4. 【試算】月8万円の年金を受け取る63歳が退職したら基本手当はいくらか

質問の例で、基本手当と止まる年金の額を比べてみます。条件は、離職前6か月の月給が30万円、雇用保険の加入期間が20年以上、給付制限がない場合です。

4.1 基本手当は150日分で80万2200円

基本手当日額のもとになるのは、離職前6か月の賃金の合計を180で割った賃金日額です。月給30万円なら、賃金日額は1万円になります。

2026年8月1日からの計算式では、60〜64歳で賃金日額が5480円以上1万2120円以下の場合、次の2つのうち低いほうが基本手当日額です。

  • 0.8×賃金日額-0.35×{(賃金日額-5480)÷6640}×賃金日額:5617円
  • 0.05×賃金日額+4848:5348円

低いほうの5348円が基本手当日額です。一般の離職者で加入期間が20年以上なら所定給付日数は150日なので、5348円×150日で80万2200円になります。

4.2 止まったままになる年金は5か月分の40万円

年金が止まる月数は、求職の申込みをした時期や失業認定日の並びで変わります。それでも150日分を受け終えたあとの事後精算で、150日÷30日の5か月を超えて止まった分はさかのぼって支払われます。

止まったままになるのは5か月分で、年金が月8万円なら40万円です。基本手当の80万2200円から差し引くと、基本手当を受けたほうが40万2200円多くなる計算です。

63歳で退職して基本手当を受けると差し引き40万2200円、65歳以後の退職なら高年齢求職者給付金31万5350円を年金と同時に受け取れる2/2

月給30万円・雇用保険の加入20年以上・給付制限なしの条件で、63歳で退職した場合の基本手当150日分80万2200円と止まる年金5か月分40万円の差し引き40万2200円、65歳以後に退職した場合の高年齢求職者給付金50日分31万5350円を比べた横棒グラフ

出所:日本年金機構「雇用保険の給付を受けると年金が止まります!」、厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります」をもとにLIMO編集部作成

もっとも、いつも基本手当を受けたほうが多くなるとは限りません。この例の基本手当は30日分で16万440円ですが、年金の月額がこれより多い人は、基本手当を受けると差し引きで少なくなります。

5. 65歳以後に退職すると高年齢求職者給付金と年金を同時に受け取れる

年金と雇用保険の調整は、65歳になるまでの老齢厚生年金が対象です。65歳以後に退職した場合は、雇用保険から受け取るお金の形も変わります。

5.1 一時金は基本手当日額の50日分

65歳以上の雇用保険の被保険者が退職すると、基本手当ではなく高年齢求職者給付金を受け取ります。ハローワークによると、加入期間が1年以上なら基本手当日額の50日分、1年未満なら30日分の一時金です。

65歳以上で高年齢求職者給付金を受け取るときの基本手当日額は、29歳以下と同じ計算式で求めます。月給30万円なら日額6307円で、50日分は31万5350円です。

5.2 年金は止まらないが受け取れる日数は少ない

高年齢求職者給付金を受けても、65歳から受け取る老齢厚生年金と老齢基礎年金は止まりません。図の例でいえば、63歳で退職したときの差し引き40万2200円に対し、65歳以後の退職では31万5350円を年金と同時に受け取る形です。

なお、正当な理由がない自己都合退職では、高年齢求職者給付金にも給付制限があります。退職の時期は給料や働き続けられるかどうかでも変わるため、雇用保険の額だけで決めず、ハローワークで自分の基本手当日額や所定給付日数を確かめてから考えるとよいでしょう。

6. 10月23日と30日に届く老齢年金請求書には雇用保険被保険者番号を書く

日本年金機構の年間予定表によると、老齢年金請求書(事前送付用)は10月23日に発送され、10月30日にも発送が予定されています。対象は、男女とも1962年(昭和37年)1月21日から2月9日生まれの人と、女性で1964年(昭和39年)1月21日から2月9日生まれの人です。

このうち1964年(昭和39年)生まれの女性は、63歳から特別支給の老齢厚生年金を受け取れる世代にあたります。働きながら年金を受け取り、そのあと退職を考える人もいるでしょう。

パンフレットでは、年金請求書に「雇用保険被保険者番号」を記入し、雇用保険被保険者証や雇用保険受給資格者証などのコピーを添付するよう案内されています。請求書が届いたら、手元に雇用保険被保険者証があるかを先に確かめておくと手続きが進めやすくなります。

また、ハローワークで求職の申込みをしたときは、年金事務所への届出が必要になる場合もあります。退職の前に、年金事務所とハローワークの両方で手続きの順番を聞いておくと安心です。

7. まとめにかえて

特別支給の老齢厚生年金を受け取る人が雇用保険の基本手当を受けると、求職の申込みをした翌月から年金が全額止まります。基本手当を受け終えたあとには事後精算があり、止まったままになるのは受けた日数を30で割った月数分が目安です。

年金月8万円・月給30万円の63歳なら、基本手当は150日分で80万2200円、止まる年金は5か月分の40万円でした。65歳以後に退職すれば、高年齢求職者給付金31万5350円を年金と同時に受け取れます。

どちらが多くなるかは、年金の月額と基本手当日額で変わります。自分の年金額は年金請求書やねんきん定期便で、基本手当日額はハローワークで確かめ、退職の時期を決める前に年金事務所にも相談してみてください。

参考資料

太田 彩子