4. 小規模企業共済の共済金は一括なら退職所得、分割なら公的年金等の雑所得

共済金は、受け取り方によって税金の計算が変わります。会社員の退職金と同じ扱いになるのは、一括で受け取ったときです。

4.1 分割で受け取れるのは60歳以上・300万円以上

受け取り方は、一括・分割・一括と分割の併用の3通りです。分割や併用を選べるのは、共済金AかBで、請求事由が本人の死亡ではなく、請求事由が生じた日に60歳以上の人に限られます。

金額の条件もあり、分割は共済金が300万円以上、併用は330万円以上(一括分30万円以上かつ分割分300万円以上)が必要です。

税金の扱いは、一括で受け取る共済金と準共済金が退職所得、分割で受け取る分が公的年金等の雑所得です。65歳未満で任意解約して受け取る解約手当金は、一時所得として扱われます。

4.2 月3万円を20年払って廃業した場合の税金

所得税法施行令では、小規模企業共済の共済金を「退職手当等とみなす一時金」に含めています。退職所得控除の勤続年数にあたる期間は、共済金の額の計算のもとになった期間で数えるのです。

たとえば掛金月3万円を20年(240か月)払って廃業した場合、共済金Aの基本共済金は835万9200円です。払った掛金の合計720万円を、115万9200円上回ります。

  • 退職所得控除:800万円(20年分)
  • 退職所得:(835万9200円-800万円)×2分の1=17万9000円(1000円未満切り捨て)
  • 所得税(復興特別所得税を含む):9137円
  • 住民税:1万7900円

付加共済金は含めていない試算です。請求のときに「退職所得申告書」を出しておけば、原則として確定申告はいりません。

同じ年に、会社の役員としての退職金などほかの退職手当等も受け取る場合は、退職所得申告書のB欄以降に記入します。控除額の計算が変わることがあるため、受け取る年が近づいたら税務署で確かめておくと安心です。

5. 2026年分の確定申告から変わる小規模企業共済等掛金控除の手続き

掛金控除証明書の扱いにも、新しい選択肢が加わります。個人事業主が確定申告をするときに関係する内容です。

5.1 2027年1月以降の申告は明細書で証明書に代えられる

国税庁によると、2026年分以後の所得税の確定申告書を2027年1月1日以後に提出するときは、掛金の証明書の添付や提示に代えて、一定の事項を記載した明細書を確定申告書に添付できます。

証明書の電子交付もあり、中小機構の「小規模企業共済オンライン手続きポータル」に利用者登録をすると、紙の証明書の発送後に電子データが届きます。e-Taxで申告する人は、マイナポータル連携で自動入力も使えます。

5.2 控除額の欄がアスタリスクで印字される場合

証明書の「控除額」欄には、払い込み済みの額に12月までの払い込み予定額を足し、前納減額金を引いた額が記載されます。ただし、掛金の未納や年をまたぐ前納があると、金額の代わりにアスタリスク(*)が印字されます。

その場合は、年内に払い込んだ掛金の総額を自分で計算して申告します。10月から12月の払い込みは、記帳された通帳の写しを添えるよう中小機構は求めています。

6. 小規模企業共済の掛金を払っても国民健康保険料は下がらない

個人事業主の多くは国民健康保険に加入しています。掛金の所得控除は所得税と住民税を軽くしますが、国民健康保険料の計算には入りません。

6.1 所得割は基礎控除だけを差し引いた所得で計算する

国民健康保険法施行令では、保険料の所得割を「基礎控除後の総所得金額等」をもとに計算すると定めています。社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除といった、ほかの所得控除は差し引かれません。

料率は市区町村ごとに異なりますが、計算のもとになる所得の考え方は同じです。

6.2 住民税と保険料で差し引く控除が違う

筆者が元公務員として国民健康保険を担当していた頃も、保険料の計算根拠を尋ねる相談では、住民税と保険料で差し引く控除が違うことを説明する場面がありました。保険料の所得割は、住民税と同じ控除を差し引いて計算するわけではないのです。

掛金で家計がどれだけ楽になるかを見込むときは、所得税と住民税の分だけで考えておくと、あとで想定とずれにくくなります。

7. まとめにかえて

小規模企業共済は、自営業や小さな会社の経営者が自分で退職金を用意するための国の制度です。掛金は全額が所得控除になり、廃業時などに一括で受け取る共済金は退職所得として扱われます。

一方で、20年に満たない任意解約では払った掛金を下回り、掛金を払っても国民健康保険料は下がりません。メリットとデメリットの両方を並べたうえで、無理なく続けられる掛金を選ぶことが大切です。

加入資格や受け取れる額は中小機構の共済相談室で、共済金にかかる税金は税務署で確かめられます。国民健康保険料の計算は、お住まいの市区町村の窓口に相談してみてください。

参考資料

太田 彩子