4. お寺が埋蔵の証明を出してくれなかったらどうなるのか?「これに準ずる書面」で申請できる場合がある
墓じまいの手続きでつまずきやすいのが、改葬許可の申請書に付ける、お墓の管理者による埋蔵の証明です。寺院の墓地では、お寺とのやりとりがうまくいかず、証明が得られないこともあります。
墓地、埋葬等に関する法律施行規則の第2条は、改葬許可の申請書に、墓地や納骨堂の管理者が作成した、埋葬や埋蔵の事実を証明する書面を添付するよう定めています。ただし、同じ条文には、これによりがたい特別の事情がある場合は、市町村長が必要と認める「これに準ずる書面」でもよいとも書かれています。
総務省東北管区行政評価局は2026年1月、墓地の管理者が埋蔵の証明書を作らない場合の扱いを、市町村が十分に把握していないとする調査結果を公表しました。これを受けて厚生労働省は、Q&Aを作成し、2026年1月23日付の事務連絡で地方公共団体に周知しています。
どのような書面で代えられるかは、申請先の市町村長が判断します。管理者の証明が得られないときは、いまのお墓がある市区町村の担当窓口に相談してみてください。
5. 離檀料はいくら払えばよいのか?公的に決まった金額はなく、国民生活センターには墓の相談が年間1000件を超えて寄せられている
寺院の墓地から墓じまいをする場合は、お寺から「離檀料」を求められることもあります。離檀料には、公的に決まった金額はありません。
国民生活センターによると、全国の消費生活センターなどに寄せられた墓に関する相談は、次のとおりです(国民生活センター「墓・葬儀サービス」)。
- 【2023年度】1046件
- 【2024年度】1018件
- 【2025年度】1077件
相談事例には、菩提寺に墓じまいを頼んだところ、支払えないほど高額な離檀料を求められ、規約などの定めもなく請求の根拠が分からない、というものもあります。
モデルケースでは、移し先の費用を除いた28万8000円で撤去と手続きをまかなう計算でした。ここに離檀料が加われば、50万円の予算に収まらない可能性も出てきます。請求の根拠が分からないときや、話し合いがまとまらないときは、消費者ホットライン(188)で最寄りの消費生活センターにつないでもらうことができます。
6. FPの検証:墓じまいの費用は「遺骨の数」と「移し先の選び方」で2倍以上変わる
遺骨4体を都立霊園の合葬埋蔵施設に移すケースでは、移し先の費用は21万2000円にも、52万4000円にもなりました。「墓じまいは50万円」という目安は、遺骨の数や施設の選び方によって、収まることもあれば超えることもある数字です。
だからこそ、見積もりは総額だけでなく、「撤去」「手続き」「移し先」に分けて確かめることが大切です。撤去費用は公的な基準がないため、石材店などに頼むときは、工事費、運搬や処分の費用、手続きの代行料などを分けて出してもらうと、ほかの見積もりと比べやすくなります。寺院の墓地なら、使用規則や契約に、工事を頼める業者や区画を返すときの決まりがあるかも確認しておきましょう。
もう一つ意識しておきたいのが時期です。公営霊園は、都立霊園のように募集が年1回のこともあるため、移し先の募集時期から逆算して、撤去や手続きの時期、資金の準備を考えることになります。
また、墓じまいの費用を誰が負担するのかは、家族で先に話し合っておきたいところです。お墓の名義人(墓地の使用者)以外の人が改葬を申請するときは、名義人の承諾書も必要になります。
お墓は、ご先祖や亡くなった家族を大切に思う気持ちと結びついたものです。お金の話は切り出しにくいかもしれませんが、費用の内訳と負担の分け方を早めに共有しておくことが、家族みんなが納得できる形で遺骨を移すことにつながると考えています。
7. まとめ
改葬の件数は2024年度に約17万6000件と、10年で約2倍になりました。墓じまいの費用は「お墓の撤去」「行政の手続き」「遺骨の移し先」の3つに分かれ、公的な資料で金額が分かるのは手続きと公営の移し先です。
遺骨4体を都立霊園の合葬埋蔵施設に移す場合、移し先の費用は21万2000円から52万4000円まで差がつき、施設によっては移し先だけで50万円を超えます。都立霊園は年1回の募集と抽選で使用者が決まるため、希望しても使えるとは限りません。墓じまいを考え始めたら、いまのお墓がある市区町村と移し先の条件を先に確かめ、費用は項目ごとに見積もってもらうところから始めましょう。
※本記事は情報提供を目的としています。ケースは公的資料をもとに設定した試算例で、試算は令和8年度の都立霊園の使用料をもとにした概算です。改葬の手続きや必要書類、手数料は市区町村によって異なります。法令の取扱いを含め、実際の手続きは、いまのお墓がある市区町村や墓地の管理者にご確認ください。
参考資料
- 総務省東北管区行政評価局「墓じまいに関する情報収集結果」
- 厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」
- 東京都「令和8年度 都立霊園の使用者を募集します」
- 横浜市「改葬(遺骨の移動)の手続き」
- 国民生活センター「墓・葬儀サービス」
青木 里美