3. 全国の退職金の調査とは数字の性格が違う
退職金の平均としてよく使われる厚生労働省の「就労条件総合調査」とは、対象も集計の仕方も異なります。数字を見比べるときは、何を集計した値かを確かめておく必要があります。
3.1 全国の調査は実際に支払われた額の平均
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」は、常用労働者30人以上の企業で、勤続20年以上かつ45歳以上で退職した人に実際に支払われた退職給付額を集計しています。大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の定年退職では1896万円でした。
これに対して東京都の調査は、都内の従業員10人から299人の企業の「モデル退職金」です。対象も集計の仕方も違うため、2つの金額の差をそのまま企業規模の差と読むことはできません。
3.2 退職金制度がある企業の割合も規模で変わる
就労条件総合調査では、退職給付制度がある企業は全体で74.9%、常用労働者30人以上99人以下の企業では70.1%でした。東京都の調査の64.2%も含め、規模の小さい企業では制度がないところも少なくありません。
4. 中小企業の定年後の継続雇用
東京都の調査では、定年後の再雇用制度や勤務延長制度についても集計しています。退職金を受け取った後も働き続けるかどうかを考える材料になります。
再雇用制度を採用する企業のうち、「希望者全員に適用する」と答えたのは69.8%でした。最長雇用年齢を「70歳以上」とする企業は、再雇用制度で35.1%、勤務延長制度で71.3%です。
5. 退職金規程で確かめたい点
労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する会社が退職手当の定めをする場合、適用される労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払の方法、支払の時期を就業規則に記載するよう定めています。
モデル退職金は目安なので、実際の金額は勤め先の規程で決まります。自己都合と会社都合で支給率がどう違うか、勤続年数をどう数えるかは、転職や退職を考える前に確かめておくと安心です。
6. まとめにかえて
都内の中小企業のモデル退職金は、大学卒の定年で1149万5000円、高校卒で974万1000円でした。退職金制度がある企業は64.2%です。
定年前に辞める場合は、勤続20年の大学卒で自己都合346万8000円、会社都合408万1000円と、辞め方によって金額が変わります。
自分の退職金の見込みは、就業規則や退職金規程を読むか、勤め先の人事・総務の担当者に問い合わせて確かめることができます。
参考資料
- 東京都「令和6年『中小企業の賃金・退職金事情』調査結果について」
- 東京都「令和6年『中小企業の賃金・退職金事情』調査結果の概要」
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」
- e-Gov法令検索「労働基準法」
太田 彩子