厚生労働省が2026年10月21日に公表した「令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査」では、1人平均賃金の改定額が月1万3926円、改定率は4.4%でした。給与が上がれば、将来受け取る厚生年金も増えるのか気になるところです。
老後の年金の目安として「月20万円」を思い浮かべる人もいるでしょう。ところが同じ厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金を月20万円以上受け取っている人は、受給権者の18.8%にとどまります。
この記事では、公的年金のしくみと平均月額を確認したうえで、厚生年金で月20万円以上を受け取る人がどのくらいいるのかを見ていきます。
1. 公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て
受給額の話に入る前に、公的年金がどんな組み立てになっているかを見ておきましょう。
国民年金を土台に、会社員や公務員は厚生年金にも加入する1/4
出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」、日本年金機構「国民年金保険料」、厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成
土台にあたる1階部分が国民年金で、「基礎年金」とも呼ばれます。日本に住む20歳以上60歳未満の人は、働き方にかかわらず加入します。
その上に重なる2階部分が厚生年金です。会社員や公務員などが、国民年金とあわせて加入するしくみになっています。
1.1 1階部分:国民年金(基礎年金)
- 加入する人:原則として、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人
- 保険料:収入に関係なく全員が同じ額(※1)
- 受け取る額:480カ月(40年間)すべて納めると満額(※2)
- 被保険者の種別:第1号~第3号(※3)
※1 国民年金保険料(2026年度)は月額1万7920円
※2 老齢基礎年金の満額(2026年度)は月額7万608円。1956年(昭和31年)4月1日以前生まれの人は月額7万408円
※3 第1号被保険者は自営業者・農業者・学生・無職の人など、第2号被保険者は厚生年金に加入している人、第3号被保険者は第2号被保険者に扶養されている配偶者
1.2 2階部分:厚生年金
- 加入する人:会社員や公務員のほか、一定の要件を満たして働くパート・アルバイトの人
- 保険料:給与や賞与の額に応じて決まり、給与から天引きされる(※4)
- 受け取る額:加入していた期間と、その間の収入によって人ごとに変わる
- 被保険者の種別:第1号~第4号(※5)
※4 標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(1回150万円が上限)に保険料率18.3%をかけて計算し、事業主と本人が半分ずつ負担する
※5 第1号は第2号~第4号以外の民間の会社などで働く人、第2号は国家公務員共済組合の組合員、第3号は地方公務員共済組合の組合員、第4号は私立学校教職員共済制度の加入者
国民年金の保険料が一律なのに対し、厚生年金の保険料は収入に比例します。保険料の納め方の違いが、そのまま受け取る額の差になって表れるのです。
2. 厚生年金と国民年金の平均月額
では、いま年金を受け取っている人は、平均でいくらになっているのでしょうか。厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、2024年度末時点の老齢年金の平均月額を確かめます。
※ここでの厚生年金は、民間の会社などで働いていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」で、国民年金(基礎年金)の額を含んだ月額です。
2.1 厚生年金の平均月額
- 男女全体:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
男性と女性では、月5万8554円の差がありました。加入していた期間の長さや、働いていたころの給与の水準の違いが、年金額にも反映されています。
2.2 国民年金の平均月額
- 男女全体:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
同じ2024年度の老齢基礎年金の満額は月6万8000円(1956年(昭和31年)4月1日以前生まれの人は月6万7808円)でした。国民年金の平均5万9310円は、その満額の87%ほどにあたります。
国民年金は保険料が一律なので、男女の差は月4013円にとどまります。満額でも月7万円前後のため、国民年金だけで月20万円の年金収入を得ることは、しくみのうえで見込めません。
月20万円を考えるなら、収入に応じて上乗せされる厚生年金の額がかぎになります。厚生年金を受け取る人のうち、月20万円以上の人はどのくらいいるのでしょうか。
3. 厚生年金を「月20万円以上」受け取る人は18.8%
ここからは、国民年金の額も含めた厚生年金の月額が、1万円ごとにどう分かれているかを見ていきます。
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上:1万9283人
受給権者1608万5696人のうち、月20万円以上は302万7673人でした。割合にすると18.8%で、8割を超える人は月20万円に届いていないことになります。
なお、この集計には、64歳まで報酬比例部分だけを受け取っている人も含まれています。また、国民年金だけを受け取る人は入っていないため、年金を受け取る人全体で見ると、月20万円以上の割合はさらに小さくなると考えられます。
厚生年金の平均月額は15万289円で、月20万円以上を受け取る人は受給権者の18.8%でした。自分がどのあたりに入りそうかは、毎年届く「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」の見込額で確かめられます。
では、厚生年金で月20万円に届くには、どのくらいの給与で何年加入する必要があるのでしょうか。