2019年11月6日に行われた、株式会社ラック2020年3月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料
スピーカー:株式会社ラック 代表取締役社長 西本逸郎 氏
連結決算ハイライト(前年同期比)
西本逸郎氏:それでは、説明をさせていただきます。まず、数字面の部分になりますが、売上に関しては前年同期比で6パーセントと、若干のプラスで終わっています。しかし、ご覧のとおり、営業利益、経常利益ともに前期からはマイナスで着地しています。弊社の中間の業績予想は開示していませんが、社内計画からは下振れしています。
原因としては、SSS事業で、とくに監視サービス関係が少し踊り場に来ているかなと思っています。また、以前からご説明していますが、2012年に3社を統合しまして、バラバラのシステムで動いているのですが、もう限界ということで社内ITシステムを刷新しています。
そのような投資もありまして、前年同期比で大幅減益となっています。ちなみに、社内ITシステムの刷新については、順調に進んでいます。
セグメント別業績(前年同期比)
次が、セグメント別業績となります。SSS事業に関しては増収減益で、SIS事業は増収増益となっています。社内のITシステムの刷新、オフィス開設の投資で全社共通費用が増加していますが、これは先ほどご説明した部分です。
SSS事業(の売上高)としては、増減額が約5億円プラスで7.3パーセントの増加、SIS事業については5億円強の増加で5.2パーセントの増加です。
利益面については、SSS事業が先ほど申し上げたとおり、とくに監視サービス関係が思ったより伸びていないため、2億4,000万円程度の減少となっており、SIS事業は微増となっています。
セグメント別業績ポイント セキュリティソリューションサービス(SSS)事業
続きまして、SSS事業の詳細です。コンサルティング関係、教育分野のところでは、個別案件などは拡大していますが、企業内対策チーム……一般的にCSIRTと言っていますが、大手企業さまではCSIRTというものを作っています。企業内セキュリティを推進している企業さまが非常に増えていますが、そちらの運営支援案件などが減少しています。
ある面では、大手企業様に関しては、個々の企業さまでかなりセキュリティ対策が浸透してきたと言えると思っています。
また診断サービスはかなり競争が激化しているところで、若干下振れしてきています。
最近決算関係の会社といったところでの事件が相次いでいることもありまして、金融庁から、このあたりの検査をしっかりやりなさいという指導も出ていますので、下期は、診断についてはかなり立ち上がってくるのではなかろうかと思っています。しかし、上期はマイナスとなっています。
運用監視については、弊社がメインで持っている「JSOC」という監視サービスで、こちらが新規獲得で伸び悩んでいますが、2年ほど前から推進している中部地域の大手製造グループでは、非常に順調にサービスの売上が拡大しています。
しかし全体として、売上は若干プラスにはなっていますが、思ったより伸長していないという状況です。
製品販売については、「Akamai」というライセンス製品があります。大量のデータを送り付けてサイトを麻痺させるような攻撃が非常に多発しているため、こちらの販売が拡大しており、売上が伸びています。
また、潜在的な脅威情報ということで、業界ではスレットインテリジェンスという言い方をしていますが、このような情報を調査するサービスの販売も寄与しています。
セグメント別業績ポイント システムインテグレーションサービス(SIS)事業
SIS事業におきましては、前年同期には非常に大型の案件があり、売上・仕掛というものがあったのですが、今期はそのあたりがないということに加えて、(主要顧客の)大手金融業(の案件)が収束してきていますので、計画的に配置転換をしています。
それ以外の情報サービス業は、発表していますとおりTISさまといったところとの協業関係が順調に推移しており、金融業以外の案件が拡大してきています。
HW/SWは、クラウドの拡大によって事業そのものは縮小しているのですが、更新案件などの獲得が堅調に推移しました。
IT保守サービスについては、前期のハード・ソフトの販売そのものは低調だったのですが、契約更新案件は非常に増加しました。
ソリューションサービスについては、子会社のジャパン・カレントが提供するAIを使ったデジタルマーケティング関係は「いいね」とは言われるのですが、なかなかマネタイズができず、案件化が図れないということで苦労しています。しかし、データセンター関係のサービスが伸長しています。
全体としては先ほど申し上げたとおり、セグメント利益では微増となっています。
連結貸借対照表ハイライト(前期末比)
連結貸借対照表ですが、こちらは特段、問題なく推移しています。
連結キャッシュ・フロー計算書ハイライト
キャッシュ・フローになりますが、投資に関しては積極的に推進しつつ、フリー・キャッシュ・フローも改善しているというところになります。
