親が認知症になったとき、親の財産を家族が代わりに引き出したり管理したりできるのかは、多くの人が気にかけることです。認知症で判断能力が下がった親の財産を動かす手段として、成年後見という制度があります。
ここでは、成年後見の申立ての件数と、成年後見人に家族と専門職のどちらが選ばれているかを、最高裁判所の統計で確かめます。あわせて、2026年6月に公布された改正法で何が変わるかも整理します。
そのうえで、家庭裁判所が示す報酬のめやすをもとに、管理する財産の額別に、成年後見人の報酬が80歳から平均余命まで続いた場合の総額を試算します。
※期間の約12年は、厚生労働省「令和7年簡易生命表」の80歳女性の平均余命(11.95年)をもとにしています。財産額の区分は、総務省「家計調査(貯蓄・負債編)2025年」の二人以上の世帯のうち世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄(貯蓄保有世帯の中央値1777万円、平均2564万円)と照らし合わせています。
1. 認知症の親の財産は家族でも動かせない?本人に判断能力がなければ、口座の解約などは原則としてできない
民法3条の2は、意思表示をしたときに意思能力がなかった場合、その法律行為は無効になると定めています。認知症が進んで判断能力が下がると、本人が預金の解約や不動産の売却などの契約をすることが難しくなります。
家族であっても、本人から代わりに手続きをする権限(代理権)を与えられていなければ、本人の財産を本人の代わりに動かすことはできません。この代理権を家庭裁判所が与える仕組みが、成年後見(法定後見)です。
最高裁判所「成年後見関係事件の概況-令和7年1月~12月-」によると、申立ての主な動機(複数回答)は次のとおりです。
- 【預貯金等の管理・解約】3万9871件(93.4%)
- 【身上保護】3万1655件(74.2%)
- 【介護保険契約】1万9502件(45.7%)
- 【不動産の処分】1万5502件(36.3%)
- 【相続手続】1万909件(25.6%)
2025年の申立ては合計4万3159件で、前年より約3.2%増えています。
2. 認知症の親の財産を管理する成年後見人に家族はなれる?親族が選ばれたのは約16.4%で、8割超は専門職など
成年後見人を誰にするかは、家庭裁判所が決めます。同じ概況によると、2025年に成年後見人等に選ばれたのは次のとおりです。
- 【親族】7014件(約16.4%)
- 【親族以外】3万5718件(約83.6%)
- 【親族以外のうち司法書士】1万1966件
- 【親族以外のうち弁護士】8903件
- 【親族以外のうち社会福祉士】7280件
- 【親族以外のうち市民後見人】390件
また、申立書に親族を成年後見人等の候補者として書いた事件の割合は約19.7%でした。親族を候補者として申し立てる事件も、全体の約2割にとどまっています。