4. 残業代の切り捨てに気づいたら?まず勤怠の記録を残し、会社の担当部署か労働基準監督署に相談する

厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、会社が労働者の始業・終業の時刻を確認し、記録するよう求めています。原則は、会社が自ら現認するか、タイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録など客観的な記録で確かめる方法です。

切り捨てが気になるときは、実際の終業時刻が分かる記録を手元にも残しておくと、後から確かめやすくなります。

  • 【勤怠の記録】打刻の時刻、パソコンのログオン・ログオフの時刻、業務メールの送信時刻
  • 【給与明細】残業時間と残業代の欄、1時間あたりの額
  • 【就業規則・賃金規程】残業時間の数え方と端数処理の決まり

相談先は、まず勤め先の人事・総務などの担当部署です。社外では、各地の労働基準監督署や、都道府県労働局・労働基準監督署などにある総合労働相談コーナーで相談できます。総合労働相談コーナーは無料で、予約は要りません。

5. 【検証】試算から見えること:残業代の切り捨ては、日ごとと月の合計で積み重なり方が違う

試算で比べたいのは、毎日15分単位で切り捨てた場合と、通達で認められた1か月合計の端数処理の場合の差です。

1か月合計の端数処理では、切り捨てられるのは最大でも29分で、平均的な月給なら約1300円です。30分以上の端数は1時間に切り上げられるため、月によっては働いた時間より多く数えられます。

一方、毎日15分単位で切り捨てると、端数が平均7分でも月約145分になり、1か月合計の端数処理で切り捨てられる最大29分の約5倍です。しかも切り上げがないため、差は毎月同じ向きに積み重なります。

1日1分の切り捨てでも、3年で約3万2700円になります。1日あたりの分数は小さく見えても、月の所定労働日数と3年という期間を掛けると、金額は一桁上がります。

ただし、実際の差額は、残業が法定労働時間を超えているか、割増賃金の計算から除く手当がいくらあるか、勤め先の端数処理の決まりがどうなっているかで変わります。まず給与明細と就業規則で、残業時間の数え方を確かめることが出発点になります。

6. まとめ

残業代の切り捨てで認められているのは、1か月の合計に対する30分未満の切り捨てなど、通達で示された範囲に限られます。毎日15分単位で切り捨てると、平均的な月給で月約6400円、3年で約22.9万円の差になる試算です。

残業代は、2020年4月以降に支払日が来た分なら3年さかのぼって請求できます。実際の終業時刻が分かる記録を残し、気になるときは勤め先の担当部署や労働基準監督署、総合労働相談コーナーに相談してみてください。

※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。残業代の計算方法や端数処理の扱い、請求できる額は、勤め先の就業規則や賃金規程、働き方によって異なります。実際の扱いは、勤め先の担当部署や労働基準監督署でご確認ください。

参考資料

齊藤 慧