75歳の誕生日を迎えると、それまでの健康保険や国民健康保険から後期高齢者医療制度へ自動的に切り替わります。誕生月の医療費は2つの保険にまたがるため、高額療養費の上限額がどうなるのか分かりにくいと感じる人もいるでしょう。
令和8年8月診療分から70歳以上の高額療養費の上限額が見直され、一般区分の外来(個人ごと)の上限は月1万8000円から2万2000円に上がりました。厚生労働省の資料では、令和9年8月診療分からは一般区分が2万8000円、住民税非課税が1万3000円へさらに見直される予定とされています。一方で、75歳の誕生月に限っては、切り替え前と切り替え後の保険でそれぞれの上限額が本来の2分の1になる特例があります。
本記事では、誕生月の特例のしくみと半額になったときの金額、対象外になるケースを順に見ていきましょう。
1. そもそも75歳の誕生月は、なぜ保険が2つにまたがる?
後期高齢者医療制度への加入日は、75歳の誕生日当日です。
たとえば10月15日生まれの人であれば、10月1日〜14日はそれまでの保険(会社の健康保険や国民健康保険など)、10月15日以降は後期高齢者医療制度の加入者になります。
高額療養費は保険ごと・月ごとに計算するしくみです。
そのため特例がなければ、誕生月は切り替え前の保険と後期高齢者医療制度のそれぞれで上限額まで自己負担することになり、ひと月の負担が通常の月より重くなるおそれがあります。この負担の重なりを避けるために設けられているのが、誕生月の上限額をそれぞれ2分の1にする特例です。
2. 令和8年8月からの上限額と、誕生月に半額になるといくら?
各地の後期高齢者医療広域連合が案内している、令和8年8月診療分からの上限額(月額)を整理すると次のようになります。
誕生月の特例が適用されると、本人の上限額は切り替え前・切り替え後の保険でそれぞれ2分の1です。
2.1 一般区分(窓口負担1割・2割)の上限額
- 外来(個人ごと):通常月2万2000円→誕生月は1万1000円(令和8年7月診療分までは1万8000円)
- 外来+入院(世帯):通常月6万1500円→誕生月は3万750円(令和8年7月診療分までは5万7600円)
2.2 住民税非課税等の区分の上限額(後期高齢者医療制度)
- 区分Ⅱ:外来(個人ごと)月1万1000円→誕生月は5500円、外来+入院月2万5700円→誕生月は1万2850円
- 区分Ⅰ:外来(個人ごと)月8000円→誕生月は4000円、外来+入院月1万5700円→誕生月は7850円
現役並み所得の区分(窓口負担3割)は、令和8年8月診療分から「27万300円+(医療費-90万1000円)×1%」(現役並み所得Ⅲ)のように、医療費に応じた計算式で上限が決まります。
誕生月は、現役並み所得の区分も限度額が2分の1になります。具体的な額は、切り替え前の保険での区分によって異なる場合があるため、加入先に確認してください。
2.3 15日生まれの人が誕生月に入院したら、負担はいくら?
一般区分の人が10月15日に75歳になり、10月の前半と後半をまたいで入院したケースで考えてみましょう。
特例がなければ、切り替え前の保険で6万1500円、後期高齢者医療制度でも6万1500円が上限となり、最大で12万3000円の負担になり得ます。広域連合の案内に沿って、それぞれの上限が2分の1になると考えると、3万750円と3万750円を合わせた6万1500円です。結果として、通常の月とおおむね同じ水準に抑えられます。ただし、世帯での扱いは案内によって表現が異なるため、実際の額は加入先に確認してください。
2.4 1日生まれの人はなぜ対象外?
特例の対象は、月の途中で75歳になり後期高齢者医療制度に加入した人です。
1日生まれの人は誕生月の初日から後期高齢者医療制度の加入者になるため、その月に保険がまたがることはありません。誕生月であっても上限額は半額にならず、通常どおりの額が適用される点に注意しましょう。
75歳の誕生月は、それまでの保険と後期高齢者医療制度の両方で、高額療養費の上限額が2分の1になります。
令和8年8月診療分からの一般区分なら、外来+入院の上限は2つの保険を合わせて6万1500円となり、通常の1か月分と同じ水準に収まる計算です。
ただし、1日生まれの人はこの特例の対象外です。誕生月に入院や手術の予定がある人は、自分の誕生日と加入している保険をあらためて確かめておきましょう。
次のページでは、誕生月の特例で見落としやすいポイントと、令和8年8月から始まった年間上限について解説します。