5. 【検証】試算から見えること:浸水の自己負担は「深さ」と「家財」で大きく変わる
試算では、床下浸水の約131万円に対し、床上50cm未満の浸水では約686万円と、自己負担は5倍以上になりました。床上に水が来るかどうかが、被害額の大きな分かれ目です。
もう一つ目を引くのは家財です。床上50~99cmの浸水では、家財の被害が建物の被害を上回りました。建物だけに火災保険を掛けている場合、水災補償があっても家財の被害は補償されません。
損害保険料率算出機構によると、2024年度の火災保険の水災補償付帯率は全国で61.8%で、減り続けています。裏返すと、約4割の契約は水災補償が付いていません。
水災補償を付けるかどうかは、立地だけで決まるものではありません。高台や高層階など浸水しにくい住まいか、土砂災害の想定がないか、浸水したときに数百万円を貯蓄から出せるかによっても、判断は分かれます。
「川から遠いかどうか」に加えて、ハザードマップで見た浸水の深さと、建物・家財それぞれの補償を並べてみると、自宅に合う契約の形が見えやすくなります。
6. まとめ
火災保険の水災補償は、川の氾濫だけでなく、大雨で下水があふれる内水氾濫や土砂崩れも対象です。浸水した建物の約56%は内水氾濫によるもので、川から遠いことだけで浸水のリスクが低いとはいえません。
支払いの条件や支払われる額、保険料は保険会社と契約によって違います。見直すときは、ハザードマップで自宅の想定を確かめたうえで、契約している保険会社や代理店に、支払い条件と保険料の差を確認しておきたいところです。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の被害額は建物の構造・築年数・浸水した時間などで、支払われる保険金は契約内容で変わります。補償の内容は、契約している保険会社や代理店でご確認ください。
参考資料
- 国土交通省「治水経済調査マニュアル(案)令和2年4月改定の概要」
- 国土交通省「近年の全国における水害被害(平成26年~令和5年)」
- 損害保険料率算出機構「住宅の水災被害に備えるために」
- 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率 改定のご案内」(2023年6月)
- 損害保険料率算出機構「水災等地検索」
- 損害保険料率算出機構「『火災保険 水災補償付帯率』(2024年度)をウェブサイトに掲載」
- 日本損害保険協会「火災保険 標準例」
- 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
下村 美乃莉