生活保護の申請を考えたとき、長く掛けてきた生命保険や子どもの学資保険をどうすればよいか迷う人もいるでしょう。申請すると、預貯金や不動産と並んで保険も資産として調べられます。
厚生労働省の「2026(令和8)年4月1日施行 生活保護実施要領等」では、保険の解約返戻金は資産として活用させるのが原則とされています。ただし、返戻金が少額で保険料が地域の一般世帯と均衡を失しない場合など、解約しないまま保護を受けられる条件も示されています。
この記事では、生活保護を受けている世帯の内訳を確認したうえで、生命保険と学資保険の解約返戻金がどう扱われるのかを見ていきます。
※生活保護法第1条は、国が生活に困っているすべての国民に、困っている程度に応じた保護を行い、最低限度の生活を保障して自立を助けることを、この制度の目的としています。病気やけが、障害、高齢、失業、介護や子育てなど、保護を受けるまでの事情は一人ひとり違います。本記事は、制度を必要とする方が安心して利用できるよう、制度の内容等をお伝えするものです。
1. 生活保護を受けている世帯は令和8年7月分で164万4102世帯、高齢者世帯が55.2%
まず、生活保護を受けている世帯の数と世帯類型を、厚生労働省「被保護者調査(令和8年7月分概数)」で確認します。
1.1 生活保護の世帯類型別では高齢者世帯が90万3116世帯で最も多い
生活保護を受けている世帯は164万4102世帯で、受けている人は196万9655人でした。保護を停止している世帯を除いた163万5284世帯の内訳は次のとおりです。
- 高齢者世帯:90万3116世帯(55.2%)
- 障害者・傷病者世帯:41万8114世帯(25.6%)
- その他の世帯:25万9162世帯(15.8%)
- 母子世帯:5万4892世帯(3.4%)
1.2 生活保護の申請後には、預貯金や保険、不動産などの資産調査がある
厚生労働省は、生活保護を受けるための要件のひとつに資産の活用を挙げ、預貯金や生活に利用されていない土地・家屋などがあれば売却などをして生活費に充てるよう案内しています。
保護の申請をすると、保護を決めるための調査が行われます。その中には、預貯金、保険、不動産などの資産調査が含まれています。
2. 生活保護を申請するとき、生命保険の解約返戻金は資産として活用するのが原則
申請するときに保険に加入していて、解約すれば返戻金がある場合の扱いは、厚生労働省の通知「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」に問答の形で示されています。
保険の解約返戻金は、資産として活用させるのが原則である。ただし、返戻金が少額であり、かつ、保険料額が当該地域の一般世帯との均衡を失しない場合に限り、保護適用後保険金又は解約返戻金を受領した時点で法第63条を適用することを条件に解約させないで保護を適用して差しつかえない。
出所:厚生労働省「2026(令和8)年4月1日施行 生活保護実施要領等」問(第3の11)
2.1 解約せずに生活保護を受けられるのは、2つの条件を満たす場合に限られる
解約しないまま保護が適用されるのは、返戻金が少額であることと、保険料の額がその地域の一般世帯と比べて均衡を失していないことの両方を満たす場合です。
どちらか一方でも当てはまらなければ、原則どおり解約して返戻金を生活費に充てることになります。少額かどうか、保険料が均衡を失しないかどうかを判断するのは、保護を決める福祉事務所です。
2.2 解約しなかった保険の保険金や解約返戻金は、受け取ったときに返還の対象になる
解約しないで保護を受けられる場合も、あとで保険金や解約返戻金を受け取った時点で、生活保護法第63条を適用することが条件になっています。第63条は次のように定めています。
被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
出所:e-Gov法令検索「生活保護法」第63条
保険を残したまま保護を受けた場合、保険金や返戻金を受け取ったときに、受けた保護費に相当する額の範囲で、福祉事務所が定める額を返還することになります。
生活保護を申請すると、預貯金や不動産と同じように保険も資産として調べられます。生命保険の解約返戻金は資産として活用するのが原則で、解約しないまま保護を受けられるのは、返戻金が少額で保険料が地域の一般世帯と均衡を失しない場合に限られます。
加入している保険の解約返戻金の額は、保険会社に問い合わせると確かめられます。申請の前に把握しておくと、福祉事務所での相談が進めやすくなります。
ここからは、子どもの学資保険が解約せずに認められる3つの条件と、満期保険金を受け取ったときの扱いを見ていきます。