定年後の再雇用を終えて、60歳代前半で退職する人もいるでしょう。特別支給の老齢厚生年金を受け取りながら、雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)も受けられるのかは、退職の前に知っておきたい点です。
日本年金機構は、10月23日に1964年(昭和39年)1月21日から2月1日生まれの女性などへ老齢年金請求書(事前送付用)を発送しました。10月30日にも、2月2日から2月9日生まれの女性などへの発送が予定されています。
この記事では、日本年金機構とハローワークの資料をもとに、基本手当を受けると年金がいつからいつまで止まるのかを解説します。あとから年金が支払われる「事後精算」の計算式もあわせて見ていきましょう。
1. 【年金Q&A】特別支給の老齢厚生年金は雇用保険の基本手当で止まるのか
今回取り上げるのは、次のような疑問です。
「63歳の女性です。特別支給の老齢厚生年金を月8万円ほど受け取りながら再雇用で働いてきましたが、年内で退職する予定です。ハローワークで失業手当をもらうと、年金は止まってしまうのでしょうか?」
先に答えをお伝えすると、年金は止まります。65歳になるまでの老齢厚生年金は、ハローワークで求職の申込みをすると、その翌月から加給年金額も含めて全額が支給停止になるのです。
ただし、止まった年金がすべて受け取れなくなるわけではありません。基本手当を受けなかった月の分や、受けた日数に比べて多く止まった月の分は、あとから支払われます。
2. 特別支給の老齢厚生年金は求職の申込みの翌月から止まる
年金と基本手当の調整は、日本年金機構のパンフレット「雇用保険の給付を受けると年金が止まります!」で案内されています。まず、対象になる年金と止まる期間を確認します。
2.1 対象は65歳になるまでの老齢厚生年金
調整の対象は、65歳になるまでに受け取る老齢厚生年金です。代表的なのが、60歳代前半から受け取れる特別支給の老齢厚生年金になります。
特別支給の老齢厚生年金を受け取れるのは、男性は1961年(昭和36年)4月1日以前、女性は1966年(昭和41年)4月1日以前に生まれた人です。あわせて、老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があり、厚生年金保険に1年以上加入していたことも条件になります。
受け取り始める年齢は生年月日で決まります。女性の場合、1962年(昭和37年)4月2日から1964年(昭和39年)4月1日生まれなら63歳、1964年(昭和39年)4月2日から1966年(昭和41年)4月1日生まれなら64歳からです。
2.2 止まるのは基本手当を受け終わった月まで
年金が止まる期間は、求職の申込みをした月の翌月から始まります。終わりは、基本手当の受給期間が経過した月か、所定給付日数を受け終わった月です。
パンフレットの注記では、受給期間が経過した月は受給期間満了日の翌日が属する月、所定給付日数を受け終わった月は最後の失業認定日が属する月とされています。実際に基本手当を受けたかどうかに関係なく、求職の申込みをした時点で調整が始まる点に注意が必要です。
3. 基本手当を受けた日数で年金を計算し直す「事後精算」
止まった年金の一部は、あとから支払われることがあります。日本年金機構が「事後精算」と呼んでいる仕組みで、特別支給の老齢厚生年金を受け取る人が退職するときに押さえておきたいところです。
3.1 基本手当を受けなかった月の分は約3か月後
年金が止まる期間の中でも、失業認定を受けず基本手当を受けなかった月の年金は支払われます。ただし、支払われるのはすぐではなく、約3か月後です。
基本手当の受給期間が過ぎて年金の支払いが再び始まるときも、同じく約3か月後になります。退職したあとは、年金の振込が遅れる時期があることを前提に、手元の資金を用意しておくと安心です。
3.2 止まった月数から「受けた日数÷30」を引く
年金が止まる期間の中では、基本手当を1日でも受けた月は年金が全額止まります。そのため、受けた日数の合計が同じでも、月をまたいで受けたかどうかで止まる月数が変わることがあります。
そこで、受給期間が過ぎたあと、または所定給付日数を受け終わったあとに、次の式で計算し直します。
- 支給停止解除月数=年金が止まった月数-基本手当の支給対象となった日数÷30
- 日数を30で割って1未満の端数が出たときは、端数を1に切り上げる
支給停止解除月数が1か月以上あれば、その月数分の年金がさかのぼって支払われます。たとえば基本手当を150日分受け、年金が6か月止まった場合は、6か月から5か月を引いた1か月分が戻る計算です。
自己都合で退職して給付制限がある場合も、その間の年金は止まります。パンフレットの例では、給付制限2か月・所定給付日数150日の人の年金が7か月止まり、事後精算で2か月分がさかのぼって支払われていました。
特別支給の老齢厚生年金は、ハローワークで求職の申込みをした翌月から全額止まり、基本手当を受け終えたあとに事後精算されます。精算のあとも止まったままになるのは、基本手当を受けた日数を30で割った月数分が目安です。
自分が何歳から特別支給の老齢厚生年金を受け取れるかは、65歳前に受給が始まる人へ日本年金機構から届く年金請求書で確かめられます。退職を決める前に、手元の書類で受給開始の時期を確認しておきましょう。
ここからは、月8万円の年金を受け取る63歳の人を例に基本手当と止まる年金の額を比べ、65歳以後に退職した場合とも並べてみます。