4. 早期退職で厚生年金の加入期間が7年短くなる
退職金の手取りの差は約113万円でしたが、辞めたあとの7年間には、給与のほかにも変わるものがあります。そのひとつが、老後に受け取る厚生年金です。
4.1 報酬比例部分は年約26万7000円少なくなる計算
日本年金機構の「報酬比例部分」の説明では、2003年4月以後の期間は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」で計算します。53歳から60歳までの84か月を、年収700万円を12で割った約58万円を平均標準報酬額として計算すると、年約26万7000円です。
早期退職して厚生年金に入らなければ、65歳から受け取る老齢厚生年金はこの分だけ少なくなります。再就職先で厚生年金に入れば、その期間の分は年金額に加わります。
4.2 60歳までは国民年金の保険料を納める
会社を辞めて厚生年金に入らない期間は、60歳になるまで国民年金の第1号被保険者になります。日本年金機構によると、2026年度の国民年金保険料は月1万7920円で、1年分では21万5040円です。
相談者の配偶者が60歳未満で第3号被保険者になっている場合は、配偶者も第1号被保険者に切り替わり、保険料を納めることになります。家族の分もあわせて、年金事務所で確かめておきたいところです。
5. 退職後の健康保険は任意継続か国民健康保険を選ぶ
再就職先が決まっていない場合、退職後の健康保険は、主に会社の健康保険の任意継続か、国民健康保険のどちらかから選ぶことになります。保険料を比べてから決めるのが基本です。
5.1 任意継続は最長2年で保険料はおおむね2倍
協会けんぽの「任意継続」の案内では、退職日までに継続して2か月以上加入していれば、退職日の翌日から20日以内の申出で、最長2年間加入できます。保険料は会社負担がなくなるため、退職前のおおむね2倍で、上限があります。
5.2 国民健康保険料は前年の所得で決まる
筆者が元公務員として国民健康保険を担当していた頃、退職した年の保険料の通知を見て「収入がないのにこんなに高いのか」と驚く相談を受けることがありました。国民健康保険料は前年の所得をもとに計算するため、退職した年や翌年度は、在職中の給与で計算されるのです。
ただし、厚生労働省によると、雇用保険の特定受給資格者と特定理由離職者は、前年の給与所得を100分の30として保険料を計算する軽減があり、期間は失業時から翌年度末までです。ここでも、離職の理由が保険料の額を左右します。
6. 【確認したいこと】退職を決める前に3つの窓口で聞いておく
早期退職が得かどうかは、退職金の手取りだけでは決まりません。辞めたあとの収入の見通しと、雇用保険・年金・健康保険の扱いを並べて考えることになります。
- 会社の人事:退職金の内訳(割増の額)、早期退職の募集が恒常的な制度か人員整理のための募集か
- ハローワーク:自分の離職が特定受給資格者・特定理由離職者に当たるか、基本手当の日数
- 年金事務所:60歳まで厚生年金に入らない場合の年金見込額、国民年金への切り替え
国民健康保険料の軽減が受けられるかや、保険料の見込みは、住んでいる市区町村の国民健康保険の窓口で確かめられます。
7. まとめにかえて
相談者の試算では、早期退職の退職金2600万円の手取りは2486万9848円で、定年まで勤めた場合の2374万3215円より約113万円多くなりました。ただし、60歳までの7年分の給与と厚生年金の加入期間は失います。
雇用保険の基本手当は、同じ早期退職でも退職勧奨なら330日、それ以外なら150日です。退職金の額だけで決めず、会社の人事・ハローワーク・年金事務所で自分の場合を確かめてから判断してみてください。
参考資料
- 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
- 日本年金機構「報酬比例部分」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「任意継続」
- 厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
太田 彩子