4. 贈与税とは別に、退職金そのものに税金はかかる?平均1896万円・勤続38年なら退職所得控除の範囲内で0円、1300万円を渡すと親の手元は約596万円
子どもに渡す前に、親が受け取る退職金そのものの税金も確かめておきます。国税庁「No.1420 退職手当等を受けたとき(退職所得)」によると、退職金は、勤続年数に応じた退職所得控除を差し引き、残りの2分の1が退職所得として課税されます。
- 【退職金】1896万円(大学・大学院卒、管理・事務・技術職の定年退職者の退職給付額〈一時金と年金の合計〉の平均を、すべて一時金で受け取ったとみなした額)
- 【勤続年数】38年(22歳から60歳まで)
- 【退職所得控除】800万円+70万円×(38年−20年)=2060万円
- 【退職金にかかる所得税・住民税】控除が退職金を上回るため0円
- 【1300万円を子どもに一括で渡したあと】親の手元に残る退職金は約596万円。子どもは贈与税約286万円を納め、手元に残るのは約1014万円
退職金に税金がかからなくても、子どもに渡した時点で、受け取った子どもに贈与税がかかります。一括で渡すと、親の手元に残るのは退職金の約3割です。
※試算の前提:退職金は一時金で受け取り、「退職所得の受給に関する申告書」を勤め先に出している場合。勤続年数に1年未満の端数はない場合。退職金の平均は厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」の、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者の退職給付額(一時金と年金の合計)です。贈与税は1章と同じ前提です。
5. 【検証】試算から見えること:贈与税は「1年にいくら受け取ったか」で決まる
試算から見えるのは、贈与税の額を左右するのが、渡す総額よりも「1年にいくら受け取ったか」だという点です。同じ1300万円でも、1年で受け取れば約286万円、3年に分ければ約115万円、12年に分ければ0円になります。
一括の約286万円は、渡した額の約22%にあたります。税率の区分が40%まで上がるためで、2年に分けると区分が20%に下がり、合計は約156万円とほぼ半分になります。
相続時精算課税を使えば、一括でも贈与税は0円です。ただし、贈与税を先に払わない代わりに、贈与した額は相続のときに加算されます。贈与税の負担を、相続税の計算に持ち越す仕組みといえます。
どの渡し方を選ぶかは、渡す時期をどれだけ急ぐか、親の財産の合計が相続税の基礎控除を超えそうかによって変わります。退職金を受け取った時点で、親自身の老後資金を差し引いた残りがいくらかを先に確かめておくことが出発点になります。
6. まとめ
退職金などのまとまったお金を子どもに渡す場合、1300万円を一括で渡すと贈与税は約286万円です。年110万円以内に分ければ0円ですが12年かかり、3年に分けても約115万円が残ります。相続時精算課税なら、60歳以上の親から18歳以上の子への贈与で、期限内に申告すれば0円です。
贈与税がかからない渡し方でも、相続のときに贈与した額が加算されることがあります。贈与税と相続税をあわせて考え、実際に手続きをする前には、税務署や税理士などの専門家に確かめておくと安心です。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の贈与税・相続税は、贈与の時期や財産の種類、ほかの贈与の有無などで変わります。個別の扱いは、税務署や税理士などの専門家にご確認ください。
参考資料
- 国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
- 国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」
- 国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」質疑応答
- 国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
- 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
- 国税庁「No.1420 退職手当等を受けたとき(退職所得)」
- 国税庁「No.4152 相続税の計算」
- 国税庁「国税庁統計年報(令和6年度)贈与税」
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」
安達 さやか