちを請求するとき、中古車の査定で示された下がり幅を根拠にすることがあります。ただ、公開されている判決では、査定の額がそのまま認められたわけではありませんでした。

  • 【さいたま地方裁判所 2007年8月】事故後の査定で修復歴による減点が75万円とされたが、査定は修理代を240万円として計算していたと考えられ相当ではないとし、認めたのは40万円(査定の約53%)
  • 【東京簡易裁判所 2008年12月】修理代の30%にあたる23万3000円を請求し、事故による減価額の証明も出したが、認めたのは10万円(請求の約43%)

東京簡易裁判所は、提出された証明は中古車としての価格差を示すもので、根拠や理由が必ずしも明確とはいえないとしています。査定の額は、請求の材料の1つと考えておくのがよさそうです。

6. 格落ちを請求するときの流れは?修理代の明細と査定の資料をそろえ、まとまらなければ無料の相談先へ

格落ちを請求するときは、まず相手の保険会社に、修理代とは別に格落ちも話し合いたいと伝えます。そのうえで、判決で見られていた事情に沿って資料をそろえておくと、話を進めやすくなります。

  • 【車の情報】車検証の初度登録年月、事故の時点の走行距離
  • 【修理の情報】修理の見積書と明細、壊れた場所の写真(骨格部分に及んだかが分かるもの)
  • 【値打ちの情報】事故の前後の査定書や、事故による減価額を示す資料

話し合いがまとまらないときは、無料で相談できる窓口があります。

  • 【日弁連交通事故相談センター】弁護士による電話相談・面接相談が無料。相手と話し合いがつかないときの示談あっせんも、申出の手数料は無料
  • 【交通事故紛争処理センター】自動車事故の損害賠償の紛争解決を、中立公正な立場から無料で手伝う公益財団法人。利用には事前の電話予約が必要
  • 【そんぽADRセンター】損害保険や交通事故の相談と、損害保険会社とのトラブルの紛争解決手続を、原則無料で受け付ける

自分の自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士に頼む費用が補償の対象になることがあるため、契約内容を確かめておくと安心です。また、民法724条では、不法行為による損害賠償の請求権は、損害と加害者を知った時から3年間行使しないと時効によって消滅するとされています(人の生命・身体の損害は724条の2で5年間)。

7. 検証:格落ちは「修理代に何%」より「売るときに何が残るか」で見る

3件の割合を並べると、0%から約38.8%まで開きがあります。修理代約41.7万円に当てはめても、0円から約16.2万円です。1つの割合を当てはめて「いくらもらえる」と考えるより、判決が見ていた事情に自分の車を照らすほうが、見通しを立てやすくなります。

数字の読み方で分けておきたいのは、「修理代」と「格落ち」と「査定の下がり幅」の3つです。修理代は直すためのお金、格落ちは直したあとに残る値打ちの差です。査定の下がり幅は格落ちを考える材料の1つで、そのまま払われる額ではありません。修理代の支払いと格落ちを分けて書面に残しておくと、何がまだ決まっていないかがはっきりします。

さいたま地方裁判所は、将来その車を売ることが見込まれない特別な事情があれば、値打ちが下がっても損害にならないという考え方も示しています。乗りつぶすつもりの車か、数年で買い替えるつもりの車かで、格落ちの意味合いは変わります。

8. まとめ

事故で修理した車の格落ちは、民法709条の損害として争うことができますが、修理代のようにすぐ決まるお金ではありません。公開されている3件の裁判例では、登録からの期間・走行距離・骨格部分の損傷・修理後に残った欠陥などから判断され、修理代の0%から約38.8%まで開きがありました。

請求を考えるときは、車検証・修理の明細・写真・査定の資料をそろえ、話し合いがまとまらなければ、日弁連交通事故相談センターなどの無料の窓口に相談してみてください。

※本記事の割合と試算は、裁判所の裁判例検索で公開されている判決3件と、損害保険料率算出機構の統計にもとづく一定の前提での概算で、格落ちの相場や請求できる額を示すものではありません。実際に認められるかどうかや金額は事故ごとに異なるため、相手の保険会社や弁護士などにご確認ください。

参考資料

下村 美乃莉