「親から受け継いだお墓が遠くにあって、なかなかお参りにも行けない。墓じまいを考えているけれど、費用は50万円くらいで収まるだろうか」。そう考えている方は少なくないでしょう。
実際に、お墓から遺骨を取り出して別の墓地や納骨堂へ移す「改葬」は増えています。総務省東北管区行政評価局が2026年1月に公表した資料によると、改葬の件数は2014年度の約8万4000件から、2024年度には約17万6000件へと倍増しました。
ここでは、東京都に住む人が、地方にあるお墓に納められた祖父母と両親の遺骨4体を、都立霊園の合葬埋蔵施設へ移すケースをモデルに、この3つを数字で確かめます。
※編集部:本記事のケースは、公的資料をもとに設定した試算例です。都立霊園の使用料は、東京都が公表した令和8年度の金額です。
1. 墓じまいの費用は何にかかるのか?「お墓の撤去」「行政の手続き」「遺骨の移し先」の3つで、公的な資料で金額が分かるのは2つ
まずは、墓じまいの費用がどこにかかるのかをみていきましょう。費用は大きく3つに分けられます。
- 【お墓の撤去】墓石を取り除き、区画を元の状態に戻す工事の費用。石材店などに支払う
- 【行政の手続き】改葬の許可を受ける手続きの費用。市区町村や墓地の管理者に支払う
- 【遺骨の移し先】合葬墓や樹林墓地、新しいお墓などの費用。移し先の霊園などに支払う
このうち、自治体の資料で金額を確かめられるのは「行政の手続き」と、公営霊園を選んだ場合の「遺骨の移し先」です。お墓の撤去費用は、墓石の大きさや立地、工事を請け負う業者によって変わり、公的に決まった金額はありません。
行政の手続きは、思ったよりかからない場合があります。横浜市の場合、改葬許可証の手数料は無料です(横浜市「改葬(遺骨の移動)の手続き」)。ただし、申請書にはいまのお墓の管理者による「埋蔵の証明」が必要で、横浜市はこの証明の発行に手数料がかかる場合があるとして、墓地の管理者に確認するよう案内しています。
※改葬許可の手数料や必要書類は市区町村によって異なります。申請先は、いまのお墓がある市区町村です。
2. 遺骨の移し先にはいくらかかる?施設の選び方で21万2000円から52万4000円まで変わる
では、遺骨の移し先にはいくらかかるのでしょうか。東京都が2026年5月に公表した「令和8年度 都立霊園の使用者を募集します」から、ほかの方の遺骨と一緒に埋蔵する合葬埋蔵施設を3つ選び、遺骨4体を移す場合の使用料を試算しました。
- 【八柱霊園・すぐに共同で埋蔵】21万2000円(遺骨1体5万3000円)
- 【多磨霊園・樹林型】38万円(遺骨1体9万5000円)
- 【八柱霊園・20年間個別に保管した後に共同で埋蔵】52万4000円(遺骨1体13万1000円)
※試算の前提:令和8年度の都立霊園の使用料に、遺骨の数を掛けた金額です。墓石の撤去費用、運搬の費用、移し先での納骨の費用などは含みません。
使用料は遺骨1体あたりの金額なので、お墓に納められている遺骨が多いほど費用は増えます。墓じまい全体の予算を50万円とすると、八柱霊園ですぐに共同で埋蔵する施設なら、残りの28万8000円でお墓の撤去や手続きの費用をまかなう計算です。一方、20年間個別に保管してもらう施設を選ぶと、移し先の費用だけで50万円を超えてしまいます。
同じ都立霊園の合葬埋蔵施設でも、どの施設を選ぶかで、移し先の費用は2倍以上変わるということです。墓石を建てる一般の区画を選ぶ場合は、使用料に加えて墓石を建てる費用もかかります。
3. 使用料の安い合葬埋蔵施設には必ず入れるのか?
ただし、使用料が安いからといって、希望すれば必ず使えるわけではありません。都立霊園の使用者は、年1回の募集と抽選で決まります。
令和8年度の募集では、申込みの受付が6月12日から7月3日まで、抽選が8月14日でした(東京都「令和8年度 都立霊園の使用者を募集します」)。申込みが募集数を上回れば、抽選に当たらなければ使えません。
抽選に外れれば翌年度の募集を待つことになり、そのぶん墓じまいの時期も後ろにずれます。移し先は、使用料の金額だけでなく、募集の時期や申込みの条件もあわせて確かめておきたいところです。
※都立霊園には申込みの資格があります。資格や申込みの方法は、東京都公園協会の「申込みのしおり」で確認してください。