年末年始が近づくと、遠方に住む親族の体調や、帰省の予定が気になる時期です。生活保護を受けている人にとって、急に遠くへ出向く交通費は家計の大きな負担になります。
厚生労働省の「2026(令和8)年4月1日施行 生活保護実施要領等」には、親族が危篤になったときや葬儀に参加するときなど、生活扶助の「移送費」として交通費を認める場合が定められています。
この記事では、生活扶助の移送費が認められる場面と、対象になる親族の範囲を確認します。
1. 生活保護を受けている世帯は令和8年7月分で164万4102世帯、単身の高齢者世帯は84万4423世帯
はじめに、厚生労働省の被保護者調査で、生活保護を受けている世帯の状況を見ておきます。
1.1 生活保護を受けている人は196万9655人
厚生労働省「被保護者調査(令和8年7月分概数)」によると、生活保護を受けている人は196万9655人、世帯数は164万4102世帯でした。
1.2 単身の高齢者世帯が全体の51.6%
保護を停止している世帯を除いた163万5284世帯を世帯類型別に見ると、次のとおりです。
- 高齢者世帯:90万3116世帯(55.2%)
- 障害者・傷病者世帯:41万8114世帯(25.6%)
- その他の世帯:25万9162世帯(15.8%)
- 母子世帯:5万4892世帯(3.4%)
高齢者世帯のうち単身の世帯は84万4423世帯で、全体の51.6%を占めています。
2. 生活保護の保護費は最低生活費と収入の差額、日々の費用は生活扶助でまかなう
移送費を見る前に、生活保護の保護費の決まり方を確認します。
2.1 収入が最低生活費に届かない分が保護費として支給される
生活保護では、世帯の収入と厚生労働大臣が定める基準で計算した最低生活費を比べ、収入が最低生活費に満たない場合に、その差額が保護費として支給されます。
- 3人世帯(33歳、29歳、4歳):東京都区部等16万8020円、地方郡部等15万370円
- 高齢者単身世帯(68歳):東京都区部等7万7980円、地方郡部等6万9950円
- 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):東京都区部等12万5460円、地方郡部等11万1720円
- 母子世帯(30歳、4歳、2歳):東京都区部等20万50円、地方郡部等17万9300円
日常の暮らしにかかる費用は、この毎月の生活扶助でまかなうのが基本です。そのうえで、特定の事情があるときに限り、移送費が別に認められます。
3. 生活扶助の移送費、親族の危篤や葬儀に行くときは3親等以内の血族などが対象
移送費が認められる場面は、局長通知に列挙されています。親族に関わる場面から見ていきます。
3.1 配偶者、3親等以内の血族、2親等以内の姻族の危篤・葬儀
局長通知は、配偶者、3親等以内の血族、2親等以内の姻族が危篤に陥っていて、そのもとへ行く場合や、それらの人の葬儀に参加する場合で、福祉事務所がやむを得ないと認めたときを、移送費の対象に挙げています。
3親等以内の血族には、親や子、兄弟姉妹、祖父母や孫のほか、おじ・おば、おい・めいなどが含まれます。2親等以内の姻族は、配偶者の親や兄弟姉妹などです。
3.2 引き取り手のない親族の遺体や遺骨を引き取るとき
同じ範囲の親族で、ほかに引取人のない遺体や遺骨を引き取りに行く場合、遺骨を納めに行く場合も、福祉事務所がやむを得ないと認めたときは対象です。遺体の運搬費が必要なときは、その実費を認定して差しつかえないとされています。
3.3 移送費は必要最小限度の交通費・宿泊料・飲食物費
移送費の範囲は、必要最小限度の交通費、宿泊料、飲食物費の額です。ほかに経費を出す方法がないときに、乗車船券を交付するなど、なるべく現物給付の方法で行うとされています。
生活保護を受けている人が、親族の危篤や葬儀のために遠方へ出向くときは、配偶者、3親等以内の血族、2親等以内の姻族が対象で、福祉事務所がやむを得ないと認めれば移送費として交通費などが認められます。
急な連絡を受けたときは、出発の前に担当のケースワーカーか福祉事務所に連絡し、行き先と親族の関係を伝えておくと手続きが進めやすくなります。
ここからは、親族の危篤や葬儀のほかに移送費が認められる場面と、付き添いの人の交通費の扱いを見ていきます。