事故で傷ついた車は、修理代を相手の保険会社が払ってくれても、事故歴が付いた分だけ査定が下がる「格落ち」が残ることがあります。格落ちも相手に請求できるのか、修理代とは別に払ってもらえるのかと迷う方は多いのではないでしょうか。

ここでは、民法と裁判所が公開している裁判例をもとに、格落ちが損害として扱われる仕組みと、認められるかどうかの分かれ目を整理します。

あわせて、裁判例で認められた格落ちが修理代の何%だったかを、車両保険の統計から置いた修理代に当てはめて試算します。

※修理代約41.7万円は、損害保険料率算出機構「自動車保険の概況 2025年度版」第26表の、車両保険で「他車・物・人との衝突、接触、転覆、墜落」に支払われた保険金(2024年度)の1件あたり平均をもとにしています。

1. 格落ちとは?修理しても事故歴で査定が下がる分で、修理代とは別の損害として争われる

e-Gov法令検索「民法」の709条は、故意または過失で他人の権利を侵害した人は、それによって生じた損害を賠償する責任を負うと定めています。追突などで車が壊れたとき、修理代を相手に請求できるのはこの規定によるものです。

格落ちは、修理を終えたあとの車の値打ちが、事故の前より下がった分を指します。裁判では「評価損」と呼ばれ、裁判所の裁判例検索で公開されている東京簡易裁判所の判決(2008年12月)は、次の2つに分けて説明しています。

  • 【技術上の格落ち】修理をしても、外観や機能に元に戻せない欠陥が残る場合
  • 【取引上の格落ち】外観や機能に問題はないが、事故歴があるという理由で車の値打ちが下がる場合

同じ判決は、どちらの場合も損害として賠償すべきと考えられるとし、まだ車を売っていなくても、将来売る可能性があれば損害を受けていると解するのが相当だと述べています。

2. 格落ちは相手の保険会社がすぐ認める?修理代は払われても、格落ちは話し合いがまとまらず裁判になった例がある

修理代は、見積もりや修理の明細で金額が決まるため、話し合いで決まりやすいお金です。一方の格落ちは、「将来いくらで売れるか」という見込みの話で、金額の決め方が1つではありません。

裁判所の裁判例検索で公開されている判決を見ると、修理代と格落ちの扱いが分かれた例が並びます。

  • 【東京簡易裁判所 2008年12月】修理代と代車費用は相手の保険会社と協定していたが、格落ちが解決していないとして、支払いが止まっていた
  • 【さいたま地方裁判所 2007年8月】修理代と代車料は相手の保険会社から支払い済みで、格落ちだけが控訴審まで争われた

相手の保険会社が格落ちの支払いに慎重なのは、どの事故でも認められる損害ではないためです。次の章で、裁判で何が見られたかを整理します。