3. 【在職定時改定】厚生年金は65歳以降も働けば12月15日の振込から増える
受給額の分布を見て、自分の年金は15万円に届かないと感じた人もいるかもしれません。ただ、65歳を過ぎても会社で働いて厚生年金に加入している人は、その期間の分が毎年の年金額に加わっていきます。
そのしくみが、日本年金機構が案内している「在職定時改定」です。対象になる人と反映の時期、増える額の目安を順に見ていきます。
3.1 対象は65歳以上70歳未満
在職定時改定の対象は、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取っている65歳以上70歳未満の人です。毎年9月1日を基準日とし、この日に厚生年金の被保険者であれば、翌月の10月分から年金額が見直されます。
再計算では、まだ年金額に反映されていない前年9月から当年8月までの加入期間が足されます。2026年の改定であれば、2025年9月から2026年8月までに厚生年金に加入していた期間です。
9月1日に厚生年金に加入していれば、10月分から年金額を改定。改定後の年金は12月15日に振り込まれる4/5
出所:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」、日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」をもとにLIMO編集部作成
3.2 12月15日の振込から反映
年金は原則として偶数月の15日に、前月までの2か月分が支払われます。改定後の10月分と11月分は2026年12月15日(火)にまとめて振り込まれるため、見直された額を初めて受け取るのはこの日です。
なお、9月1日より前に厚生年金の資格を失っても、1か月が経たないうちに再び加入した場合は、在職定時改定として再計算されます。
3.3 増える額の目安
増える額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の式で見積もれます。2003年4月以降の加入期間は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」で計算します。
65歳以降に12か月加入し、賞与がなく標準報酬月額が変わらなかったと仮定すると、1年分で増える年金額の目安は次のとおりです。
- 標準報酬月額15万円:年9866円
- 標準報酬月額20万円:年1万3154円
- 標準報酬月額30万円:年1万9732円
1回の振込(2か月分)に直すと、標準報酬月額15万円で約1644円、20万円で約2192円、30万円で約3289円の増額です。賞与を受け取っている場合は、その額も平均標準報酬額に含まれるので、増える額はこれより大きくなります。
月額にすると、標準報酬月額20万円で約1096円です。1年の加入で月15万円に届くほどの額ではありませんが、70歳になるまで加入を続ければ、毎年の改定で少しずつ積み上がっていきます。
実際に振り込まれる額は、ここから介護保険料や所得税などが差し引かれた後の額です。
3.4 在職老齢年金との関係
働きながら年金を受け取る人には、在職老齢年金のしくみもかかわります。老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円(2026年度の支給停止調整額)を超えると、超えた額の2分の1が支給停止になるのです。
合計が65万円以下であれば、老齢厚生年金は全額支給されます。たとえば標準報酬月額20万円で賞与がない人なら総報酬月額相当額は20万円なので、基本月額が45万円を超えなければ支給停止はありません。
3.5 対象にならない場合
在職定時改定は、9月1日に厚生年金に加入していることが前提です。次に当てはまる人は、その年の在職定時改定の対象になりません。
- 9月1日に厚生年金に加入していない人(資格を失ってから1か月以内に再び加入した場合を除く)
- 65歳未満の人と、70歳以上の人
また、70歳未満の人が退職して1か月を経過したときは、退職した翌月分から年金額が見直されます。これは「退職改定」と呼ばれ、退職から1か月以内に再就職して厚生年金に加入したときは、再計算は行われません。
4. まとめにかえて
厚生年金の平均年金月額は15万289円でしたが、月15万円以上を受け取る人は男女全体で49.8%と半分に届かず、女性では12.3%にとどまっていました(2024年度末時点)。受給額の差は、厚生年金に加入していた期間と、その間の報酬の差から生まれます。
一方で、65歳以上70歳未満で厚生年金に加入して働いている人は、在職定時改定によって毎年10月分から年金額が見直されます。2026年の改定分は12月15日の振込で初めて反映され、標準報酬月額20万円で1年加入した場合の増額は年1万3154円が目安です。
自分の加入記録や年金の見込額は「ねんきんネット」で確かめられます。在職老齢年金を含めた詳しい計算は、年金事務所やねんきんダイヤルで相談してみてください。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
- 日本年金機構「報酬比例部分」
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
太田 彩子