3. 住民税非課税世帯の負担限度額と2026年8月の見直し
所得の低い人には、食費と居住費の負担に上限(負担限度額)があります。上限を超えた分は、特定入所者介護サービス費(補足給付)として介護保険から支給される仕組みです。
3.1 第1段階から第3段階①は室料が増えても負担は変わらない
補足給付の対象は、世帯全員が住民税非課税の人などで、所得と預貯金の額により第1段階から第3段階②に分かれます。多床室の居住費の負担限度額は、第1段階が0円、第2段階と第3段階①が1日430円です。
2025年8月に室料の負担が始まったときも、この負担限度額は変わりませんでした。厚生労働省は、基準費用額を引き上げることで第1段階から第3段階の人は補足給付により負担を増やさないとしていました。
3.2 2026年8月から第3段階②は1日530円に
2026年8月からは、第3段階②の多床室の負担限度額が1日430円から530円に引き上げられました。対象は、特別養護老人ホームの多床室と、室料を負担する介護老人保健施設・介護医療院の多床室です。
30日に直すと、負担は月3000円増えます。室料を負担しない介護老人保健施設・介護医療院の多床室は、第3段階②も430円のままです。
段階を分ける基準は、次のとおりです。いずれも世帯全員が住民税非課税であることが前提で、預貯金等の額にも上限があります。
- 第1段階:生活保護を受けている人(預貯金等の要件なし)、老齢福祉年金を受けている人(預貯金等は単身1000万円以下)
- 第2段階:年金収入額と合計所得金額の合計が82万6500円以下(預貯金等は単身650万円以下)
- 第3段階①:同じく82万6500円超120万円以下(預貯金等は単身550万円以下)
- 第3段階②:同じく120万円超(預貯金等は単身500万円以下)
年金収入額には、遺族年金や障害年金などの非課税の年金も含まれます。負担限度額の適用を受けるには、市区町村に申請して介護保険負担限度額認定証の交付を受ける必要があります。
4. 2027年度の介護報酬改定に向けた室料負担の議論
室料負担の対象をさらに広げるかどうかは、2027年度の介護報酬改定に向けて議論が続いています。分科会の資料から、これまでに出ている意見を確認します。
4.1 財政制度等審議会は対象の拡大を提言
財政制度等審議会は2026年6月26日の建議で、2024年度の改定で室料負担の導入が見送られた介護老人保健施設・介護医療院の類型についても、多床室の室料相当額を基本サービス費から除く見直しを提言しました。介護老人保健施設の平均在所日数が400日を超えていることや、長期入所者の退所が難しい理由として「特養の入所待ちをしている」が38%あることを挙げています。
一方、介護保険部会では、介護老人保健施設は住まいではなく在宅復帰を支える施設であり、室料を求めるのは適切ではないという意見も出ていました。2025年8月に始まったばかりで、財源が厳しいからというだけでは説得力に欠けるという指摘もあります。
4.2 分科会は2026年9月に論点を提示
2026年9月3日の分科会では、在宅との負担の公平性や施設ごとの機能、利用の実態を踏まえ、介護老人保健施設と介護医療院の多床室の室料負担をどう考えるかが論点として示されました。対象を広げるかどうかや時期は、この資料の時点では決まっていません。
2027年度の介護報酬改定そのものについては、上野賢一郎厚生労働大臣が2026年10月20日の記者会見で次のように述べています。
当然、負担の観点も大切ですが、他職種と遜色のない処遇改善の実現を図っていくことが重要と考えています。
出所:厚生労働省「上野大臣会見概要(令和8年10月20日)」
5. まとめにかえて
多床室の居住費の基準費用額は、特別養護老人ホームが1日915円、室料を負担する介護老人保健施設・介護医療院が697円、負担しない施設が437円です。室料の負担は2025年8月から「その他型」「療養型」の介護老人保健施設と「Ⅱ型」の介護医療院で始まり、2027年度の改定に向けて対象を広げるかどうかが議論されています。
住民税非課税世帯などは負担限度額があり、2026年8月からは第3段階②の多床室が1日530円になりました。入所を考えている施設の利用料は重要事項説明書で、負担限度額の段階はお住まいの市区町村の介護保険の担当窓口で確かめられます。
参考資料
- 厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会(第264回)資料5 多床室の室料負担」
- 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1481」
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」
- 厚生労働省「上野大臣会見概要(令和8年10月20日)」
太田 彩子