3. 【人事院勧告】60歳から64歳の再雇用者の給与は課長補佐級で月42.8万円
2026年8月7日の人事院勧告では、国家公務員の再任用職員と民間企業の再雇用者の給与を、役職の段階別に並べた表が示されました。定年後も同じ会社で働くときの給与の目安として、民間の数字を見ておきましょう。
3.1 民間の60歳から64歳の再雇用者の平均給与月額
人事院の職種別民間給与実態調査による、60歳から64歳までのフルタイム勤務の再雇用者の平均給与月額は次のとおりです。
- 課長補佐級:42.8万円(公務の再任用職員は39.1万円)
- 係長級:33.4万円(同30.8万円)
- 主任級以下:28.8万円(同26.0万円)
民間の数字は2024年から2026年の各年4月の3年平均で、公務の数字は2026年3月時点です。時点がそろっていないので、差をそのまま官民の給与水準の差と読まないよう注意が必要です。
3.2 国家公務員の退職手当は60歳以後も「定年退職」として計算
国家公務員の定年は2023年度から2年に1歳ずつ引き上げられ、2025年度と2026年度は62歳です。2027年度に63歳となり、2031年度に65歳になります。
61歳に達する年度からは、基本給にあたる俸給月額が7割の水準になります。そのうえで退職手当は、60歳以後に定年前に退職した人も、当分の間は「定年退職」として算定されることになっています。
俸給月額が7割に下がっても、下がる前の最も高い俸給月額を考えて退職手当を計算する「ピーク時特例」もあります。民間企業で60歳以降に給与が下がる場合、退職金の計算がどうなるかは会社ごとの退職金規程しだいです。
4. 定年の延長前に入社した人がもとの定年で受け取る退職金の扱い
定年を延ばす会社の中には、延長前に入社した従業員に、もとの定年で退職金を支払う例もあります。国税庁の質疑応答事例で、このときの税金の扱いを確認します。
4.1 所得税基本通達30-2(5)で退職所得になる
労働協約などを改めて定年を延長した場合に、延長前の定年に達した従業員へ、それまでの勤続期間に対する退職手当として支払うものは、相当の理由があれば退職所得として扱われます。根拠は所得税基本通達30-2(5)です。
国税庁の質疑応答事例(2025年8月1日現在の法令による)では、定年を60歳から65歳に延ばした会社が、延長前に入社した希望者に60歳で支払う一時金を取り上げています。会社の退職一時金と確定給付企業年金からの一時金のどちらも、退職所得として扱って差し支えないと回答されています。
もとの定年で受け取るか、延長後の定年まで待つかによって、控除を計算する勤続年数が変わり、税額も変わりえます。どちらかを選べる会社では、受け取る前に人事部門と税務署で確かめておくと安心です。
4.2 就業規則の退職金規程で確かめたい3つのこと
労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する会社は就業規則を作り、退職手当の定めをする場合は、適用される範囲や計算の方法、支払いの時期を記載することになっています。定年の延長を控えている人は、次の3つを就業規則で確認しておきましょう。
- 退職金を支払う時期(もとの定年か、延長後の定年か)
- 60歳以降に働いた期間が、退職金の計算に入るかどうか
- 60歳以降に給与が下がった場合、退職金の計算の基礎になる給与をどう扱うか
5. まとめにかえて
65歳以上を定年とする企業は34.9%となり、60歳定年の企業は62.2%まで減りました。定年が延びて勤続年数が長くなると退職所得控除が大きくなり、22歳で入社した人なら60歳と65歳で350万円の差があります。
ただし、退職金の額や支払いの時期、60歳以降の給与の扱いは会社ごとに決まります。退職金規程を確かめたうえで、税金のことは税務署、受け取り方の選び方は勤め先の人事部門に相談しながら、退職後の資金計画を見直してみてください。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果を公表します」
- 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
- 国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
- 江東区「退職所得に対する住民税」
- 国税庁「定年を延長した場合に一部の従業員に対して旧定年時に確定給付企業年金から支払われる一時金の所得区分について」
- 人事院「令和8年 人事院勧告」
- 人事院給与局・内閣官房内閣人事局「国家公務員の60歳以降の働き方について(概要)」
- e-Gov法令検索「労働基準法」
太田 彩子