事業状況(全体概要)
事業全体の概況になります。セキュリティ関係の事業に関しては、みなさまもご承知のとおり、すでにクラウド化を大手企業などがどんどん推進しています。
そのような観点から(見ると)、エンドポイントセキュリティという言葉があり、みなさまがお使いの端末でセキュリティを担保していこうという考えです。以前は会社の組織の中は安全で、外は危ないというかたちで、組織の中を守ればいいというセキュリティが主でした。
今は、エンドポイントからしっかり守っていこうというところで、外に持ち出しても、どこで仕事をしてもというかたちで、エンドポイントのセキュリティや、ここには記載していませんがペネトレーションテストという非常に高度なセキュリティのテストを中心に拡大しています。
前期については、診断はそこまで動いていませんが、下期については動きがあるだろうとは見ております。
SIS事業についてですが、クラウド支援やアジャイル開発需要が非常に高まっているのは、みなさまもご存知だと思います。ただし、案件のボリュームは小さくなってきていますので、いかに効率よく、空きなく(案件を)回していくかがポイントということで、体制面として、アジャイル開発手法を主にして、エンジニア層を拡充しています。
重点施策の進捗(SSS事業)
続きまして、個別のSSS事業の重点施策の進捗になります。1つ目として、セキュリティに関しては、先ほども申し上げましたが中部の大手製造業向け監視サービスが非常に順調に推移しています。監視対象は本体だけでなく、グループ企業さまも含めて着実に採用いただいています。
また、大手企業向けのエンドポイントセキュリティ対策を推進しています。具体的な商品名を言いますと、Microsoft社およびCrowdStrike社の製品です。加えて、個別では別の製品も扱ったりしていますが、エンドポイントについては明らかに動きがあります。
最近、ニュースや報道では流れないのですが、相変わらず標的型攻撃と言われるものが、大手の国際的なグループ企業さまなどでよく起きています。そのような被害に遭われたところは、確実にエンドポイントセキュリティを導入していくという動きが加速しており、このあたりはしっかりリードしていきたいと思っています。
中堅・中小向けサービスも、まだ始めたばかりでですが、自動セキュリティ監視システム「CloudFalcon」の機能拡充投資と、パートナー企業の拡大といったところで、先般もデジタルハーツさまを経由してインテックさまに採用されるなどといった動きが出てきました。
今後、このあたりの中小(企業への導入)が動き出すと、月々に確実に入ってくる料金体系のものですので、収益の軸になればと思っています。
そして、協業のさらなる推進ということで、先ほど申し上げましたがTISさまと一緒に、とくにクラウド関係とセキュリティ領域で協業しており、具体的なビジネス領域としてかなり拡大してきています。
また、先般発表させていただきましたが、九州工業大学とAIを活用したサイバー防御における共同開発を開始しています。弊社としても、次期監視システムの軸になろうと考えています。
重点施策の進捗(SIS事業)
続きまして、SIS事業の詳細ですが、ポイントとしては、お客さまのデジタルトランスフォーメーションを支援するITソリューション提供というかたちです。
とくに、事業そのものをシステム化していく動きが加速しています。以前のITシステムは、どちらかというと基幹システムで、会計や販売管理など、どちらかというとコーポレート部門を支えるようなITシステムがメインだったのは、ご承知のとおりだと思います。
今は、販売そのもの、店舗そのもの、事業モデルそのものをITシステムで支えようという動きが加速しているわけですので、そのようなところ向けに、1つはキラーツールを切り口とした顧客の課題解決型サービスの推進ということで、働き方改革支援の観点で2つのソリューション「TeamViewer」と「顔認証のぞき見ブロッカー」を提供しています。
「顔認証のぞき見ブロッカー」はおもしろいものです。このような会場などでパソコンを使う時に(見かけるかと思いますが)、斜めから見ると(パソコンの画面が)よく見えないシートなどがありますよね。そのようなものでのぞき見を防止することもできますが、実際には、肩越しからのぞかれたりするケースがよくあるわけです。
(「顔認証のぞき見ブロッカー」は)そのようなものをブロックしようというソリューションです。だいたい、ノートパソコンにはカメラがついているのですが、そのカメラで自分以外の顔が写っていたら自動的に業務ができなくなるという、非常にシンプルなソリューションですが、このようなものを切り口にして売っていこうという考えです。
また(スライドに)「DevSecOps」と書いていますが、これは業界用語で大変申し訳ないのですが、もともと「DevOps」という言葉がありました。これはどういうことかと言うと、「Dev」はDevelopment、つまり開発で、システムを開発することです。「Ops」はOperations、つまり運用することです。よって、「運用を意識した開発をしましょう」「運用と開発を一体化して開発していきましょうよ」という考え方です。
