「お金を貸して」と見知らぬ人に頼まれ、少しならと渡したものの、あとから詐欺だったのではと気になる人もいるかもしれません。金額が小さくても、返すつもりがないのに「返す」とだましてお金を受け取れば詐欺罪にあたりえます。また、SNSの募金をめぐるトラブルも発生していますが、これらは相談先が異なります。

詐欺に関するニュースや情報は、「罪になるのか」「被害はどのくらい起きているのか」「どこに相談すればいいのか」が混ざって語られやすく、いざ自分が巻き込まれたときにどう動けばいいか迷ってしまいがちです。ここでは、それぞれの要素を分けて整理します。

刑法の条文と、警察庁・国民生活センターの公表資料をもとに、寸借詐欺の典型的な手口と断り方、渡してしまったあとの動き方、SNSの募金やクラウドファンディングで困ったときの相談先をまとめます。

※10年以下の拘禁刑は、刑法246条(詐欺)の法定刑です(e-Gov法令検索)。特殊詐欺の件数は、警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年6月5日)をもとにしています。

1. 「お金を貸して」は詐欺になる?返すつもりがないのに「返す」とだまして受け取れば、少額でも詐欺罪にあたりうる

「お金を貸して」と頼んで受け取る行為が詐欺になるかは、金額の大小ではなく、だましてお金を受け取ったかどうかで決まります。刑法246条1項は「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する」と定めています(e-Gov法令検索)。

  • 【金額】条文に金額の下限はない。数百円でも、だまして受け取れば対象になりうる
  • 【だますこと】はじめから返すつもりがないのに「必ず返す」と言う、困っている事情をつくり話で伝える、などが考えられる
  • 【未遂】刑法250条で、詐欺の未遂も罰するとされている(お金を受け取る前でも対象になりうる)
  • 【刑罰】10年以下の拘禁刑。2025年6月1日から、懲役と禁錮は拘禁刑にまとめられた

ただし、借りた時点では本当に返すつもりがあり、あとで返せなくなっただけなら、詐欺ではなく貸したお金を返してもらう問題(民事)として扱われることがあります。どちらにあたるかは、捜査機関や裁判所が事情をもとに判断します。

「詐欺かどうか」を自分で見極めてから相談する必要はありません。だまされたかもしれないと感じた時点で、相談先に話してよい問題です。

2. 「お金を貸して」と声をかける寸借詐欺の典型的な手口は?困った事情と「必ず返す」の約束を組み合わせ、少額を何度も受け取る

「お金を貸して」と少額を借りるふりをしてだまし取る手口は、寸借詐欺と呼ばれます。よく見られる形は、次のような組み立てです。

  • 【事情】交通費が足りない、急に体調を崩した家族のもとへ行きたい、など「今すぐ少しだけ」が必要な理由を示す
  • 【約束】名前や連絡先を書いた紙を渡し、「あとで振り込む」「必ず返す」と言う
  • 【金額】断られにくい数百円〜数千円にとどめる。相手を変えて、同じ話を何度も繰り返すことがある
  • 【場所】人の多い場所や、相手が急いでいる場面を選び、考える時間を与えない

少額で、しかも感謝されることが多いため、渡した側は「困っている人を助けた」と受け止めやすく、被害に気づきにくい面があります。渡した人の善意につけ込む手口なので、だまされたことを恥ずかしく思う必要はありません。

3. 「お金を貸して」と言われたら?その場で渡さず窓口を案内し、渡したあとは警察相談専用電話「#9110」か最寄りの警察署へ

「お金を貸して」と頼まれたときは、自分のお金を渡す前に、公的な窓口や施設の係員につなぐのが落ち着いた対応です。

  • 【断り方】「お貸しできませんが、交番(または施設の係員)に相談してみてください」と伝える。言い争わず、その場を離れてよい
  • 【お金の工面】本当に困っている人なら、交番や施設の窓口で相談できる。その場で個人がお金を出さなくてよい
  • 【身の危険】しつこくつきまとわれる、脅されるなど、いま危険を感じるときは110番

すでに渡してしまったときは、記憶が新しいうちに、日時・場所・相手の特徴・言われた内容・渡した金額・受け取ったメモをそのまま残しておきます。そのうえで、警察相談専用電話「#9110」(最寄りの警察の相談窓口につながる全国共通の番号)か、最寄りの警察署に相談します。

同じ人が同じ話で何人にも声をかけていることがあるため、少額でも伝えておくことで、ほかの人の被害を防ぐ手がかりになりえます。