以前は、「開発する人は開発する。あとは引き取って、せっせと運用してください」というかたちで分かれていたのですが、今の時代、そのようなやり方ですと、開発しているうちに時代がどんどん先に行ってしまうため、「DevOps」という考え方がかなり浸透してきました。
さらに、「セキュリティも最初から考えておきましょう」ということで、弊社では「DevSecOps」というかたちで進めています。そのような関係から、マルチクラウドでのセキュアな開発を行う環境ということで、HashiCorp社の「Vault」を切り口にして、SIを取りにいこうという動きをしています。
どういうことかと言いますと、マルチクラウドでシステム構築するのは当たり前になってきています。Amazonの「AWS」、Googleの「GCP」、Microsoftの「Azure」など、いろいろなものがありますが、それを組み合わせて全体システムとして機能するときに、「各々のID管理をどうしましょうか?」と(いう問題が起こってきます)。
個別のプログラム、自分のところで作るプログラムから、いろいろなクラウドサービスを利用していくわけですが、これを最初から一元的に(管理できるように)設計していないと、とんでもないことになります。
このあたりを解決するソリューションとして、HashiCorp社の「Vault」を担いでいます。ここにタッチしていくことで、「クラウド環境における開発案件をリードできる」という目論見を持っており、スタートしています。
そして、クラウド環境のシステム開発案件の拡大ということで、金融業界が今、クラウドファーストということでどんどんクラウドにシフトしているのは、ご承知のとおりだと思います。それのクラウドエンジニアを確保して、拡充する開発体制の構築を推進しており、非常に順調に来ています。
次が、サポート終了製品の延命支援サービスです。企業では、「Windows Server 2008」がたくさん動いています。これを「Azure」に移行すると、ライセンス(料金)等が免除されるといったプログラムをMicrosoftが用意しているのですが、それに乗って、「セキュリティ診断付でクラウドを移行しましょう」ということを進めています。
Microsoft側の目論見としては、「このようなところで『Azure』の稼働実績を積んでおき、その後、システムなどの本格的なクラウド移行を狙っていこう」ということだと思いますが、そこに少し乗ってみようというところです。
重点施策の進捗(攻めの経営)
続いて、弊社自身の改革の部分になります。弊社自身がデジタルトランスフォーメーションを推進していかなければならないと考えていますが、もう1つは働き方改革の推進です。
今、技術者を採用できない、確保できない時代になってきています。コーポレート部門や、技術者が働きやすい環境をいかに作っていくかは、企業として非常に重要なことだと思っています。
そのような観点から、1つは、社内の基幹システムの統合・刷新を行っています。計画では、来年10月に稼働する予定で、来年度の早々から移行が開始されるスケジュールで動いており、今のところ順調です。現状は、そのシステムが動いた場合を想定した標準的な業務プロセスの作成や準備に動いています。
また、今年7月から、弊社でも全社でのコミュニケーションツールを導入しました。「Office365」というものですが、これで社内のコミュニケーションを活性化させており、非常に利用率が高いです。ある面で言うと「遅ればせながら」といったかたちでの導入となります。
とくに弊社では、お客さま先に常駐して仕事をしている社員が非常に多いため、そちらとのコミュニケーション、実績のバックアップ、相談といったものが円滑に図れる環境をどんどん整備しています。
そして、ガバナンス体制の徹底強化です。これはみなさまもご承知のように、NEXIの事件等もありましたが、弊社でも至らなかった点はあると思っています。そこで、リスク統括員会による組織横断的なリスクチェック、審査機能強化、内部監査などの強化を行っています。
株主還元(中間配当)
株主還元になりますが、中間配当は計画どおり11円での実施を予定しています。基本指標は以前からお伝えしていますが、基本的にはDOE(株主資本配当率)5パーセントを1つの目標として、配当を決めています。
連結業績予想(通期) - 2019年5月13日発表から変更なし -
今年度の業績予想ですが、現状では進捗は悪いものの、シナリオを策定してキャッチアップにあたっていますので、当初予想どおりの数字で考えています。
セグメント別業績予想(通期) - 2019年5月13日発表から変更なし –
セグメント別の業績予想に関しても、変えていません。
業績の推移
最後に業績推移となります。残りは補足資料となっていますので、ご覧いただければと思います。私からのご説明は以上とさせていただきます。